「ノマドワーク」という言葉を聞いたことがあるだろうか。家やカフェなど、オフィス以外の場所で働くスタイルを指す言葉で、遊牧民を意味する"nomad"が語源となっている。ノマドワークが注目されるようになったのは、ここ数年のこと。背景には、ノートPCやスマートフォンなどモバイル端末が高性能化したことと、インターネットおよびクラウドサービスなどが普及したことで外出先でもオフィスと遜色ないレベルで仕事を進められるようになったことがある。

今回、マイナビニュースでは同誌会員にノマドワークに関するアンケート調査を実施した。実施期間は10月22日から25日までで、874件の有効回答を得た。

回答者の約20%がノマドワークの「意味まで知っている」

まず、ノマドワークという言葉を知っているか聞いたところ、「聞いたことがない」と答えた人が59.1%(517人)と6割近くだった。一方で「聞いたことはあるが意味は知らない」と答えた人は19.6%(171人)、「意味まで知っている」と回答した人は全体の21.3%(186人)にのぼった。ひと昔前には、ごく限られた人にしか縁のなかったキーワード「ノマドワーク」だが、世間にも周知が進みつつある様子がうかがえる。

ノマドワークという言葉を知っていますか、に対する回答

続いて、屋外(家やカフェなどオフィス以外)で働くことは多いか聞いたところ、「全くない」と答えた人が80.8%(706人)だったのに対し、「ときどきある」と答えた人は12.8%(112人)、「よくある」と回答した人は6.4%(56人)だった。実に2割弱の人が、ノマドワークを実践しているという結果になった。

屋外(家やカフェなどオフィス以外)で働くことは多いですか、に対する回答

ノマドワークのニーズは約半数、能率アップへの期待感も

さらに興味深いことには、オフィスでなくても仕事ができると思うかという質問には、「ある程度はできると思う」と答えた人が52.1%(455人)と半数を超えた。「できると思う」と回答した人は20.0%(175人)なので、合計で72.1%の人がノマドワークができる状況にあるということになる。これは予想以上に大きい数字だった。

オフィスでなくても仕事ができると思いますか、に対する回答

では、どれくらいの人がノマドワークをしてみたいと思っているのか。可能であればオフィス以外の場所で仕事がしたいと思うか、という質問には「とてもそう思う」と回答した人が19.9%(174人)、「ややそう思う」と答えた人が33.6%(294人)にのぼった。つまり半数超(53.5%)の人がノマドワークに肯定的という結果になる。前述のように、ノマドワークのワーキングスタイルを既に実践している人の割合が2割弱であることを考慮すると、今後さらにノマドワークが普及していく可能性が考えられるのである。

できるならば、オフィス以外の場所で仕事がしたいと思いますか、に対する回答

続いて、ノマドワークに肯定的だった人を対象にその理由について聞くと、「上司や部下を気にしなくてすむ」と答えた人が57.3%(268人)で最も多かった。以下、「オフィスより集中できる」と回答した人が38.9%(182人)、「アイデアが浮かぶ気がする」と答えた人が32.3%(151人)と続く。ノマドワークにより仕事の内容が充実する、と考えている人が多い傾向が見られる。

でとてもそう思う・ややそう思うと回答した理由はなぜですか、に対する回答

ノマドワークに必要な道具として「スマートフォン」が台頭の兆し

そこでノマドワークには何が必要だと思うか聞いたところ、「ノートPC」と回答した人が90.8%(794人)と圧倒的多数だった。また、「無線LAN(Wi-Fi)環境」と答えた人も53.1%(464人)と過半数を超えている。次に多かったのは「携帯電話」と回答した人の38.9%(340人)だが、「スマートフォン」と答えた人も32.6%(285人)にのぼり、仕事に欠かせない機器として携帯電話に次ぐ存在になってきていることがうかがえる。その他の回答は1.7%(15人)で、「電源」や「インターネットのセキュリティ」の確保を求める声があった。

携帯料金の会社負担は約70%が「なし」

このほか、回答者の勤務環境についても聞いた。まず、勤め先に在宅勤務制度があるか聞いたところ、「制度がない」と答えた人は76.2%(666人)と最も多かった。「育児時」と回答した人は9.3%(81人)、「災害時」と答えた人は4.3%(38人)、「節電時」と答えた人は3.9%(34人)で、いずれも10%を割りこんでいる。今後、ノマドワークの認知と需要が高まるにつれ、企業の勤務環境に変化は見られるだろうか。注目していきたいところだ。

勤め先に在宅勤務制度はありますか、に対する回答

続いて、携帯電話の料金を会社が支給してくれるか聞いたところ、「支給されない」と答えた人が68.0%(594人)で約7割という結果となった。このほか、「会社が端末を貸与」と回答した人は24.3%(212人)、「会社が支給(明細書などを元に実費を申請)」と答えた人は4.5%(39人)、「会社が支給(毎月定額)」と答えた人は3.3%(29人)。合計で32%の人たちは、何らかの形で会社から携帯代が支給されているということになるが、この比率を上げることがノマドワークの需要が高まる上での課題となりそうだ。

携帯代は会社が支給してくれますか、に対する回答

最後にオフィス以外で仕事をする際、携帯料金が「支給されない」「会社が定額支給」と回答した623名を対象に電話料金は気になるか聞いたところ、「とても気になる」と回答した人は28.2%(176人)、「やや気になる」と答えた人は24.6%(153人)。一方で「あまり気にならない」と答えた人は20.4%(127人)、「全く気にならない」と答えた人は26.8%(167人)だった。電話料金については、ワークスタイルなどによってだいぶ認識が異なると考えられる。

オフィス以外で仕事をする際、電話代は気になりますか、に対する回答

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今回のアンケートでは、ノマドワークという言葉が少しずつ世間に認識されつつある現状が明らかになった。また実際にノマドワークをする機会を持たない人が多い一方で、オフィスでなくても仕事ができる・ある程度はできると答えた人が合計の7割超、したいと思うかについては、とてもそう思う・ややそう思うと肯定的にとらえている人が全体の半数超と、"ノマドワークはできる状況だが、現在はしておらず、積極的に業務に取り入れるまでには至っていない"というアンバランスな実態が明らかになった。これは企業も労働者も、まだノマドワークという文化に馴染みが薄いゆえのことだろう。今後の企業動向の変化に注目していきたい。

では、ノマドワークに肯定的な人は、どのような意見を持っているのだろうか。

ノマドワークに興味を持った468人を対象に、その理由を聞いた結果では過半数以上の人が上司や部下を気にしなくてすむからと答えており、次点でオフィスより集中できる、次々点でアイデアが浮かぶ気がする、となっている。周囲の環境が変わる(上司や部下がいない)と気遣いの心配がなくなり、集中力が増し、仕事の能率が上がると考えている人が多いと言えるだろう。

ノマドワークに必要なものについては、9割を超える圧倒的多数の人がノートPC、過半数の人が無線LAN環境と回答。一方でスマートフォン・タブレット端末と答えた人も全体の2~3割を占める結果となった。スマートフォン・タブレット端末は、フルブラウザによるWeb閲覧やファイルの圧縮・解凍、Office文書の閲覧・作成・編集、クラウドサービスの利用など、ノートPCと同じ水準で作業が行えるまでに高機能化しており、オフィスにいなくてもスマートフォン・タブレット端末さえあれば多くのことがこなせる。今後、出先におけるビジネスツールとしての需要が高まっていくのも確実だろう。

このように今や"オフィスにいなければならない"理由はどんどん少なくなってきている。ノマドワークのような、場所にとらわれない働き方が増える素地が整いつつあると言えるのではないだろうか。

携帯電話の業務利用についてのアンケート

調査時期 : 2012年10月22日~2012年10月25日
調査対象 : マイナビニュース会員
調査数 : 874件
調査方法 : インターネットログイン式アンケート