三菱東京UFJ銀行とKDDIが出資し、2008年に開業したじぶん銀行。2013年3月期の第1四半期に四半期ベースで初めて黒字となり、第2四半期も黒字を計上した。今回は、10月1日に就任したばかりの鶴我明憲社長に、「総合ネットバンク」を目指す同行の経営戦略についてインタビューした内容を紹介したい。

じぶん銀行の鶴我明憲社長

――10月にじぶん銀行の社長に就任される前は、どのような分野をご経験されてきたのでしょうか?

大学卒業後に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行しまして、営業、企画、市場業務と多くの部署を経験し、直近はMUFGの持株会社の総務部の部長をやっていました。法人部門と企画部門の畑が長くで、インターネットを通じてサービスを提供するじぶん銀行は、初めての分野になります。

じぶん銀行には8月1日に顧問として着任し、2カ月間勉強の時間もいただいて、10月1日付で社長に就任した次第です。

――じぶん銀行については、どのようなイメージをお持ちでしたか?

もともとネットバンクという業態には興味がありました。じぶん銀行は「総合ネットバンク」であると認識しています。証券業務と密接になっているネットバンクさんとか、ある特定の消費市場とタッグを組んでいるネットバンクさんなどと異なり、じぶん銀行は、自ら市場を切り開いていかなければいけないという点で、総合的なサービスを提供していかなければならないという使命を持っている銀行です。

そういう意味で、特定のカテゴリに偏ることのない、「総合ネットバンク」であると自負しているのです。

――じぶん銀行は、「スマホ銀行」というキャッチフレーズを使っていますね。

KDDI(au)という味方がスマートフォンのマーケットでユーザーを増やしている中で、じぶん銀行もスマートフォンに合わせた革新性のあるとがったアプリケーションを作って、それをユーザーに訴えていくということを、「スマホ銀行」というキャッチフレーズは意味しています。

スマートフォンならではの操作性を活かしたサービスを提供することに注力し、スマートフォンで最も使いやすく利便性の高い銀行になりたいと考えています。

また、2012年9月より、じぶん銀行の口座からスマートフォンに対応した「楽天Edy」にチャージできる機能を追加しました。今までのサービスに加えて、どんどん新しいサービスを投入しようと思っています。

――そうした意味では、スマホを使うことの多い若い世代がターゲットとなるのでしょうか?

やはりスマホを使うことの多い、20~40代の方々を主な顧客と想定しています。例えば、大学生の方々が、「こんなものがあればいいな」と思っているようなアプリケーションなどを開発したいと思っていますし、その方々が社会人になった後には、資産運用などで長く付き合っていただけるような商品を品揃えしたいです。長く付き合っていただく中で、「商品がいろいろあるから試してみよう」と思ってもらえるような、先進性と品揃えを実現する予定です。

また、若い世代の方々には、どんどん情報提供していこうと思ってまして、経済指標や経済動向などの情報を、インターネットやメールを通じて配信していきたいと思っています。外貨預金に興味にある人にはそれに合った情報を、株に興味ある人にはそれに合った情報をという具合に、その人の取引内容を見ながらニーズを拾い上げ、情報を配信していく仕組みを作っていくつもりです。

――具体的には、若い世代にどのように訴えていきたいですか?

auショップなどのほか、企業から新社会人の方々の紹介を受けたり、タブレット端末などを授業に活用している大学などとタッグを組むなど、学生さんとの取引を拡大していきたいな、という希望を持っています。

――数値目標などはございますか?

現在20代の口座数は40万口座ですが、それを倍の80万口座までしたいと思っています。全体では、現在の150万口座を2年で200万口座まで拡大していきたいですね。

――「20代倍増計画」ですね。また、社会人になっても長く付き合ってもらえる銀行にするということで、商品の品揃えを強化したいというお話がありましたが、具体的には、どのような商品を提供する予定ですか?

まず最近の動きとしては、三菱東京UFJ銀行の住宅ローンの取次ぎを始めました。年内には株式や投資信託の取次ぎを始めます。来年になりますと、今4通貨を提供している外貨預金に、さらにいくつかの通貨を加える予定です。少し金利が高めで、為替の変動も多少あるが、それほどリスクの高くない通貨などを検討しています。来年度になりますと、FXを商品として加えていく予定です。

これで来年度の上期には、プレーンな商品としては、だいたいそろってくるという計画です。

さらにその次の段階として、ある商品にお客様が望むものはなんだろうかという事の研究を繰り返して、ローンだったらもう少し変わったものをやれないかとか、今はプレーンな定期預金や普通預金を、もう少し変わったものにできないかとか、お客様の資産運用のステージに合わせてニーズを拾い上げ、新商品を開発していきます。

例えば、これは若い人向け、これは50代向け、など、各層のニーズに合ったものを提供していきたいのです。

――最後に、あらためて新社長としての抱負をお聞かせいただけますか?

「スマホ銀行」という新しい世界が私にとっても開けてきて、その中で仕事をさせていただくことについては、たくさんの夢を持っています。

じぶん銀行の独自性、先進性を大事にしながら、他の社員と一緒に、ワクワクする会社にしたいと思っています。

――本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。