既報の通り11月1日、日本マイクロソフトとNTTドコモは都内で記者発表会を開催し、法人向けタブレット市場の開拓に関して協業を行うと発表した。今後、両社は「共同顧客開拓・営業」「共同プロモーション」「パートナーソリューション共同開拓・連携」の3点で連携し、法人タブレット市場の活性化に向けて展開していくという。

日本マイクロソフト代表執行役社長・樋口泰行氏(左)と、NTTドコモ代表取締役社長・加藤薫氏

記者発表会では、日本マイクロソフト代表執行役社長・樋口泰行氏と、NTTドコモ代表取締役社長・加藤薫氏が登壇し、協業の狙いについてそれぞれの立場から語った。

そもそも協業がなぜこのタイミングだったのか。理由のひとつが、一週間前の10月26日に発売されたWindows 8の存在だ。樋口氏は「Windows 8は法人様からもご期待いただいており、100社を超える会社から引き合いがある。その半分は他のタブレット端末の導入を検討していたのをストップして、Windows 8の導入を検討してくださっている」と、法人市場におけるWindowsニーズの高まりを挙げ、今後の方針として法人向けのWindows 8タブレット端末の販売を強化していくと述べた。

協業はどちらから言い出したというわけではなく、「相思相愛だった」という

では具体的に法人はWindows 8のタブレットをどういった形で導入し、ビジネスに活かすのか。樋口氏がまず提案するのは、小売業での対面販売でタブレットにカタログを表示したり、在庫チェックや発注に利用するというものだ。樋口氏は「将来的には小売の現場でも店員一人ひとりがタブレットを持つことになると思う」と述べ、そこからいずれは社内の基幹業務でもタブレットを活用することになると予想する。

しかし、まだまだタブレットひとつで業務が遂行できるわけではなく、社内においてはタブレット以外にも別のWindows PCを使うことが想定される。そうなったとき、従来のタブレット端末では既存のアプリが活用できなかったり、ポリシーの管理やセキュリティ対策が難しかったり、外出先で社内システムが使えないなどの弊害が出てくる可能性がある。マイクロソフトが狙うのはここだ。

樋口氏は、「タブレットのOSがWindows 8であれば、もともと使っていたWindows PCとの親和性が高いため、違和感なく導入することができる」とWindowsタブレットのメリットを強調する。タブレット市場において後発であるにも関わらずマイクロソフトが強気な姿勢を崩さないのは、法人におけるWindows PCの圧倒的シェアが背景にしたものなのだ。

これについては、NTTドコモの加藤氏も同様の見解を示しており、「Windows 8の武器は高い操作性と豊富な端末のバリエーション。NTTドコモのLTE通信サービス「Xi(クロッシィ)」と組み合わせることで、たとえば外出先でもオフィスと同じ環境で仕事をするといった新しいワークスタイルを提案できる。この組み合わせで多くのお客様に利便を提供できると確信している」と今回の協業に自信をのぞかせる。

記者からはiPadについての質問も飛んだが、加藤氏から具体的な回答はなかった

加藤氏によれば、NTTドコモが提供するXiは「10月末時点で契約数は約670万」とのことで、これは当初の想定を上回るペースだという。今後は2015年度に4100万契約の達成を目指し、人口カバー率も2013年3月には100%を達成する見込みとのことだ。

OSと通信―― それぞれの分野でリーディングカンパニーを自負する両社のノウハウを合わせることで、ユーザーに最適なソリューションを展開することが、今回の協業における最大の狙いなのである。では具体的に、どのような点で協業するのだろうか。

両社が協業して行うのは、「営業活動」「プロモーション」「パートナーソリューション」の3つ

樋口氏と加藤氏は、マイクロソフトとNTTドコモの協業の柱として、「共同顧客開拓・営業」「共同プロモーション」「パートナーソリューション共同開拓・連携」の3点を挙げている。

「共同顧客開拓・営業」でのマイクロソフトの役割は、専任部隊による営業・技術支援から、クラウド活用提案を行い、顧客開拓を進めていくことだ。また「共同プロモーション」ではイベントやセミナーを共同参画したり、お互いのキャンペーンを統合するなどして強力に連携する。

これに対して加藤氏は、マイクロソフトとの強力な連携はもちろんのこと、「パートナーソリューション共同開拓・連携」においては、PCメーカーなどパートナー企業との連携を進める必要があると述べる。さらに、今後は法人市場へのWindowsタブレットの広がりがマス市場にも拡大し、Windows Phoneのニーズが高まる可能性があると予測。NTTドコモ、マイクロソフト、パートナー企業の3者によるエコシステムを推進することで、タブレット市場全体におけるビジネスチャンスを創出していくと語った。

最大手同士が協業したことで、タブレット業界はどんな方向に向かうのか

タブレット端末後発であるマイクロソフトと、iPadを持たないNTTドコモの協業は、間違いなく今後のタブレット業界に大きな影響を与えることだろう。樋口氏が想定する小売業におけるタブレットの活用は、すでにiPadなどを用いて一部の企業では始まっているが、今後Windowsタブレットが普及することで流れは変わるのか。共に法人に対しては圧倒的なシェアを持つ両社だけに、タブレット端末で先行するAppleにとっても楽観視できない展開を迎えそうだ。