フルサイズセンサー機がより現実的に。それは、ドイツ・ケルンで開催された世界最大の写真・映像見本市「photokina(フォトキナ) 2012」でも、大きなトピックの1つだった。従来の常識を覆す低価格のフルサイズセンサー搭載カメラが複数のメーカーから出品されたが、ニコン「D600」もその1つだ。実売で20万円を大きく割り込むその店頭価格もあり、プロやハイアマでなくとも手を出しやすい。さて、そのポテンシャルは!?

「D600」正面。従来のフルサイズ機の常識を覆すコンパクトさ。ニコン製カメラのトレードマークであるグリップ上部の赤いラインは、丸みを帯びた形状になった

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ボディは、大振りなセンサーとミラーボックスの都合上、大柄になりやすいフルサイズセンサー機にしてはコンパクト。数値的には幅約141mm、高さ113mm、厚さ82mmで、男性としては決して大きくはない筆者の手のひらでもしっかりとホールドできる。D300など従来機に比べてやや細身&指先端側がえぐれたグリップ形状のおかげで、握りやすいせいもあるだろう。

背面液晶モニターは約92万ドット(VGA)。モニター右側にはライブビュー用のボタンと、写真撮影・動画撮影の表示状態を切り替えるレバーがあり、動画撮影時は16:9の表示になる

フルサイズ機である以上、どうしてもボディ厚が出てしまう。だが、D600はそれさえあまり感じさせない。AF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VRとのバランスも非常に良好

ホールドのしやすさは非常に重要で、このためにカード、バッテリーを含めて約850gの重量も想像以上に苦にならない。これなら、よほど重いレンズを付けない限り、運動会などで1日持ち歩いても耐えられそうだ。

本体左側。フォーカスレバーにはボタンがあり、これを押し込みながら前後ダイヤルを回すことでフォーカス方式やフォーカスエリアを選択する

本体右側。人差し指がかかる部分のグリップ形状が大きくえぐれていることがわかる。このおかげで、想像以上にホールドしやすいのだ

内蔵フラッシュをポップアップした状態

操作性のキーになるのは、左側のモードダイヤルだろう。D7000にきわめて近い形状のロック付きダイヤルで「M(マニュアル)」「A(絞り優先)」「S(シャッター速度優先)」「P(プログラム)」のマニュアル撮影モードとユーザーモード(任意の設定を登録しておける)×2、フラッシュ発光禁止モード、そして「AUTO」モードと「SCENE(シーン)」モードを備える。

撮影モードダイヤルと駆動モードダイヤルは2階建ての構成。駆動モード「Q」は静音モードで、シャッターボタンの動きにミラーが追従。撮影後、衣服で遮音してからミラーをリターンさせることが可能

カードベイは、SDカードタイプのダブルスロット。SD、SDHC、SDXCカードに対応(SDHC、SDXCカードはUHS-I規格に対応)

カードAが一杯になった時点でカードBを使用することができるほか、2枚同時保存も可能。RAW+JPEG同時記録時にRAWとJPEGを別カードに振り分けることもできる。カード間コピーにも対応

ヘッドホン端子やマイク端子、HDMI、USB端子、GPSユニット接続端子を装備

背面液晶モニターの標準情報表示(「info」ボタンを1回押した状態)

「info」ボタンを2回押した状態。画面上で撮影設定を素早く行える

背面液晶に水準器を表示させることもできる。三脚設置時に便利。なお、ファインダーの中に水準器情報は表示されない

ところで、冒頭にも書いたとおり、世の風潮はフルサイズセンサーへと向かっているわけだが、実際、フルサイズセンサーはどこがどう優れているのだろうか。ここで簡単におさらいしておこう。

カメラのセンサー(撮像素子)にはいくつかの種類がある。フルサイズと呼ばれるセンサーは写真用の35mmフィルムと同じ面積だ。一方、より低価格な一眼レフや一部のミラーレス機に搭載されているAPS-Cサイズのセンサーは、そのおよそ5分の3となる。つまり、仮に1画素あたりの大きさを同じとすれば、面積の大きいフルサイズセンサーの方が解像力が高いのだ。また、同じ画素数で比較するなら、APS-Cサイズのセンサーよりフルサイズの方が1画素あたりの大きさ(ピッチ)が大きくなる。

すなわち、1画素あたりが得られる光の情報量が多く、画質面で有利に働くというわけだ。カメラの画質は映像エンジンやレンズ性能も影響するので一概にはいえないが、単純にセンサーとしての性能においては、その面積が大きいほど優位性が高いことは間違いない。

ISO800、露出時間:0.133秒(オリジナル画像を見る:6,016×4,016ドット)

ISO1600、露出時間:0.166秒(オリジナル画像を見る:6,016×4,016ドット)

ISO3200、露出時間:0.076秒(オリジナル画像を見る:6,016×4,016ドット)

ISO6400、露出時間:0.04秒(オリジナル画像を見る:6,016×4,016ドット)

高感度性能はきわめて優秀。ISO6400でも十分に常用域だ。なお、ISO25600相当まで拡張できる

なお、D600のセンサーは、有効画素数約2,426万画素CMOSセンサー(35.9mm×24.0mm)。この大型センサーと、上位機種である「D4」「D800」シリーズと同一の画像処理エンジン「EXPEED 3」の連携は、撮影の快適さと画質への高い満足度を与えてくれる。なにしろAFが速くて正確。何を撮っても、撮り手の脳内イメージ以上に美しい画が紡ぎ出されるのだ。

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