突然ですが、漫画って料理に似ているなあとふと思ったのです。テーマ(素材)があって、それをどう調理するかは作者(シェフ)次第。熱いバトル漫画も、胸が高鳴る恋愛漫画も、心が燃えるようなスポーツ漫画も、それぞれにそれぞれの美味しいところがあって、その日の気分に合わせた作品を読めばいい。……それって何だか料理に似ていませんか?

じゃあ今の気分はというと、少しあっさり目の、無理しなくてもお腹にすっと入っていきそうな、そんなルポ・エッセイ漫画が読みたい!

ということで、さっそく電子貸本サイト「Renta!」で作品を探してみることにしました。ここならジャンル別に整理されていますし、いつでも好きなときに借りられますから、気分に合わせて漫画を選びたいときにはぴったりですよね。

……とはいうものの、Renta!の品揃えはハンパではなく、ルポ・エッセイ漫画にしても読み切れないほどたくさんのタイトルがそろっています。そこで今回は、秋の夜長に読みたいルポ・エッセイ漫画を、筆者が厳選してご紹介することにしましょう。どれもオススメですし、何より気軽に読めるのがルポ・エッセイのいいところ。サクッと借りてみてくださいね。

『百姓貴族』(新書館刊)

百姓貴族

ご存知「鋼の錬金術師」で大ヒットを飛ばした荒川弘のエッセイ漫画。実は漫画家になる前は、北海道の実家で7年間農業に従事していたという荒川弘が、自身の農業体験談を軽妙な語り口で面白おかしく語ります。

農業と聞いて、皆さんどんなイメージを持たれるでしょうか。朝が早いとか、体力的にキツそうとか、休みがなさそうとか、ネガティブなイメージを持たれる方も多いのではないかと思います。実際、農業はしんどい仕事です。少し前に脱サラしたサラリーマンが地方で農業を始める動きが流行りましたが、思った以上の仕事のキツさにすぐに挫折してしまったという話もよく耳にしました。

しかし農業には、やりがいや楽しさもたくさんあります。筆者の実家も農家ですが、決してしんどいだけの仕事ではありません。「百姓貴族」は、そんな農家の実情をコミカルに描き出した農業漫画の傑作。嘘や誇張は一切なく、それでいて時折びっくりするようなエピソードが飛び出す"リアル農家の日常"です。

農業高校ではどんな授業をしているのか、和牛と国産牛の違いは何か、クマが出たらどうするのか、農家の食事の内容とは――などなど、気になる内容が満載! これをあの荒川弘が描くのだから、面白くないわけがありませんよね。

ちなみに筆者が注目してほしいイチオシキャラは荒川弘パパ。「どうせ汚れるから」という理由で真冬の牛舎にブリーフひとつで出かけるなどの破天荒エピソード満載のパパから目が離せません!

『花より女子』(ぶんか社刊)

花より女子

本作を一言でいうと、レズビアン漫画家・竹内佐千子率いる"チーム変態"の豪遊録。日常エッセイ漫画ではあるのですが、普通の人にとっては十分に"非日常"な日常がたっぷりとつまっています。エッセイ漫画なのでほのぼのとした絵柄と内容ではあるのですが、そんなものをかき消してしまうほどにとにかく登場人物が濃い!

ざっくりご紹介すると、まず主人公の竹内佐千子はレズビアンで腐女子、さらに元バンギャルという強烈な属性を持ったキャラクター。そんな彼女を取り囲む仲間たちはさらに強烈で、「緊縛にハマった痴女」や「20代なのに30代に見えるほど貫禄たっぷりで数々の伝説を残してきた総長」、「様々な恋愛遍歴を持つゲイ(2名)」など、濃度120%のメンバーなのです。

さらにただでさえ濃い彼女たちが週末集まるのは、たいていゲイバーかハプニングバーということで、もうこの組み合わせで何も起きないわけがありませんよね! そんな読者の期待に違わず、"チーム変態"はそれはもう毎日のようにスゴイ体験をしまくっているのです。退屈で同じことの繰り返しだけが日常だと思っている人は、ぜひ本作で今まで知らなかった"日常"に触れてみてください。人生、変わるかもよ?

『風呂人』(Big Fields Publishing刊)

風呂人

旅漫画はルポ漫画のジャンルでは比較的ポピュラーな位置づけで、たくさんの名作が生まれています。中には単に「旅」というだけでなく、何か特定のものを熱かった作品もあり、どんどんジャンルの細分化が進んでいる状態です。

そこで今回オススメするのは、なんと「温泉」をテーマにした旅漫画。色々な旅漫画はあれど、温泉だけに的を絞った作品はちょっと珍しい。たまたま見つけて、目の付け所がいいなあと感心してしまいました。

そんな本作の主人公は、ひ弱なライターの小原。ひょんなことから全国の秘境温泉めぐりをすることになった小原が、毎回苦労して温泉にたどりつくというストーリーなのですが、この温泉というのがとにかく普通ではありません。

あるときは有毒ガスが充満する活火山の火口湖、またあるときは誰もたどり着いたことのない秘湯中の秘湯――温泉に入るだけなのにまるでジャングルでのサバイバルを見ているかのようなハラハラドキドキの展開に、思わず手に汗握ってしまいます。

もちろん、ルポ漫画らしく温泉に関するウンチクも満載。読めばきっとあなたも秘湯に行ってみたくなるはずです。温泉好き、旅好き必見の一作ですよ。