米Appleのスマートフォン新製品「iPhone 5」が発売されて2週間が過ぎた。キャリアを問わず、世界的に品薄の状況が伝えられているが、国内では販売台数ランキングにもiPhone 5が登場し、いよいよ発売による影響が出始めている。
10月5日に電気通信事業者協会(TCA)が公表した2012年9月度の携帯電話・PHS契約数によると、純増数では、ソフトバンクが32万200件、auが22万4900件、NTTドコモが15万8600件と続くかたちとなった。各紙の報道によると、MNPの転入超過がもっとも多かったのは、auであり12カ月連続の首位となったという。これはauにとって大きな快挙であり、実際、TCAの発表や各報道により、ソフトバンクの株価が著しく減少した程である。そこで本稿では、MNPで首位となったKDDIの広報部にiPhone 5や同時に提供開始した「4G LTE」の影響について聞いてみた。
この9月度のauの契約者の動きをどのように受け止めているかを尋ねたところ、次のような回答を得た。「iPhone 5の発売と同時にスタートした『4G LTE』の利用が急拡大したことにより、新規契約に占めるMNPの割合が過去最高となった。また、各種割引キャンペーンなども大幅な増加に繋がったと考えている」。なお、純増数22万4900台のうちMNPの利用9万5300台だったという(au以外のMNP状況はソフトバンクが1200件の転入超過、NTTドコモは9万5200件の転出超過)。
続いて、どのような点がauを選ぶ理由になったと思うかを聞いたところ、「これまでのノウハウを活かし4G LTE整備を進めてきた。結果、都心部を中心に完成度の高いエリアカバレッジを実現できた。また、iPhone 5のいち早いテザリングの導入や、電池持ちが良いこと、緊急地震速報へのすばやい対応など、機能面でも優位性があると自負している。さらに、『auスマートバリュー』の料金メリットがユーザーに浸透したことや、つながりやすさを強化した取り組みが、LTEの本命事業者として選択していただけた理由ではないか」という回答だった。また、iPhoneの販売状況について尋ねたところ、「大変順調な販売数となっている」とのこと。
そこでiPhoneについて各調査会社のiPhone 5関連の調査で、興味深いものがあったので紹介しよう。まず、ICT総研が9月26日に発表した、法人向けのiPhone 5に関する需要動向調査だ。同調査のiPhoneを未導入の企業に対し、auとソフトバンクのどちらのiPhone 5を検討するかを聞いた質問では、auが51.1%、ソフトバンクが48.9%と、拮抗した結果になっている。auを選択した理由としては、通信エリアの広さやネットワーク品質、つながりやすさが挙げられているのが特徴的だ。
また、10月4日にネオマーケティングが発表した「iPhone 5購入意向調査」では、iPhone 5を購入したいと考えているユーザーのうち、48.4%がauを、39.5%がソフトバンクを選択している。同調査で興味深いのは、現在auユーザーでソフトバンクを選択したユーザーが4.7%であったのに対し、現在ソフトバンクユーザーでauを選択したユーザーは17.9%と、ソフトバンクユーザーの2割近くがauのiPhone 5を購入したいと考えている点だ。
これらの調査結果を前述した9月度の契約数データと合わせて考えると、エリアの広さ、つながりやすさなどを理由に、ソフトバンクからauに乗り換えたユーザーが多いことがわかる。今後もこの傾向が続きそうだ。
iPhone 5が発売されてから2週間経つが、LTEの速度やマップ問題など、iPhoneが話題にのぼらない日はない。今回は9月度の携帯電話・PHS契約数について取り上げたが、当該期間でiPhone 5が販売されたのはわずか10日であり、その影響力は計り知れない。今後もiPhone 5の影響について考察していきたい。