富士通は13日、同社ノートPCの生産拠点である島根富士通にて、メディア向けの工場見学会を開催した。見学会は、富士通執行役員の齋藤邦彰氏と島根富士通代表取締役社長の宇佐美隆一氏による富士通のPCビジネスや島根富士通の取り組みの紹介と、実際の製造ライン見学の2ブロックにわかれていたが、まずは実際の製造現場の模様から、写真でご紹介していこう。

【レポート】「富士通生産方式」で高品質なPCを - 島根富士通でWindows 8搭載ノートPC製造工場を公開:取り組み紹介編」もあわせてお読みください。

1日100種類のプリント基板を制作 - 1Fのプリント基板製造ライン

まず、島根富士通の概要を紹介しておこう。1989年に設立された島根富士通では、現在富士通のノートPC「LIFEBOOK」シリーズの製造を、基板製造から完成品の梱包まで一手に引き受けている。年間の生産台数は200万台(2011年度実績)だ。

同社工場の1Fでは、ノートPC用プリント基板の製作や組み立てを行っている。基板実装用の製造ラインが12ライン敷かれ、基板の部品倉庫や完成品用の倉庫も備える。ここで製造される基板は1日に約100種類。1日に製造されるノートPCの種類自体は20種類程度だが、同じ種類のノートPCでも海外向けは基板の種類が異なるため、100種類程度に上るという。

製造するプリント基板の例

完成したプリント基板。1枚の板から2枚のプリント基板が製造される

ここではシールを貼る、目視で検品を行うなどの単純作業で積極的にロボットを取り入れ、できるだけ人的資源をかけずに製造工程を効率化させる取り組みがなされている。

従来は3人で行っていたという検査工程。シール貼りや目視での検査を機械化し、工程人数を1名とした。機械へ基板を置く作業は人の手によるものだが、今後はそれも自動化を目指す

重要な点は「ラインを止めないこと」。このため、自動で基板に部品を実装するシステムでは、「段替え」と呼ばれる部品交換時の時間ロスを少なくする試みがなされている。「段替え」とは、同じラインで製造する基板の種類が変わる時、(実装に必要な部品が異なるため)自動実装する機械に取り付けている部品を変える作業を指す。

段替え時はラインが止まってしまうため、「できるかぎり共通の部品を実装できる基板を製造する」という。部品の共通率は従来は約2割と低かったが、今では6割程度に向上している。

なお、基板製造に必要な部品の最小サイズは0.4×0.2mm。1個を視認するのに特殊な顕微鏡が必要になるほどの極少サイズの部品は機械が自動実装する。

USBポートやHDMIなどを自動実装する汎用マウンター

このパーツを交換するロスをいかに少なくするかが課題

微小サイズの部品も自動実装

基板実装に必要な部品の最小サイズは0.4×0.2mm。顕微鏡でないと視認も難しい

ヒーターパネルと温風で基板に付けられたクリーム状のハンダを付けるリフロー機。内部は220度から270度もの高温だ

3Dカメラによる画像処理で、ハンダ付けの処理を高速で検査する自動外観検査機

部品ズレや浮きなどの実装状態を画像で自動確認する実装検査機

基板の製造ラインでは、各ラインの生産量が平準化されるよう、時間軸に沿って置かれたカードで、基板の種類や生産量を管理。5分ごとに担当者が札を取りにくるため、ほぼリアルタイムで各ライン生産量の差分を確認できるようになっている。

現状はカードの管理で各製造ラインで生産量を平準化している

完成したプリント基板

1日で約100種類のプリント基板を製造する

Win8時代はセットアップも工程内に - 2FのノートPC組み立てライン

2Fでは、プリント基板にHDDやドライブ、キーボード、ディスプレイなどを組み込み、PCを出荷状態まで完成させる製造ラインが組まれている。

見学したのは家電量販店向けに出荷するA4ノート「LIFEBOOK AH77」シリーズの製造ライン。この製造ラインのリードタイムは約80分で、現状は74秒に1台のPCが完成するよう生産量が管理されている。最大9つの製造ラインを稼動させると、全体で1日に約8,000台から9,000台を製造できる計算だ。

基板にHDDやファンなどが取り付けられた状態。この基板はUltrabook「LIFEBOOK UH」シリーズのもの

LIFEBOOK AH77の製造ライン

流れている製造ラインが止まらないよう、各工程を担当するスタッフの作業スペースは、工程ごとに3分割されている。

作業を終えていない基板が自分の作業スペースより先に流れてしまった場合は応援を呼び、駆けつけた応援スタッフは、各スタッフの右隣にある空きスペースで作業ができる。また、自分の作業スペースより前に流れている基板でも作業をしたいときは、左隣の空きスペースで作業できる。

台手前の青いラインが作業スペース。奥が応援スタッフの作業スペース、手前側が自分の作業スペース前でも手をつけて良いスペース。「ライン外者」と呼ばれる応援スタッフは各製造ラインに1人配置され、全工程に精通している

HDDは最大30台をストックして置ける。30台を順次フォーマットする

ノートPCにディスプレイを取り付ける作業工程。工程の中でも難しい作業の1つという

基本的な組み立てが終わると、CPUやOSのシールを自動で貼りつけ、OS起動チェックを行い、黒いボックスの中で画質やスピーカー、キー印字などの確認自動でを行う。なお、OSのセットアップ作業は、Windows 7時代はユーザーに委ねられていたが、Windows 8搭載機からは「それも手間になってしまうだろう」と、作業工程の1つに組み込まれた。

CPUやOSのシールは自動で貼り付けられる

OS起動チェック。次の工程に進むまでの距離はOSが立ち上がるまでの時間に沿った長さとなっている

Windows 8搭載モデルから工程に追加されたセットアップ作業。ラックに入れた状態で行われる

「LIFEBOOK AH77」に限らず、同社の製造ラインでは1ライン上でHDDのフォーマットからWindows 8の動作確認、出荷前の検品まで全て行うため、製造ラインの最後には保証書を入れた出荷前の箱の状態となる。

最終確認が終わると保証書や説明書などを箱に同梱

製造ラインの最後には、出荷前の状態となっている

最終確認が終わると保証書や説明書などを箱に同梱

製造ラインが終了する時には、出荷前の梱包状態となっている

なお、島根富士通のロビーには、同社で製造された記念PCやプロトタイプモデルが飾られていた。

創業開始時からの島根富士通のあゆみ。1990年当時はWindows 3.1が発売され、CPU性能は33MHzだった

50万号目の記念PC(1994年)

100万号目の記念PC(1995年)

1000万号目の記念PC(2003年)

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さて、実際の製造現場の様子はここまで。のちほど記事の後編として、齋藤氏と宇佐美氏による富士通・島根富士通の取り組み紹介のプレゼンテーションの内容をご紹介する予定だ。

製造ラインの模様の写真スライドショーはこちらから→