日本総合研究所は16日、同社調査部が取りまとめたレポート『後退局面入り後の景気のコースと求められる政策課題~解散・総選挙後を展望して~』(「リサーチ・フォーカス」 No.2012-008)を公表した。
レポートによると、わが国の景気は後退局面入りした模様。年明け以降、後退モメンタムは弱まるものの、1~3月期は、(1)米国の「財政の崖」の処理をめぐる攻防、(2)日中摩擦の影響拡大などの下振れリスクを抱えた展開になると予測している。
2つのリスクファクターのマイナス影響が一定範囲に抑えられるならば、「日本景気は4~6月期に底離れに向かうことが期待できるが、その後の回復ペースの基調は緩やかにとどまる」(日本総研)。
その理由として、輸出の回復力にはさほど期待ができないことに加え、歴史的な円高水準、自由貿易協定締結の遅れ、電力価格の上昇、雇用規制の強化、高い法人税率など、わが国の立地条件の劣化状況が変わらなければ、海外生産シフトが国内設備投資や雇用にマイナスに影響し続けるから、としている。
また、来年前半の景気の自律反転を前提にすれば、最大の焦点は、「反転後の景気が2014年4月に予定されている消費増税のマイナスを吸収できるだけの底堅さを身に付けているかどうか」(日本総研)。この点についての不安払拭のため、「立地条件の改善に向けた施策の早期実施が求められている」(同)としている。
経常収支黒字の大幅減少が明確になれば、国債ファイナンスに支障が生じる恐れがあるという。わが国は本気で財政健全化の道筋をつけることが急がれる段階に入っている一方、急激な緊縮策は景気の腰を折り、かえって財政事情を悪化させる恐れがある。その意味で、財政危機回避に向けて、経常収支黒字を残すための施策が必要になっている。
レポートでは、以上を踏まえ、政府には、(1)自由貿易協定の早期締結と抜本的農業改革への取り組み、(2)安全性・経済性を勘案した短期・中期・長期の電源ポートフォリオ・ビジョン、(3)法人税率引き下げ、研究開発支援など国内投資促進策、(4)労働市場の抜本改革ビジョン、(5)社会保障・税の一体改革を含む歳出・歳入改革のビジョンと財政健全化の道筋、の5点についての改革の基本方針を提示し、その具体化を急ぐことが求められている、としている。
16日に衆院が解散され、実際の政策実行は総選挙を経て誕生する新政府に委ねられることになる。その意味で、「各政党は、マニフェストないし政権公約に、重要なテーマに関わるビジョンと主要施策を示して、国民に選択を問うべきである」(日本総研)。そうすれば、本来政治空白は避けるべき状況にあるとはいえ、「むしろ総選挙が政策実行力を高めることにつながるものと期待できよう」(同)。