Windows 8の登場まで残すところ、あと十日間程度。公式な発表会を実施する前に、オンラインショップで販売小売価格が掲載されるなど、以前のWindows OSとは異なるスケジュールで発売日を迎えるようだ。そんなWindows 8にRTM版(Release To Manufacturing version:製造工程版)からGA版(General Availability version:一般提供版)へ至る間に作成された累積アップデートを行う修正プログラム「KB2756872」が公開された。Windows 8のパフォーマンスを改善する重要な修正プログラムだが、公開された情報はその概要にとどまっている。そこで今週は「KB2756872」の内容について注目したい。
Windows 8レポート集
"ポストRTM"と称された「KB2756872」
本誌で報じられているとおり、Windows 8 RTM版(Release To Manufacturing version:製造工程版)に対して、累積したアップデートが行われた。同記事やBuilding Windows 8のブログ記事でも述べられているとおり、「ポストRTM」としてService Pack提供前の累積的な更新プログラムである。
Windows 8 General Availability Cumulative UpdateとなるKB2756872は、KB2749655とKB2761094、そしてKB2764870の三つを含んでいるが、後者二つのKB(Knowledge Base:ナレッジベース)ページはKB2756872にリダイレクトされているため、その詳細は不明だ(図01)。
前述の各記事では、「バッテリー寿命を延ばすため電力効率の向上」「Windows 8アプリケーションとスタート画面のパフォーマンス向上」「さまざまな場面におけるオーディオおよびビデオ再生の改善」「アプリケーションおよびデバイスドライバーの互換性を改善」と、四つの改善ポイントが挙げられているが、具体的にどのファイルが更新されているか明確にされていない。
そこで、64ビット版Windows 8を対象に、ファイルのバージョンを取得するプログラムを実行し、その一覧を作成。ここから.Net Framework(XML WebサービスやWebアプリケーションなどWebベースのアプリケーションなどを取り入れたアプリケーション開発・実行環境)のGlobal Assembly Cache用となるassemblyフォルダーやシステムファイルに対するハードリンクをまとめたWinSxSフォルダーを除外し、バージョン情報を持つファイルだけを抽出すると16,726ファイルが残った。
さらにここから、.NET Framework本体やdriverstoreフォルダーなど不要なファイルを削除していくと9702ファイルに絞られる。この情報を元にWindows 8 RTM版の標準的バージョン番号である「6.2.9200.16384」のメジャー番号に注目すると、更新されたバージョン番号となるのは「6.2.9200.16420」「6.2.9200.16424」の二つ。前者は20ファイル。後者は12ファイルだった。過去のセキュリティホールを修正する修正プログラムの存在と、ファイルの更新日時が9月27日であることを踏まえると、この12ファイルがKB2756872で更新された主要なファイルと見ていいだろう。これらの情報を元に調べたのが図02だ(図02)。
ご覧のとおり、Windows 8の核となるカーネル関連の「win32k.sys」や「ntoskrnl.exe」はもちろん、デバイスドライバーに関連する「newdev.dll」および「newdev.exe」「ndadmin.exe」が更新されている。興味深いのは無線LANに関するシステムファイルが更新されている点。前述した変更ポイントにネットワークの改善は見られないが、「バッテリー寿命を延ばすため電力効率の向上」を行うため、無縁LANチップの使用方法やアクセスポイントへの接続など各所で改善が行われたのではないかと推測できる。
KB2756872を適用してから数日が経つものの、具体的なパフォーマンス改善を体感できる場面は皆無で、スタート画面の呼び出しやWindowsストアアプリの動作も特に変わった箇所は見受けられない。2012年10月26日に登場する予定のGA版(General Availability version:一般提供版)に適用されるか不明だが、これまでService Pack提供まで待たなければならなかったベンダー向けの修正プログラムが「ポストRTM」として一般公開されるのは、多くのWindows 8ユーザーに有益なものとなるだろう。
阿久津良和(Cactus)