そば打ち道に踏み込むのは結構だが、まず道具が大変だ。麺棒とのし板は、家にあるパン用のものを代用すればいいんじゃないか? そば包丁は菜切り包丁が代わりに使えるだろう。こねるのは……ボウルでできるか? やってみればわかるが、ボウルでそば粉は練られない。難しいのだ。パン生地はこねればいい。こねるのはボウルでできる。
しかしそば粉は違う。こねるのではなく、練るのだ。陶芸で土をこねる要領とまるで同じで、菊練りという伸ばして織り込んではまた伸ばし、菊の花の断面のようにそば粉は練っていかなくてはならない。そのためにはボウルではなく専用のこね鉢が必要だ。
じゃあ買うかこね鉢……と軽い気持ちで店に行くと、その値段に唖然とする。1つで1万円以上もするのだ。1万円? そば粉も安くはない。国産は200gで数百円、それで2人分しか作れない。いったい何杯分のそばを打てば、元がとれるのか。
そばを練るところが何とかなってくれればいいのだ。あとは家にあるもので代用できる。問題は練りだ。そこで「パンくらぶ」の出番である。お父さんの代わりに、いやこね鉢の代わりにそば粉を練ってくれるのだ。
うどんも絶品! 粉物は「パンくらぶ」で!
「パンくらぶ」が生地を練るのは二八そば、そば粉と小麦粉の混合そばだ。そば100%じゃないとそばじゃないという人は、そば打ちをやったことがないからそういうことをいうのだ。「パンくらぶ」が練ることができなくても当たり前、そば粉100%は年季とテクニックと上質のそば粉が必要であり、店で食べるものである。小麦粉が入ってないとほとんどそばがつながらず、ボソボソでゆでたらすぐに切れる。そばではなく、そば粥になる。
スーパーでそば粉を買い、パンに使う強力粉を拝借し、分量を計ったら「パンくらぶ」に入れる。あとは機械任せだ。発酵など時間が必要な工程がないので、15分ほどで出来上がる。
練りは終わっているので、伸ばしやすいように小分けしたら伸ばして切る。伸ばしのはパン用の台で十分だ。伸ばしたら畳み、菜切り包丁で……あれ? うまく切れない。コマ板(そばを押さえる板)がないとダメだな。ものさしでどうだろう、ダメだ。難しいな、これ。
悪戦苦闘して切ったそばは、そばというよりもうどんの太さ、ゆでて食べるとそばではない。味はそばだ。全然問題ない。問題は切り方であって、田舎そばがさらに太ったような謎の食べ物になってしまった。生地が出来ても、そば包丁とこま板はないとそばは切れないのだ。
うどんの方が上手くいくのでは……?ということで挑戦
そばを切っていて、同じ太さならうどんもいけることが分かった。そこでうどんも作ってみた。強力粉を入れておくとこねてくれる。こねた後、生地を寝かしておくのがコツだ。
切ってゆでると、こちらは大成功。釜揚げと冷やしを作ったが、冷やしの方が向いているかもしれない。讃岐うどんほどのコシはないが、市販のうどんより噛みごたえがある。粉の味が強く出て、つるつる食べてしまう。昔は客が来たら打つようなごちそうだったとそうだが、出来たてはうまい。
パンも焼けてそばもうどんも練ってくれる「パンくらぶ」。次はピザの生地をこねてもらおうと思う。家で焼くピザはうまいが、粉をこねるのが面倒くさいのだ。