あるアナリストの調査報告によれば、米国では携帯のデータ通信売上が引き続き上昇する一方、2012年第3四半期に初めて"メッセージング"、いわゆる「SMS/MMS」「Texting」といったショートメッセージサービスの減少が見られたという。原因の1つには同種のメッセージサービスを実現するFacebookやTwitter、Skypeなど各種サービスやアプリの台頭があり、これが結果的にSMSの領域を侵食した可能性だ。
同件はNBC Newsなどが報じている。元となったのはChetan Sharmaの発表した「US Mobile Data Market Update Q3 2012」というレポートで、同四半期の前期からの米国の携帯データ通信売上の成長率は3%で、年率では17%もの上昇を見せている。第3四半期における売上は199億ドルに達し、これは米国の携帯業界サービス売上の43%に相当するという。ところが、長らく携帯電話業界の牽引役として活躍してきたSMS/MMSといったメッセージングサービスの利用率は、初めて減少に転じたという。同社によれば、いちどサービスの普及率が7~9割に到達すると、今度は逆に減少に転じる減少がみられ、これらメッセージングサービスがこの減少期に差し掛かったというのだ。NBC Newsによれば、同社が出した具体的なデータはユーザー1人が1カ月あたりにやりとりするテキストメッセージ数は第3四半期に678通で、これは前期の第2四半期の696通から初めて減少に転じたというのだ。
だが米国携帯電話業界団体であるCTIAは、このChetan Sharmaの見解にデータを出して反証している。それによれば、2012年における米国内でやり取りされたテキストメッセージの数は前年の2兆2060億通から3%上昇して、2兆2730億通だったとしている。立場の異なる者同士のデータであり、具体的にどちらが正しいかは指摘しにくいが、初めて減少が確認されたという分析に対して真っ向から業界団体が反論するあたり、そろそろサービス転換の岐路が近付いているという証拠かもしれない。
もともと米国では音声通話がサービスの中心だったこともあり、音声通話時間を前面に押し出した料金プランがアピールされてきた背景がある。一方で音声通話が頭打ちの傾向が見えてくると、こんどは急増するテキストサービスに着目し、従量制によるサービス料金や無制限プランの提案など、音声通話に並ぶ事業の中核としてきた。日本と異なり、パケットによるデータ通信の比重が全体に低かった理由がここにある。だが前述のようにこのセオリーが崩れてくると、携帯キャリアの収益の源泉が奪われる結果にもなりかねない。現在各社はデータ通信料金の実質的な値上げや容量キャップの導入などにまい進しているが、これもまたWebサービスや携帯アプリの普及により、従来型音声通話やショートメッセージサービスからユーザーがシフトしつつあることを反映したものである可能性がある。