残念ながら日本での初回販売が見送られたSurfaceだが、RTM版に達した次期Officeスイートの情報や、昨日発表されたXbox Musicなど話題作りに事欠かさないMicrosoft。今週はOutlook Blogに掲載された「Outlook 2013」のIMAP4サポート機能の強化と、「Xbox Music」の国内展開に関するレポートをお送りする。
Windows 8レポート集
IMAP4のサポートを強化する「Outlook 2013」
我々が普段何気なく使っている電子メールのやり取りには、いくつかのプロトコル(特定の操作を行うために決められた手順)が用いられている。電子メールの送信にはSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)が用いられ、受信にはPOP3(Post Office Protocol Version 3)やIMAP4(Internet Message Access Protocol Version 4)のどちらかが使用されるのが一般的だ。
メールサーバーに蓄積された電子メールを読む場合、POP3を使用する電子メールクライアントはメールサーバーにアクセスし、通常はダウンロードした電子メールを直後に削除する。そのためダウンロードを実行した端末でないと電子メールを閲覧することはできない。メールサーバーへのアクセス時に削除を抑制すれば、他の端末からでも電子メールをダウンロードできるが、各所で異なる状態の電子メールを管理することになり、より煩雑になってしまう問題がある。
その一方でIMAP4を使用した電子メールクライアントは、電子メールをサーバー上で管理し、クライアントはあくまでもサーバーにアクセスして電子メールの一部を同期するのが主目的。一般的な電子メールクライアントでは受信した電子メールを内容ごとにフォルダーへ振り分けるが、IMAP4の場合これらの操作もサーバー上で行われる。
POP3とIMAP4の違いを端的に述べるとこのような差が生じるが、最近では多くのメールサーバーがIMAP4をサポートし、電子メールクライアントも同様に使用可能になった。POP3が主流だった時代はメールサーバー側の負担やインターネットの接続環境も相まって、それほど普及していなかったが、モバイル型コンピューターやスマートフォンの台頭や、各問題も解消され、ビジネスユーザーはもちろん個人ユーザーの間でもIMAP4が浸透している。Windows 8の「メール」もPOP3を切り捨て、IMAP4のみサポートしているのも印象的だ(図01)。
このような背景を踏まえて、次期ビジネスユーザー向け電子メールクライアントである「Outlook 2013」では、IMAP4のサポートを強化すると「Outlook Blog」で発表した。そもそも「Microsoft Outlook」シリーズは、バージョン8.5にあたる「Outlook 98」頃からIMAP4をサポートしてきたが、Outlook 2013では、多くのユーザーフィードバックを踏まえて、IMAP4に対する大幅な改良を加えたという。
同ブログによると、電子メールの同期や送受信はすべてバックグラウンドで行われるため、ユーザーが意図的に同期を実行する必要はない。また、先のフィードバックで二つ目に多い要望だった新着メールの通知機能をサポートしている。この他にも、IMAP4で使用する一般的なフォルダーリストを返すXLISTコマンドを新たにサポート。メールサーバーとの同期期間もユーザーが自由に変更でき、最短で一カ月。最長ですべての電子メールを対象にした同機能が可能になった(図02)。
なお、今回の改変にあたり、IMAP4のヘッダのみダウンロードする機能をサポートせず、従来のOutlookが備えていたカテゴリも同様にサポートを廃止した。これは前述の同期機能強化に伴う仕様変更の一つだ。また、従来の独自機能であるカテゴリは通常サーバー上に保存されるが、同一のアカウントを使用する他のコンピューターで同期を行うことが難しかったため、今回の仕様変更につながったのだろう。
既に次期Officeスイートは開発を終え、後は登場を待つばかりだが、今後電子メールの管理を行う場合、基本的な機能しか備えていない「メール」では役不足になってしまうだろう。個人であればOutlook.comなどいくつかの選択肢も残されているが、ビジネスシーンで使用する場合は、Outlook 2013のように高機能な電子メールクライアントを用意したい。
「Xbox Music」は国内展開を期待できるか
先週はSurfaceの正式発表が気になるところだが、日本国内の初回販売は見送られたので、もう一つのニュースである「Xbox Music」について注目してみよう。本誌でも既に報じられているようにMicrosoftは、新しい音楽ストリーミングサービス「Xbox Music」を発表した(図03)。
定期的に広告を表示する代わりに、無償で音楽ストリーミングサービスを享受できるというものだ。無償使用は10時間に制限されるが、9.99ドル/月のXboxミュージックパスを購入することで、広告が表示されない無制限の音楽ストリーミングを楽しめるという。詳細は本誌記事をご覧いただくとして、ここでは現状の音楽ストリーミングサービスについて鳥瞰(ちょうかん)的に見ることにした。
まずは「Google Music」から。こちらはGoogleが運営し、自身が保持する楽曲をクラウド上に最大二万曲までアップロードし、各端末で視聴可能にするサービスである。例えばWindows 8上にクライアントとなる「Music Manager」をインストールし、ローカルディスクに保存してある音楽ファイルをGoogle Musicと同期することが可能。俗にいうデジタルロッカー機能である。後はNexsus 7などの端末から音楽ファイルをストリーミングで視聴できるというものだ。執筆時点では米国のみとサービスとなる。同様の仕組みはAmazonも実施中。英国を皮切りに始まった「Amazon Cloud Player」は現在米国からも使用可能だ(図04~05)。
その他の音楽ストリーミングサービスとしては、国内ではマイナーながらも比較的膨大な楽曲を楽しめる「Grooveshark」など、多くのサービスが点在する。いずれも既存の音楽を楽しむだけではなく、お好みの曲を購入することも可能だが、ここでポイントとなるのが用意している楽曲数。先のブログで「Xbox Music」は3,000万曲と説明し、「Google Music」は明らかにされていないが2011年11月の発表会時点で800万曲。ちなみにiTunes Storeは、2,000万以上であると自身のWebページで説明している(図06)。
いずれも日頃から音楽を楽しんでいるユーザーには魅力的なサービスだが、「Google Music」も「Amazon Cloud Player」も日本国内向けにサービスを提供していない。これは日本の著作権を鑑みている部分が大きいのだろう。法解釈は棚に上げるが、「Xbox Music」を使用可能にするXboxミュージックパスは世界22市場で販売されるらしいが、各社サービスの状況を踏まえるとMicrosoftが想定する市場に日本が含まれる可能性は低い。
法整備に進展があれば期待することもできるが、政治にまつわる時事ニュースを見る限り、期待するだけ徒労に帰してしまうだろう。今後の状況がどのように変化するか想像も付かないが、一消費者としては安価な使用料金で適切なサービスを受けられるようになることを望みたい。
阿久津良和(Cactus)