世界中で高級食材として愛されているかきがひつまぶしに!?

「ひつまぶし」と言われてすぐに思いつく素材は? もちろん「うなぎ」だろう。東海エリアにはひつまぶしの名店が数多く存在する。しかし近年、この揺るぎない「うなぎのひつまぶし」土壌にあえて挑戦し、新たなるひつまぶしを開発した店があるのだとか……。

まろやかな「幻のかき」をぜいたくに使用

その店とは、「渡利(わたり)かきのひつまぶし」で注目を集めている三重県の「喜久寿司」である。渡利かきとは、紀北町の南部にある汽水湖、白石湖で生産されているかきのこと。「幻のかき」とも呼ばれ、クセのないまろやかな味は、全国の食通をもうならせている。

過疎地と言われる三重県南部にありながら、予想を上回るにぎわいを見せた2012年1月開催の「きほくラブめし決定戦」。この栄えある第1回グランプリに輝いたのも、この渡利かきのひつまぶしだったのである。

地元の特産品である渡利かきを上品に味付けしているため、生臭さは全く感じられないと評判だ。その秘密を知るために、渡利かきのひつまぶしを開発した喜久寿司へ直撃取材を試みた。

「シーズンものといわれるかきですが、僕はお客様に一年中味わってほしい。そこで渡利かき生産者である水産会社とタッグを組んでこの商品を開発し、2011年から提供をはじめました」。柔らかい笑顔で語るのは、店主である浅尾さん。

「喜久寿司」店主の浅尾さん

特製たれに煮込まれたかき、最後は煮汁だしのお茶漬けで

では早速、評判のひつまぶしをいただこう。注文すると、待ち時間も少なく、いい頃合いに登場した。そこには特製のたれに煮込まれた、ご当地ブランド・渡利かきが、彩り鮮やかな錦糸卵に囲まれ盛り付けられている。

特製タレに煮込まれたカキは見事な味わい

まず、1杯目は茶わんによそってノーマルにいただく。さすが汽水湖で育った渡利かき。臭みが全く感じられず、ただただ「うまい」の一言に尽きる。続く2杯目は、さんしょう、わさび、のりを乗せて変化を楽しんで味わう。

ラストの3杯目は、そう、お茶漬けで。お茶漬けといってもかきの煮汁のだしがポイント。ここでも特製たれに煮込まれたかきとしょうがが、だし汁と絶妙にマッチしておりおいしい。

独特の臭みがあるかきを、ここまで香り豊かなひつまぶしへと展開させた浅尾さんの力量とセンスには脱帽である。全国区の知名度とはまだいえない「渡利かきのひつまぶし」であるが、三重県に来た際にはぜひご賞味いただきたい。大変個性豊かな一品である。

●information
喜久寿司
紀北町海山区相賀849-2