10月27日、28日の2日間、東京青山の「スタジアムプレイス青山」で、フジヤエービック デジタルスタイルショップ主催のオーディオイベント"秋のヘッドホン祭2012"が開催された。

ヘッドホン祭は、国内外のヘッドホン最新モデルが一堂に会するイベント。多くのブースでは、来場者が自前のプレーヤーやスマートフォンから音楽を再生して試聴を行える。輸入ブランドのヘッドホンや、ハイエンドモデルなど、なかなか聴く機会のないモデルに触れられる機会として人気を集めているイベントだ。

会場は、スタジアムプレイス青山の7F~10Fの4フロアに分けられ、7Fは各ブランドの展示ブース、8Fは展示ブースと協同通信が発行する「Gaudio」誌の創刊オーディオイベント会場、9Fではヘッドホンアンプ試聴会場と展示ブース、10Fは新製品発表会などのイベント会場となっていた。

「秋のヘッドホン祭2012」会場の様子

ヘッドホン祭は、ヘッドホンの"現在"を体験することがメインのイベントだ。ここでは、全体的な流れと、気になった製品をいくつかピックアップしたい。

まずは海外ブランドから。以前は海外のヘッドホンというと、「ゼンハイザー」や「AKG」といった、いわゆる老舗ブランドがオーディオファンを中心に支持を集めていた。

それに対して最近では、「MONSTER」や「beats by dr.dre」といった、ヘッドホンメーカーとしては比較的新しいブランドが急速にシェアを伸ばしている。老舗ブランドが求心力を失ったというわけではなく、それらも新規のファンを取り込んではいるのだが、それよりも、新しいブランドの拡大のスピードは速い。

今、最も勢いのあるヘッドホンブランドの1つである「beats by dr.dre」

多くの新興ブランドに共通した特徴が、ファッション性とサウンドクォリティの両立だ。MONSTERなどでは、著名なアーティストや音楽プロデューサーとコラボレーションしたサウンドチューニングやデザインによって、彼らが作る音楽をより良い状態で再生できる能力を持たせている。さらに、そのスタイルも独創的だ。

MONSTERの「DIAMOND TEARS EDGE On-Ear Headphone」。一見キワモノのようにも見えるが、聴いてみると、低域の量感が特徴的な現代風のサウンド。音楽プロデューサーJ.Y.PARK氏とMONSTERのコラボモデルだ

デザイン性を前面に打ち出したヘッドホンは以前から存在した。しかし、その多くはエントリークラスのヘッドホンがベースとされており、オーディオ面では必ずしも満足できるものではなかった。ファッション性とサウンドクオリティを両立したヘッドホンは、2008年ごろからアメリカを中心にヒットし、その流れは全世界に波及、現在に至っている。

老舗ブランド「AKG」のカナル型イヤホン「K374」

こちらは、「harman/kardon」ブランドの「CL」。AKGの技術が導入されており、密閉型でありながら中高域のヌケのよさが印象的だ。デザインも個性的

イーフロンティアが国内販売するブランド「Klipsch」のインイヤーヘッドホン

オーバーヘッドタイプでは、年内にapt-xに対応したBluetoothモデルを投入するとのことだ

それに対して国内メーカーでは、積極的にデザインを前面に出したヘッドホンを展開するフォステクスのような例外もあるものの、比較的おとなしいデザインの製品が多い。

フォステクスの「KOTORI 301」。カラフルなパーツを自由に組み合わせられる。40mm径ドライバーを搭載

同じくカスタマイズ可能なインイヤータイプの「KOTORI 101」

国内の2強、ソニーとオーディオテクニカも、もちろん秋のヘッドホン祭2012に出展している。どちらも、モニタータイプやリスニング向けのオープンイヤー、重低音モデル、スポーツモデルなど、フルラインナップを展開しており、出展アイテム数も多い。

とはいえ、やはり注目なのは、秋のヘッドホン祭2012の直前に発表されたモデル。ソニーでいえば、密閉型ヘッドホンの「MDR-1R」シリーズ、オーディオテクニカでいえば、リニューアルされたエアーダイナミックヘッドホン「AD」シリーズということになるだろう。

オールマイティに使えるオーバーヘッド密閉型ヘッドホン「MDR-1R」シリーズ

予想以上のヒットモデルとなっている、コンパクトなBlurtoothスピーカー「SRS-BTV5」

ソニーのラインナップはタイの洪水以降、モニタータイプや重低音モデルといった狭いレンジを狙った製品だけになっていた。それを踏まえると、MDR-1Rは、同社のオーバーヘッド密閉型ヘッドホンのラインナップに、やっと復活したリスニング向けモデルだ。

オーディオテクニカの「AD」シリーズは、同社のオープンエアー型ヘッドホンの代表的なシリーズ。OFC7Nボイスコイルを採用した53mm径の大型ドライバーを搭載する「ATH-AD2000X」をフラッグシップとしており、拡がり感と繊細さ、そして、生音感の高さが抜群だ。

オーディオテクニカが10月16日に発表したエアーダイナミックシリーズの「ATH-AD2000X」

重低音モデルのベストセラー「SOLID BASS」シリーズも出展

それ以外の国内メーカーでは、JVCケンウッドの「HA-FXZ200」「HA-FXZ100」がなかなか面白い製品だ。この2モデルは、低域用には一種のサブウーファーである「ストリームウーファー」と、中高域用には「ツインシステムユニット」という3本のユニットを搭載するカナル型イヤホンだ。

JVCケンウッドの「HA-FXZ200」。サブウーファーをプラスしたトリプルユニットを搭載する

ポータブルプレーヤーやスマートフォンを強く意識した、カナル型や密閉オーバーヘッドタイプのヘッドホンでは、低域と高域にエネルギーを感じる、いわゆるドンシャリ型のサウンドのモデルが多い。HA-FXZ200とHA-FXZ100も、そのような傾向かと思ったのだが、実際に聴いてみると、そこまで極端な印象ではなかった。低域と中高域とを別ユニットにしたことで、中域のクリアさが際だっているように感じられる。

ティアックが国内販売するbeyerdynamicの「CUSTOM ONE PRO」。ハウジングに装備されたスライダースイッチで密閉型~オープンエアー型へと切り替えができる

また、ティアックが国内販売を行うbeyerdynamicのヘッドホン「CUSTOM ONE PRO」は、1台で密閉型~オープンエアーと、4段階でその性質を変えられるモデルだ。フラットで伸びのあるサウンドなのだが、スタイルを変更しても、音のバランスが極端に変わらないのが面白いところだ。今後、デザイン的なカスタムパーツも用意されるらしい。

テックウィンドが販売する「iWOW Universal音質向上アダプター」。既存のシステムにSRSのサウンドエフェクトをプラスするアダプターだ

ヘッドホンアクセサリでは、テックウインドブースに展示されていたSRS LABSの「iWOW Universal音質向上アダプター」が、なかなか面白そうな製品だ。同アダプターは、SRS WOWのサウンドエフェクトを加えるためのアダプター。入力が3.5mmステレオミニプラグで出力が3.5mmステレオミニジャックで、プレーヤーとヘッドホンなどの間に入れて使用する。ヘッドホンだけでなく、一般的なオーディオ機器にも使用できるとのことなので、テレビ用の外部スピーカーなどに使用しても面白いかも知れない。

秋のヘッドホン祭2012では、サウンドクオリティだけでなく、デザイン性も高いヘッドホンがやはり注目を集めていた。スマートフォンの普及により、日常的に身に付けるアイテムとしての要素が高まっているヘッドホン。この流れはしばらく続きそうだ。また、従来は一部のマニアしか使わなかったヘッドホンアンプが注目を集めており、数多く出展されている。ハイレゾ音源の普及とともに、これから目を離せないカテゴリーだろう。