複数のメディアの報道によれば、T-Mobile USAは来年2013年にもiPhoneの販売を開始するという。親会社の独Deutsche Telekomが10月6日(欧州時間)にドイツのボンで開催した投資家向け説明会で発表した。同社はT-Mobile USAのネットワーク強化に50億ドル規模の投資も表明しており、iPhoneの登場する2013年にはLTEサービスの開始も計画している。これで米国の大手携帯キャリアがすべてiPhoneを取り扱うことになる。

PC Magazineの同日の報道によれば、ボンで開催されたDeutsche TelekomのCapital Markets DayにおいてT-Mobile USA CEOのJohn Legere氏が「iPhoneは好きだがAT&Tは嫌いだ」という人に向けて、T-Mobile USAがiPhoneの取り扱いを開始するというメッセージを発信した。米国では現在、元独占キャリアのAT&Tを筆頭に、Verizon Wireless、Sprintの大手3社がiPhoneの販売を行っている。下位の中小キャリアでもiPhoneの取り扱いを開始するところが増えており、業界4位のT-Mobile USAのみが実質的に取り残されて板挟みの状態になっていた。米国ではSIMロックフリーのiPhoneが販売されており、これを使えばGSM系ネットワークを展開するT-Mobile USAでも問題なく使えるはずなのだが、実際にはネットワーク仕様の問題からSIMロックフリーiPhoneにT-Mobile USAのSIMを挿入しても3G通信は行えず、EDGEでの運用を余儀なくされる(これはAT&Tでも同様で、T-Mobile USA用の端末にAT&T SIMを挿入してもEDGEでしか利用できない)。このT-Mobile USAにiPhoneが登場するということは、既存のiPhoneに何らかの修正を施したカスタムバージョンをAppleが用意することでDeutsche Telekomと合意したことを意味する。

Seattle Timesによれば、iPhoneが存在しないことで明らかに同社ストアから客足が遠のいている現象が見られることをLegere氏が認めており、Apple側の条件を呑んだうえで取り扱い開始に合意したようだ。また2013年ローンチに向けてT-Mobile USAはLTEネットワークの整備を急ピッチで進めており、Wall Street Journalによればその金額は2013年に47億ドル、さらに続けて2年間にそれぞれ30億ドル規模の投資を見込んでいる。もともとT-Mobile USAはAT&Tとの合併交渉を進めていた関係で、LTEネットワークの整備をAT&Tに依存する形で後回しにしていた経緯がある。両社の合併が破談となり、ライバルらをキャッチアップするために数年遅れでの次世代ネットワーク整備に着手せざるを得ず、大規模投資で少しでもライバルとの差を埋めていこうという状態だ。

またT-Mobile USAは業界第5位のMetroPCSとの合併を表明しており、今後それに向けた対応にも追われることになる。両社はネットワーク方式も顧客層も大きく異なるが、iPhone取り扱いと合わせ、ハードルを乗り越えてどのように合併効果を出していくかがポイントとなる。当面のライバルはソフトバンクが買収を表明しているSprint Nextelで、その差をいかに埋めていくかが来年以降試されることになるだろう。