調査会社の米IHS iSuppliが11月5日(現地時間)、iPad miniのWi-Fiオンリー版16GBモデルの部品原価(Bill of Materials: BOM)が188ドルだという分析結果を発表した。これは以前同社が分析したGoogle (ASUS)のNexus 7の16GBモデルのBOMである159.25ドルよりも高く)、改めてAppleがGoogleやAmazon.comが仕掛けている200ドルの7インチタブレット市場と競合する気がないことがうかがえる。
部品原価の4割を占めるのはディスプレイ関連
詳細はiSuppliのレポートを参照いただくとして、ここではハイライトを紹介する。
主要部品別にみると、16GBのNANDフラッシュと512MBのDRAMで15.50ドル、ディスプレイとタッチモジュールで80ドル、A5プロセッサが13ドル、カメラが11ドル、センサーや無線のコンボモジュールが15ドル、電源管理モジュールが7.50ドル、バッテリが13.50ドルとiSuppliでは見積もっている。
この中でNexus 7のBOM分析と比較して明らかに高い部品は、液晶ディスプレイ+タッチスクリーンとカメラの部分で、特にカメラは搭載するセンサーやレンズの性能と数がそのまま反映されたものとなっている。またBOMの4割以上を占めるディスプレイ関連だが、iSuppliによればiPad miniではGF2のマルチタッチスクリーン技術を導入しており、これが薄さを実現する一方で、製造上の難易度を押し上げているという。7インチより大きい8インチ弱というサイズが理由ではないようだ。
また以前の分解レポートにもあったように、ディスプレイのサプライヤはLG DisplayとAUOだけでなく、Samsungも含まれていることが確認されている。逆にプロセッサはNexus 7のTegra 3が21ドルとなっていたのに対し、iPad miniのA5 (32nmのシュリンク版)は13ドルと安く見積もられている。
Nexus 7やKindle Fireとはまったく異なる価格戦略
興味深いのはAppleの価格戦略だ。前述のように、200ドルタブレットと競合するつもりならば、販売価格を200ドルラインまで下げるためにBOMを極力抑える方向に動くはずで、組み立てコストを含めて約200ドルという水準は明らかにこの市場をターゲットにしていないことを意味する。Wi-Fi 16GBモデルの販売価格は329ドルだが、これもAppleの粗利や流通マージン、販売パートナーの利益を考えてBOM合計(200ドル)を6割程度として逆算した「333ドル」という水準に合わせているとみられ、安売りはまるで考えていないようだ。
GoogleのNexus 7やAmazon.comのKindle Fireは、ほぼ原価+αの価格で赤字販売し、残りはコンテンツ販売で稼ぐというモデルに特化しており、iPad miniは逆にプレミア戦略を前面に押し出している。GoogleとAmazon.comは製品がチープになりすぎない程度に少しずつBOMを削って利幅を増やしているわけで、その点で惜しみなく他のiOS製品と同レベルの技術を投入しているiPad miniとは一線を画している。