神社の御神体(ごしんたい)には定められた形はなく、鏡や剣、玉、石、木など、各神社によって崇(あが)めるものは様々。鳥取県西伯郡大山町にある「木の根神社」では、境内にある老松「への子松」を御神体としているが、この松、ちょっと変わった形なのだとか……。
こちらの神社の御神体である松は、なんとその根の形が男根そっくりなのだそう。自然の妙としか言えない偶然の産物。その形状から、性病や夫婦円満、子宝などにご利益があると言われていて、昔から多くの人が参拝に訪れてきた、知る人ぞ知る古社なのだ。
小泉八雲の来訪を記念した石碑も立つ歴史ある神社
神社の鳥居をくぐるとすぐに石段があり、その上には社殿だけなく小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の記念碑も立っていいる。その理由について大山町役場観光商工課では、「実は、小泉八雲が赴任先の松江に向かう途中に宿泊したのが、この大山町だったのです」と説明。実際に小泉八雲は、ここを訪れたことを自著の『日本海に沿うて』にも書き残している。
御神体にまつわる神話も
さて、本題。社殿の中には、どう見ても男根を模(かたど)ったとしか思えない木が鎮座している。しかし、なぜこのような形の御神体を祀るようになったのか!? なんと、その理由は神話にあるのだとか。
昔、松助という生まれつき病弱な若者がいたという。彼は身体が弱いために思うように仕事もできず、結婚後もなかなか子どもを授かれなかったことを母親は心配していた。そこで近くの八幡さん(神様)にお参りしたところ、老人が現れて「この山の中腹にある大きな松の根にあやかりなさい」とのお告げ。
山の中に入ると、なんと本当に崖の上に大きな松の木があるではないか! 早速見つけた木の根を持ち帰ったところ、息子は身体が丈夫になりよく働くようになったばかりでなく、子宝にも恵まれたという神話が残されている。
そしてその後、身体の弱い人や子どもに恵まれない人などがたくさん参拝に訪れたところ、効能があったことから、今でも信仰を集めているそうだ。ちなみに、こちらの神社で夫婦円満や子宝などの祈願をして、それが成就したあかつきには、赤い腰巻きを奉納するというユニークな習わしがある。
近隣には散策にぴったりなスポットも
木の根神社の近隣には、戦国大名尼子(あまこ)氏が信仰したことで知られる「逢坂八幡神社」がある。この神社は貞観7年(863)、宇佐八幡宮(大分県宇佐市)の分霊を勧請(かんじょう)したのが始まりと伝えられている。また、小泉八雲が宿泊した「妙元寺」や「日御碕神社」、「なかやま温泉」など数多くの観光スポットが点在している。
大山町役場観光商工課では、木の根神社を含む散策コース(総散策距離約12km)を設定してパンフレットなどで案内している。「この地区の名所や旧跡巡りを楽しみながら、コース内のどこからでも雄大な大山を一望することができます。せっかく木の根神社を訪れるなら、ぜひ散策を楽しんでみてください!」(大山町役場観光商工課)。