カシオ計算機は26日、店頭サイネージ事業への参入と新開発の機器「カシオサイネージ」の発表会を開催した。カシオサイネージは小型プロジェクターを利用したサイネージ機器で、リアルな映像で来店者にアピールしつつ、電子クーポンなどクラウド連携サービスも用意される。
発表会では、カシオ計算機 代表取締役社長の樫尾和雄氏が製品デモとプレゼンテーションを行った。今回の発表は「新製品というより新規事業」(樫尾氏)とし、中核となるのはサイネージ機器の「カシオサイネージ」だ。
カシオサイネージは、カシオが持つプロジェクター製品を応用したもので、プロジェクターやその技術を使ってサイネージ事業ができないかと考えたという。最初は等身大くらいの映像投影を想像したそうだが、最終的には小型化へ舵を切った。
その理由は、主なターゲットが小売り店であり、そこで一番目に付くのは「フロント」、フロントに置いてもらうにはコンパクトでなければいけないという考え方だ。さらに、液晶ディスプレイのサイネージではなく、「リアルな映像物体でお客に話しかけるようなサイネージが実現できないか」(樫尾氏)がコンセプトとする。
ここで、カシオサイネージの披露とデモ。
カシオサイネージ本体の上に、キャラクターの形をしたスクリーン(写真左)。電源を入れると、このスクリーンにお店独自のキャラクターが投影される(写真右)。キャラクターには簡単なアニメーションを設定でき、マルチ言語でテキストを読み上げ可能 |
プロジェクターを内蔵した本体の上に、垂直にスクリーンが立っている。そこにキャラクターが表示され、簡単なアニメーションとともにショップや商品情報などを音声で語りかけてくる。
キャラクターと音声は自由に変更でき、ショップ側が用意する素材(1枚の画像とテキストファイル)をもとに、各キャラクター用のスクリーンと合わせてカシオが作成する。最終的には、カシオサイネージにはSDメモリーカードスロットが設けられ、SDメモリーカードとスクリーンを変更するだけで、コンテンツ(投影キャラクターと読み上げ音声)を入れ替えられるようになるそうだ。
音声の読み上げは合成で、マルチランゲージに対応する。デモでは日本語/英語/韓国語/中国語が使われていたが、どれもかなり自然で聞きやすかった。言語の変更も簡単で、スクリーン上のタッチエリアに触れるだけだ。言語変更のほかにも、解説する商品を変更する使い方も可能。例えば、カシオサイネージで解説させたい商品を登録しておき、お客さんが自由に変更できるような使い方だ。
また、カシオサイネージ用のクラウドサービスも提供。詳細は明らかにされなかったが、1つの例としてスマートフォンとの連携機能が紹介された。カシオサイネージはNFCチップを内蔵しており、NFC対応のスマートフォンを「かざす」ことで、ポイントサービスやクーポン配布などを実現できる。
「お店で一番目立つ場所はフロント。そこにカシオサイネージを置くことで、お客さんに対する高いアテンション効果を期待できる。バックヤードのクラウドサービスにより、さまざまな販売促進施策も打てる。フロントヤードとバックヤードでお店独自のサービスを実現できる画期的な製品。
お店が繁栄することで、この事業も大きくなる。お店が繁栄するために、カシオサイネージで何とかお役に立ちたい」(樫尾氏)
カシオサイネージ(本体、コンテンツ作成、クラウドサービス)の提供は2013年1月からで、同年3月までの初年度は2,000台の導入を見込む。日本だけでなく、アメリカとイギリスでも同時に投入。パッケージ料金は100万円程度としており、追加のコンテンツ作成などは別チャージとなる。次年度は20,000台の出荷を計画しており、日本、アメリカ、イギリスのほかにも、ワールドワイドで展開していくという。
なお、カシオサイネージのプロジェクター部分は、レーザーとLEDのハイブリッド光源を搭載している。これはカシオが約2年前に開発した技術で、カシオのプロジェクター製品にも多く採用済み。従来のプロジェクター光源は、寿命が2,000~3,000時間程度だったが、ハイブリッド光源の寿命は約20,000時間だ。稼働時間が長いサイネージ機器として、この寿命は大きなアドバンテージになるだろう。