俳優の伊藤英明が10日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた主演映画『悪の教典』(11月10日公開)、およびその前日譚を描いたBeeTV配信ドラマ『悪の教典-序章-』の完成披露試写会に出席した。
本作は、累計発行部数が100万部を突破した貴志祐介による同名ミステリー小説を映画化した作品で、伊藤英明が演じる、有能で周囲から絶大な人気を誇る高校教師・蓮実聖司が実は反社会性人格障害(サイコパス)であり、生徒、同僚など学園すべてを巻き込んだ恐るべき血塗れの大惨殺事件を描いたバイオレンス・サスペンス。この日は、主演の伊藤ほか、惨殺事件に巻き込まれる生徒役の二階堂ふみ、染谷将太、林遣都、浅香航大、水野絵梨奈、KENTA、『悪の教典-序章-』に出演する高岡早紀、そして原作者の貴志祐介氏、三池崇史監督も登壇した。
本作で、自身のキャリア初となる悪役に挑戦した伊藤は「僕としては今までたくさんの映画の中で人を救ってきて――」とまず観客の笑いを誘うと、続けざまに「伊藤英明を嫌いになっても『海猿』は嫌いにならないでください」とAKB48前田敦子の名言をここぞとばかりにパクリ、「秋元康先生に電話をしたんですが、出られなかったので無許可で使わせていただきました。大変申し訳ありません!」と話して会場は爆笑の渦に包まれた。
しかし、作品について話が移ると表情は一変。「小手先の演技ではなくて、エネルギーのぶつかり合い。三池監督は限られた予算、時間、スタッフ、キャスト、セット、すべてを全力で使い切る、エネルギーの塊のような作品愛のある監督で、僕自身も全力で振り切った自分を出すことができました」と撮影を振り返りつつ、「これがどう映るかはわからないですが、間違いなく自分の代表作である『海猿』に並ぶ作品になったと確信しています」と過去の正統派ヒーローのイメージを覆す本作に、大きな自信を見せた。
本作には生徒役で多くの若手演技派俳優が出演。彼らのフレッシュな演技も見どころで、蓮実の生徒・片桐怜花を演じた二階堂は「初めての学園ものがこんなに血がでて、こんなに怖いものだとは思いませんでした。しかし凄まじいものができたと感じています」、早水圭介役の染谷は「すごくエネルギッシュな映画。そのエネルギーに押しつぶされないように」と語り、完成した本作を前にキャスト陣も圧倒された様子。蓮実が高校教師になる以前の物語、アメリカの投資銀行に勤める蓮実を描いた『悪の教典-序章-』に出演する高岡は、「蓮実先生の"最初の悪"が垣間見れる作品」とアピールした。
原作者の貴志氏は、同作への映倫による審査について触れ、「かつて、生徒同士が殺しあう『バトルロワイヤル』という映画が非常に物議を醸したんですね。今回は、担任の先生が生徒を殺していく。はたして映倫はどちらをより悪いと判断するのか。結果的には同じ"R15"で、まぁどっちもどっちになりました」と語りつつも、「この映画の迫力、スピード感、そしてリアリティはこれまでの邦画の常識を覆すもの。エンターテインメントの歴史を塗り替えた映画だと思う」と太鼓判を押した。
また、本作が、11月9日に開催される「第7回ローマ国際映画祭」のコンペティション部門へ正式出品されることも発表され、ヨーロッパでは日本よりも一日早く公開される。「とてもうれしく思っている」と喜びを語った三池監督は、「映画を見終わった後も、皆さんが笑顔があるといいなと願っています」とはにかみつつ、「心を真っ白にして蓮実を、生徒を追い続ければ、どこか共鳴できる部分があり、自分の中に眠っているものが少し覚醒してくるはず。ほかの映画のように客観的に事件を眺めるというよりは、見ながら感じること。今までの映画で感じたことのない感触が必ず心の中に生まれてくる。それを楽しんでほしい」と解説。最後には「その結果、俺のことは嫌いになっても『悪の教典』は嫌いにならないでください」と先の伊藤発言を掘り返し、会場を沸かせていた。