ストレスに勝つには麺類などの糖質ではなくたんぱく質を

私たちは糖質、脂質、たんぱく質の3大栄養素から、生命維持に必要なエネルギー源を得ています。糖質とたんぱく質は4kcal/g、脂質は9kcal/gのエネルギーを発生させます。ところが、たんぱく質はエネルギーとなる前に、筋肉や骨、ホルモンや神経 伝達物質など、心身の構成成分として利用されるという特徴があります。

食べる=たんぱく質を摂取する

英語でたんぱく質のことをプロテインと言います。この語源はギリシャ語で「第一」という意味の言葉から生まれたもの。それほど、たんぱく質は生命維持になくてはならない第一の栄養素なのです。

私たちは新陳代謝を繰り返し、生命を維持し続けていきます。この細胞を形づくり、活動させる命の担い手がたんぱく質です。食物を食べる目的のひとつは、たんぱく質の摂取と言っても過言ではありません。

ストレス社会で戦うにはたんぱく質が必須

たんぱく質は私たちの身体を構成する成分のうち、水分に次いでもっとも多くを占めています。筋肉、臓器、脳など身体をつくり、ホルモン、酵素、神経伝達物質などの材料となるなど、その役割は多岐にわたります。たんぱく質をしっかり摂取することで、脳細胞の壊死(えし)を防ぎ、思考力を高め、神経の働きをよくして精神的な安定をもたらします。

また、免疫機能を高め、病気やけがに対する抵抗力や治癒力を高めます。逆にたんぱく質が不足すると、脳の働きが鈍り、記憶力や思考力が減退、うつ病や神経症になりやすくなる他、体力やスタミナが不足します。

たんぱく質はストレスによって消費量が増す栄養素でもあります。現代人は体力よりストレスの消耗の方が多くなりがちです。にもかかわらず、朝は食パン、昼はチャーハン、おやつにチョコレート、夜はラーメンなど、安価で手軽に食べられる糖質たっぷりの食に陥りやすい食環境にいます。意識して良質なたんぱく質の摂取を心がけていきたいものです。

素材そのものを生かした料理をチョイス

同じ肉でも、赤身肉を選びたい

では、具体的にどうやってたんぱく質を摂取すればいいのでしょうか? たんぱく質を多く含む食品には、肉、魚介類、大豆・大豆製品、卵などがあります。これらから効果的に栄養を摂取する方法を教えます。

肉は赤身肉を焼く・ゆでるなどシンプルに調理しましょう。ハム、ソーセージなど肉の加工品は食品添加物が使用されるものもあります。たまに楽しむ程度か、添加物のないものを選びましょう。

魚介も、切り身や開きを焼くだけや刺し身がオススメです。かつお節やじゃこなどの干物や水煮缶もいいでしょう。いか、たこ、ホタテのボイルなど素材を生かしたシンプルな料理をチョイスしましょう。大豆製品も、豆腐や納豆、無調整豆乳など、素材そのものを味わう料理を選びたいところ。

健康な人であれば、卵は1日1個と制限する必要はない

卵は手軽なたんぱく質系食品ですが、コレステロールを心配される方も少なくありません。しかしコレステロールは、私たちの生命現象の根幹を成す細胞膜の原料として必須の栄養素です。そのため、身体の中のコレステロールはその80%前後が主に体内(肝臓)で作られています。つまり、卵を1日1~2個食べたり食べなかったりすることに関わらず、コレステロールは必要に応じて生産量を調整しているというわけです。家族性高コレステロール血症の方以外、むやみに卵を制限する必要はありません。

たんぱく質の大きな特徴として、食べ貯めができないことがあります。つまり、常に摂取し続けなればなりません。とは言え、手軽さを重視し、市販の揚げ物や総菜など加工品に頼り過ぎるのも好ましくありません。添加物や保存料など化学物質の取り過ぎにならないよう、注意が必要です。

筆者プロフィール : 大柳 珠美(おおやなぎ たまみ)

NPO法人糖質制限食ネット・リボーン副理事長。二葉栄養専門学校(栄養士科)卒、明星大学人文学部教育心理学専攻卒。糖質制限理論を専門に、東京都内のクリニックで食と栄養のカウンセリングを担当。薬に頼り過ぎない治療をサポートしている。また、低糖質メニューの開発をはじめ、講演会、テレビ、雑誌、ブログ「管理栄養士のローカーボ・キッチン」などで、おいしく続けられる糖質制限食の情報を発信。著書に『糖尿病のための「糖質オフ」ごちそうごはん』(アスペクト)、『血糖値を上げない!健康おつまみ109』(東洋経済新報社)など。

「管理栄養士のローカーボ・キッチン」