分かりやすいニュース解説と丁寧な語り口でおなじみのジャーナリスト・池上彰が4日、東京・日経ホールにて行われた映画『アルゴ』(10月26日公開)のプレミア試写会に出席し、上映前にトークイベントを行った。

映画『アルゴ』のプレミア試写会に出席した池上彰

ベン・アフレック監督3作目となる本作は、1979年のイランで実際に起きた「アメリカ大使館人質事件」を題材にした作品。52人の人質の中からなんとか逃げ出すことに成功したアメリカ人の6人は、カナダ大使の自宅に身を隠したものの、見つかれば彼らの命はもちろん人質の命も危険にさらされる危機的状況だった。この絶望的な状況の中、CIA救出作戦のエキスパート、トニー・メンデス(ベン・アフレック)は、彼ら6人を救い出す意表をついた作戦を思いつく。

この史実に基づいた作品について、池上はまず「私はテレビ屋ですから、つかみはどうかというのを常に見るわけですね」と1つめの切り口を見せる。「最初にどうやってお客の心をつかむか。そこを期待して見たんですが、あれ? なんなんだこれは? となってしまいました」と語りながら、「そうやって見てたら、最後になるほどと辻褄が合います。そういう見方も楽しんでみてはいかがでしょうか」と上映前の観客たちの興味をあおっていた。

わかりやすい解説に定評がある池上であるが、今回ばかりはネタバレもはらんでいるため、時折「う~ん、歯がゆいですねぇ」と言いながら語り口はいつにもまして慎重。「このくらいは言ってもいいですね」と言いながら、「あの頃はどこでも煙草吸ってたんだなぁと思うようなシーンがあります」や、2005年のNHK退社後にフリーランスとなってイランを訪れた際の光景が酷似していることなど、過去の経験談を交えて作品の魅力を丁寧に紐解いていった。

そして、池上は最後にもう1つの見どころをこのように語った。

「イランの核開発が今も進められているという疑惑がかけられていて、先日、イスラエルの首相が『もう来年の1月がレッドゾーン』という言い方をしました。イスラエルがいよいよイランを攻撃するかもしれないということが秒読みの状態になってきています。そして、今のイランのテヘランでは核開発に携わっている科学者が殺されるという事件が度々起こっています。このように、今に続くイランの問題があそこからはじまったんだと、そういう歴史観を持ってご覧いただければいいのかなと思います」

トークイベントには、モデレーターとして日本経済新聞・編集委員の春原剛氏(左)も参加した