子孫を残すためにも、性欲は大切な欲望のひとつ。それだけに、洋の東西を問わず、性に関する文化は様々存在する。そうした“世界の性資料”を約4万点も集めた神社が愛媛県宇和島市にあり、そこでは貴重な資料も多く見られるという。
JR宇和島駅から徒歩10分ほどの里山の麓に立つ「多賀(たが)神社 凸凹(でこぼこ)神堂」。すぐ近くに地元で初詣のメッカとして知られる「和霊神社」があることも手伝ってか、鉄筋コンクリート3階建ての立派な建物であるにも拘わらず、ひっそりと佇(たたず)むように建っている。
神社の宮司が自ら世界中で収集した!
建物内は見学する順序が定められていて、通路は人がやっとひとり通れるぐらいの広さしかない。その他は性に関係する品が所狭しと置かれていて、初めて訪れた人は好奇心よりもまず、その物量に圧倒されること間違いない。
展示されている物が作られた地は、日本をはじめ、韓国や南北アメリカ、ヨーロッパ、インド、新疆(しんきょう)ウイグル自治区、パプアニューギニアなどなど世界各国にわたる。その数は約4万点にものぼるという(展示されているのはその中の約3分の1)。そしてそのほとんどが、神社の宮司自ら世界中から収集してきたというから驚きだ。
展示物の中には、伊東晴雨や高畠華宵(たかばたけかしょう)といった、“その道の大家”(ともに、淫びな世界観で知られる画家)の作品をはじめとした浮世絵や洋画などもある。ちなみにそれらをよく見ると、現在、アキバ系の漫画やアニメに登場する、実際にはあり得ないようなプロポーションの女性への憧れは、昔からあったのだということが分かる。
実は地域で最古の神社
こうした好奇心を駆り立てられる資料館もあるが、実は「多賀神社」自体は、イザナギノミコトが主神の神功(じんぐ)皇后が摂政18年(269)に開基したと伝わる地方最古の神社。昔から延命栄寿(えいじゅ)や治病、子授けなどのご利益がある、霊験あらたかな神社として信仰を集めてきた。
そんな由緒ある神社に凸凹神堂を造った理由として、パンフレットには「性は宗教なり、哲学なり、性は道徳なり、科学なり、性は生命なり、人生なり(後略)」とある。つまり、生命の起源として崇高な精神で、前代の宮司が立てたということなのだろう。
宇和島市は伊達家ゆかりの城下町
実は、四国の西端に位置していることもあってかあまり知られていないが、「多賀神社 凸凹神堂」がある宇和島市は、伊達政宗の長子秀宗以来9代にわたって伊達氏の居城だった「宇和島城」の天守閣が現存する城下町でもある。また、豊後(ぶんご)水道などにも近いことから、海産物の宝庫でもあるのだ。
高知県にも近く、フジテレビで放映中のTVドラマ「遅咲きのヒマワリ~ボクの人生、リニューアル~」の舞台となっている四万十(しまんと)市にも国道1本でつながっているので、車で訪れるのには最適。冬休みなどに、こちらの神社に詣でつつ、宇和島のおいしいものを食べたり、ドラマの舞台にも足を運んだりするプランを立ててはどうだろう?