本誌はこれまで3回にわたり、ネットギアが提供するエンタープライズNAS「ReadyDATA」について、実際に製品を導入しながらその特徴や使い勝手を紹介してきた。その内容からReadyDATAが、同クラスの他社製品に比べて安価なうえ、設定/管理が簡単であり、さらには各種のネットワーク機能によりパフォーマンス劣化を低コストで防げることがおわかりいただけたと思う。
そのような特徴を備えたReadyDATAだが、実のところ同製品はNASとしてだけではなく、iSCSI(internet SCSI)によるIP-SANとしても利用できる。こちらを利用することでさらに高いパフォーマンスのストレージ環境を構築することが可能だ。今回は、ReadyDATAのiSCSIによるIP-SANの利用について解説する。
IP-SAN(iSCSI)とは
ReadyDATAのiSCSIについて触れる前に、まずはIP-SANについて説明しておこう。
SAN(Storage Area Network)とは、HDDなどのストレージ装置を接続するための専用ネットワークだ。SANの種類としては、ファイバチャネルネットワークとIPネットワークがある。ファイバチャネルネットワークのSANをFC-SAN、IPネットワークのSANをIP-SANと呼ぶ。
FC-SANのファイバチャネルネットワークを構築するためには、ファイバチャネルスイッチが必要だ。そして、ホストにはファイバチャネルネットワーク用のインタフェースとしてHBA(Host Bus Adapter)が必要となる。ファイバチャネルスイッチとHBAの配線には、通常光ファイバケーブルを利用する。また、ストレージにアクセスするためには、ファイバチャネルプロトコルを利用する。
一方、IP-SANではイーサネットスイッチとイーサネットのNIC(Network Interface Card)で構築したイーサネットネットワークがあればいい。イーサネットなのでUTP(Unshielded Twist Pair)ケーブルまたは光ファイバケーブルを用いて配線することになる。IP-SANでストレージにアクセスするために、iSCSIやFCIP(Fibre Channel over IP)、iFCP(internet Fibre Channel Protocol)などのプロトコルを利用する。
FC-SANを構築するためにファイバチャネルスイッチやHBA(Host Bus Adapter)は一般にコストが高く、 FC-SAN構築にはかなりのコストが掛かってしまう。一方、IP-SANを構築するためのイーサネットスイッチやNICは広く普及していて低コストだ。ただし、IP-SANではストレージにアクセスするプロトコルのオーバーヘッドがFC-SANよりも大きくなるので、FC-SANよりもパフォーマンスが劣る。
NASとSANの違い
NASとSANの違いについても簡単に解説しておこう。
NASはファイルサーバ専用機であるため、コンピュータとNASのストレージ間はCIFS(Common Internet File System)やNFS(Network File System)などのファイル共有プロトコルによってファイル単位でアクセスする。NASでファイルシステムを管理しており、NASのストレージはコンピュータからはネットワークドライブとして認識されることになる。
一方、SANでは、コンピュータはiSCSIなどのプロトコルによってストレージにブロック単位でアクセスできるため、あたかもローカルドライブであるかのように扱うことができる。ファイルシステムはコンピュータ側で管理するかたちをとるため、SAN上のストレージを実際にシステムドライブとして割り当てることもできる。
次の図は、SANとNASでのストレージアクセスの違いをまとめたものだ。