PFUは12日、ドキュメントスキャナ「ScanSnap」シリーズの新モデル「iX500」の発表会を開催。多数のデモ機や歴代モデル、パートナー製品など充実した展示を行い、強気の販売目標を語るなど、大きな意気込みを感じさせるものだった。

iX500の概要は別記事『「ScanSnap」待望のフルモデルチェンジ - Wi-Fi搭載でスマホなどと直接連携』を参照いただきたいが、本体にWi-Fi(無線LAN)を内蔵し、スマートフォンやタブレットなどと直接連携できるようになったのが大きな強化点だ(無線LANルータなどの親機は必要)。スマートフォンやタブレット側の操作で、iX500のスキャン動作を実行し、スキャンデータをスマートフォンやタブレット側へ自動的に転送できる。

ScanSnap iX500

発表会の冒頭では、PFUの代表取締役社長、長谷川清氏が「ScanSnapへの想い」を語った。ScanSnapが生まれた2001年からの11年間で、100カ国以上で販売され、2012年は累計出荷台数が200万台を突破。近年は年間50万台のペースに乗り、ドキュメントスキャナのベストセラーへと成長するにいたった。

PFU 代表取締役社長 長谷川清氏

振り返って1990年代の後半、PFUは「近い将来、紙を使っている仕事を、ディスプレイで紙と同じように扱える時代が来る。そのときはスキャナが当たり前のように使われる」とイメージしたという。そこで、まったく新しいスキャニングソリューションの創出に着手し、ScanSnapが産声を上げた。

オフィスで使われる書類/文書は、1枚、複数枚、モノクロ、カラー、片面、両面といったものが混在している。それをユーザーが意識せずに、「書類をPCにコピー」する感覚で、「とにかく簡単」が命題だったという。「紙の書類をボタン1つで電子化、PDF化という今までにないコンセプトを作り上げた。簡単、スピーディ、コンパクト、そしてワンタッチで直感的に使えるスキャナを追求し、ITの進化と時流を敏感に察知しつつ、コンセプトに磨きをかけて進化してきた」(長谷川氏)。

そして、HDDの大容量化とブローバンド化(高速な常時インターネット接続)の時代になり、さらにモバイルコンピューティングが一気に普及。この頃から、ScanSnapは北米を中心に出荷台数を大きく伸ばし、コンパクトモデルの「ScanSnap S1300」や「ScanSnap S1100」というラインナップも拡充された。ちなみに日本では、アップルのiPadが登場したとき、ScanSnapの販売台数が約2倍に伸びたという。言うまでもなく、これは自炊ブームの影響だ。

ScanSnapの歴史(写真左)と、展示されていた歴代モデル(写真右)

現在はEvernoteなどのクラウドサービスが花盛りだが、ScanSnapはいち早くクラウドサービスとの連携を実現してきた。そこにスマートフォンやタブレット、いわゆるスマートデバイスの台頭が加わり、ScanSnapでスキャンしたデータをクラウドサービスへアップロードし、いつでもどこでもスマートデバイスで活用するという使い方が生まれている。長谷川氏は「Wi-Fiを内蔵したiX500はScanSnapの新しい世代。ライフスタイルを進化させる」とまとめた。

2001年に登場した「ScanSnap fi-4110EOX」

2012年に累計「200万台」を達成

ScanSnapのコンセプト

コンパクトモデルの「ScanSnap S1300」(左)と「ScanSnap S1100」(右)

各種クラウドサービスとの連携をいち早く実現

新モデルのiX500と、スマートデバイス、クラウドサービスがほぼシームレスに連携

PFUの技術と熱い想いをすべて注いだ

続いて、PFUの取締役専務、宮本研一氏が、デモを交えながらiX500の機能とテクノロジーを紹介。今回のiX500は「ScanSnap S1500」の後継となり、実に約3年半ぶりのモデルチェンジだ。

PFU 取締役専務 宮本研一氏

独自開発のデュアルコアプロセッサ「GIチップ」

「ScanSnapが目指すのはカタログスペックではなく、どれだけ簡単に使えるか、利便性を感じていただけるかにこだわってきた。これが基本コンセプト。iX500には、PFUの技術と熱い想いをすべて注ぎ込んだ。ユーザーの環境変化に応え、従来のユーザーだけでなく、スマートデバイスやクラウドサービスを使いこなしている人にも喜んでいただけると確信している」(宮本氏)。

ScanSnapのコンセプト

デバイスやワークスタイルなどの変化に順応するScanSnap

iX500の本体デザインは、イタリア・ミラノのデザインスタジオ「toshisatojidesign」が手がけた

宮本氏はiX500のポイントを3つ挙げる。1つは「ワンタッチでスマートデバイスに直結」で、PCレスでスキャン操作が実行できるようになった。独自開発のデュアルコアプロセッサ「GIチップ」を搭載し、画像処理やWi-Fi、USB 3.0といった各種の処理をiX500内部で行う。

従来機のS1500はPCを介してスキャンデータをスマートデバイスへ転送

新モデルのiX500は、PCレスでスマートデバイスと連携可能

PFUが独自に開発した「GIチップ」

2つ目は「ハイスピード」。単なるスキャン速度ではなく、iX500のカバーを開けて起動、原稿セット、スキャン、読み取り可能なPDF化(OCR処理)という、トータル時間を重視したという。実際、これらのフローに要する時間は、従来モデルのS1500ではだいたい36秒だったが、iX500では約17秒まで短縮されている。

スキャナの「速度」はトータル時間が重要

iX500はトータル時間を大幅に短縮

スキャン速度の向上だけでなく、各種処理の並列実行を追求

3つ目は「ハイクオリティー」。ユーザーの原稿を絶対に傷付けないことがポリシーだとし、読み取り可能な用紙を拡張。エンボス処理されたキャッシュカード、クレジットカードといった、プラスチックカードも読み取れる。また、紙送り機構に業務用スキャナで用いられるブレーキローラーを採用しつつ、各種消耗品の寿命を拡大することで、ランニングコストが従来比で半分以下となった。「100カ国以上の紙で実績をあげたPFUの技術を凝縮した。世界中の紙を知り尽くしたPFUならではの信頼性、安定性と耐久性を実現している」(宮本氏)。

iX500は多種多様な原稿を読み取れる

高耐久性の消耗品を採用することでランニングコストを低減

また、宮本氏はドキュメントスキャナの市場動向についても述べた。調査会社のデータによると、オフィスのスキャナ市場は年間で10%の伸び率とされているが、宮本氏は「まだまだ未熟で発展途上の市場」とする。「ドキュメントスキャナの便利さをユーザーに伝え、使ってもらうことで市場は伸びる。ユーザーのワークスタイルを支援し、進化を目指す。それがScanSnapの使命と考えている」(宮本氏)。

PFUが考えるスキャナ市場は、上述(調査会社のデータ)の2倍。PFUのドキュメントスキャナは、2012年に年間50万台の出荷台数を達成したが、2015年には年間85万台、その先はワールドワイドで年間100万台と累計500万台の達成を目指すとした。

調査会社によるオフィスのスキャナ市場予測

スキャナ市場の拡大がScanSnapの使命

ScanSnapは年平均で20%の成長を見込む

Mac OS X環境でもソフトウェアが機能アップ。マイクロソフトのWord/Excel/PowerPoint形式へと変換でき(写真左)、バックグラウンドのOCR処理が可能となった(写真右)

プレゼンテーションのスライドショーはこちらから →