世界最大の携帯キャリアである中国移動通信(China Mobile)はiPhone獲得のために2009年からAppleと交渉を行っていることを認めたという。だがTD-SCDMAという中国独自のネットワークが原因ではなく、ビジネス的な部分が理由でいまだ合意に至っていない。噂はここ何年にもわたって出ているものの、両社の交渉について具体的な話が出てくるのは非常に珍しい。
同件はApple Insiderが報じている。もともとはSinaTechが報じていたもので、China Mobileが開催したWorldwide Developers ConferenceにおいてプレジデントのYue Li氏が交渉の存在を認めたという。それによれば、両社の交渉自体は2009年から継続しており、昨年2011年に締結直前の段階まで到達したとのこと。だが現状を見てもわかるように、この段階ではまだ合意に至っておらず、取り扱いもスタートしていない。China Mobileは契約件数が6億をオーバーするなど、世界トップのメガキャリアとして知られているが、同時に3G技術では同国独自のTD-SCDMAを採用し、さらに4Gでは欧米主要国が採用しているFDD方式ではなく、TD方式のLTEを展開していくことも知られている。つまりAppleはChina Mobileに端末を卸すにあたっては専用チップを搭載した独自バージョンを用意する必要があるわけだ。
だが6億ユーザーのうちの5%がiPhoneを契約しただけでも3000万台の需要があり、複数キャリアの総販売台数の合計を軽く越える潜在需要が見込まれる。ゆえにカスタム製品を用意しても十分に採算ラインを維持できるとみられ、技術的相違は導入ハードルにならないというのが大方の予想だ。これはLi氏も認めており、現時点で両社が合意に至っていない理由はビジネス面(おそらくはコミッションや販売条件など)にあるとしている。China MobileがiPhoneの取り扱いをスタートする場合、TD-LTE方式採用端末の台数が一気に拡大することになるなど、業界地図を大きく塗り替える可能性も秘めており、両社の交渉の行方は非常に注目される。