9月19日にマイナビで開催されたセミナー「BYOD時代の企業IT/ネットワーク戦略の鍵がここに!」において、ジュニパーネットワークス マーケティング本部 統括部長 近藤雅樹氏は、「BYOD時代に求められるモバイルセキュリティ戦略」と題して講演。

ジュニパーネットワークス マーケティング本部 統括部長 近藤雅樹氏

同社が今年2月に発表した、2011年度のモバイル端末のセキュリティ動向に関する調査結果を交えて、BYODを導入する企業が留意すべきポイントや求められるモバイルセキュリティ・ソリューションについて解説を行った。

講演の冒頭で近藤氏は、モバイル・ワークに対するニーズの高まりの背景について、「“いつでも”、“どこでも”、“どのデバイスでも”必要なコンピュータ資源にアクセスできるといった本当の意味でのユビキタス社会がここ数年でついに到来したと言える。それを受けて、スマートフォンなどのスマートデバイスとクラウドをうまく活用するニーズが急速に高まった」と見解を示した。

モバイルワークフォースに対するニーズ

近藤氏によると、BYODのメリットは大きく2つあるという。1つはコスト削減だ。社員の私物であるスマートフォンを業務にも活用することで、ハードウェアを中心にコスト削減が可能となる。そしてもう1つが生産性向上である。社員はどこにいても働くことが可能となり、遠隔で仕事をする社員の実行能力も増大する。また、快適に使用することができる最新の端末で必要な情報を入手できるようになることも、生産性の向上に大きく寄与するのだという。

BYODのメリット

こうしたメリットが存在する一方で、BYODにはデメリットも存在する。それは、複雑な管理とセキュリティリスクだ。まず全社的にBYODを導入した場合、全社員が所有する端末登録の確認とリモートワイプソフトウェアのアップデートの確認が困難になる。加えてネットワークのアクセスコントロールの実施も不可欠だ。こうした管理が行き届かなくなった結果、企業内ネットワークにマルウェアが侵入するリスクが増大してしまうのだ。

BYODのデメリット

モバイル活用で出遅れている日本企業

ここで近藤氏は、ジュニパーネットワークスが日本を含む世界5カ国を対象に実施した調査の結果を示した。それによると、モバイルユーザーがインターネットへの接続に用いるデバイスは平均で3つで、5つ以上所有しているユーザーも18%以上存在する。そして10人中9人のビジネスユーザーが、自身のモバイル端末から機密データにアクセスしており、モバイルでの利用環境が複雑化しているのがわかる。

ジュニパーネットワークスの調査では、モバイルユーザーがインターネットへの接続に用いるデバイスは平均で3つで、5つ以上所有しているユーザーも18%以上存在

とりわけ海外では、許可されていないデバイスから社内データへのアクセスが生じている企業が41%にも上っており、3割ものITスタッフが個人所有のデバイスから企業データにアクセスしたことが原因でセキュリティ上の問題が発生したと回答している。

企業におけるモビリティの危険度は増加

一方、日本の場合、個人所有のモバイル端末を業務で利用することに関して慎重であり、海外と比べるとかなり対応が遅れている。近藤氏はその理由について、「文化的に安全・安心を重視する傾向が強いからでは」との見解を示す。

しかし、BYOD導入に対するニーズの高さは日本でも変わらない。日本の従業員の59%がモバイル端末の業務利用に対してより多くの選択肢を求めているのだ。さらに、激しさを増すグローバル競争の中で日本企業が勝ち抜くためには、モバイル活用による競争力の向上は必須とも言える。

「だからこそ、モバイル端末から社内システム、さらにはクラウドまでエンドツーエンドでのセキュリティの確保が大いに求められている」(近藤氏)