名古屋の繁華街のど真ん中に、超一流の科学技術に触れる場所があることをご存じだろうか? 今回ご紹介するのは、地下鉄伏見駅すぐの名古屋市科学館だ。
直径35メートルと世界最大サイズのドーム
2011年3月のリニューアルオープンで、展示室の魅力も大幅にアップした同館。リニューアルによって、館内にあるプラネタリウムのドームは直径35メートルという世界最大サイズとなり、ギネス世界記録に認定された。
今、世界一がこの名古屋の街中にあるのだ。科学館マニアの筆者は、日本国内外の科学館やプラネタリウムを訪れてきたが、名古屋市科学館は明らかに変わっている。館内を元気に駆け回る子どもたちの姿より、大人たち、それもカップルの姿が目立つのだ。
実際、科学館総務課森田雅美さんの話によると、リニューアル以前には入館者が大人6:子供4の割合だったのが、リニューアル後には4:6に逆転したという。
入館者数自体も、以前は年間60万人ほどであったものが、23年度は150万人と2.5倍にもなったというのだから驚きだ。しかも、年間パスポートを手に入れ何度も訪れるリピーターまで増えてきている。
閉館後や休日にも学芸員がプログラムを考案
その魅力の秘密を探るために、プラネタリウムの運営責任者である野田学天文係長にお話を伺ってみたが……熱い。この人は熱すぎる!
「今の時代、テレビでも難しいことは放送しなくなったが、この世の中には知れば知るほど面白い最先端の発見がいっぱいある。研究者だけが知っていてももったいない。皆さんにもその面白さをぜひとも知ってほしい」。そう語る野田係長の目は、始終キラキラと輝いていた。
係長自身、かつて子ども時代は名古屋市科学館のお世話になっていたというのだから筋金入りだ。彼の情熱はとどまるところを知らない。プラネタリウムのプログラムも毎月テーマが変わるばかりか、6人の学芸員が閉館後や休館日にもドームに集まり、検討を重ねて内容を練り上げるのだという。
最近のプラネタリウムにありがちな、声優などによる録音ナレーションを流すといったトレンドには真っ向から反発。担当者が「ライブで」その日その日の天文現象の話題を織り交ぜつつ、解説を行うというから驚きだ。
プログラムの内容も、ロマンチックな星座や神話の話から、ここ数カ月で新たに発見された近隣太陽系の惑星などの最新科学トピックまでと幅広く、老若男女を全く飽きさせることがない。大宇宙の広大さや深遠さに圧倒されることだろう。
プラネタリウム以外の展示も、他の科学館とは一線を画している。ただ「眺める」ようなものではなく、触って関わり体験できることがコンセプトになっている。
「子どもだましではなく、大人でも楽しめ展示」
館員によるナビゲーションや体験教室も充実していて、特に「放電ラボ」は圧巻。4メートルもの巨大な電気火花がごう音とともに暗闇を切り裂き、日常では知り得ない電気の凄(すさ)まじさと不思議を体験することができるのだ。
野田係長は語る。「子どもだましの展示ではなく、大人でも楽しめるようなものを目指している」。訪れる人々の顔を見れば、係長の想いが十二分に伝わっていることは明らかだ。この世界の素晴らしさを知り、愛する人々とともに語らい合いたいのなら、ぜひ世界に誇れる名古屋市科学館を訪れてみてほしい。