ムーディーズ・ジャパンは7日、日本の銀行業界に対する見通しをネガティブから安定的に変更した。邦銀を取り巻く事業環境と、各行の資産内容および自己資本、さらには流動性が安定的に推移していること理由とするもの。

今回の見通し変更は、ムーディーズが2008年に見通しをネガティブとして以降、初めての変更となる。その理由の詳細は、今回リリースされた「銀行システムアウトルック : 日本」(英語版 "Banking System Outlook: Japan")に記されている。同レポートは、今後1年から1年半程度の日本の銀行業界の信用ファンダメンタルズについてのムーディーズの見通しを示したものとなっている。

上記期間を対象としたベースラインシナリオ下では、日本の経済成長が緩やかながらも過去のトレンドを上回ると想定しており、その結果、邦銀の事業環境は安定的に推移するとしている。

また、邦銀の資産内容および自己資本について、中小企業金融円滑化法が2013年3月末に期限切れを迎えるものの、「その不良債権額が大幅に増加することはない」としている。「邦銀の資産に関する指標は海外の競合他行比でも良好であり、また自己資本比率も高水準となっている」(ムーディーズ)。

また、「資金調達および流動性は邦銀が強みとするところ」(同)。民間セクターの預金は潤沢に推移すると見込まれており、各行の海外貸出の伸びは、対象行のホールセール調達への依存度をわずかに高めるにすぎないであろう、としている。

「邦銀にとって、国内外での貸出機会は増大している」(同)。足元の経済成長率が、過去のトレンドを上回っていることも、国内貸出の継続的な回復に寄与しているという。欧州の銀行をはじめとする、海外の競合行が国外でリスクアセットを削減していることは、邦銀の海外向け貸出金の増加に寄与している、としている。