俳優の伊勢谷友介、松坂桃李、玉山鉄二、緒形直人、石田ゆり子らが4日、ドラマWスペシャル『尾根のかなたに~父と息子の日航機墜落事故~』(WOWOW)の試写会に出席し、舞台あいさつを行った。
1985年8月12日、乗員乗客520名の犠牲者を出した日本航空123便墜落事故。同作は、この事故で親を失った息子たちを中心に、絶望から這い上がった3つの家族の27年を前・後編で描いている。原作は『なぜ君は絶望と闘えたのか』の著者・門田隆将によるノンフィクション。本作はこの原作をもとに、フィクションで描かれ、ドラマW初登場の伊勢谷友介ら、豪華キャストに加え、映画『沈まぬ太陽』を手掛けた若松節朗が監督を務める。10月7日(日曜 22:00~)に前編、14日(日曜 22:00~)に後編を放送。
歯科医で厳格な父を持つ峯岸薫を演じた伊勢谷は、「我々はいつどこで死んでいくかわからない。その中で、今どうやって生きていくか。そこが自分が死ぬ寸前の時に人生を振り返る上でとても大事なことだと感じました」と作品をとおして気づかされた死生観に触れた。彼はその思いをtwitterに綴って登壇し、「もし、自分が死んだ時に残された周りの人が少しでも前を向いていけるような、精一杯の生き方をしなければならないと本当に強く思いました」と上映後の観客を前に素直な気持ちを伝えた。
本作のクランクイン3日前に第1子を授かったという玉山。今回彼が演じた上杉弘樹は2児の父で、玉山にとっては初めての父親役だった。「3日前に生まれたばかりだったので、物語を想像するだけで精神的に敏感になってしまうような時期でした」と不安を抱えての現場だったことを明かした玉山。その不安を打ち消すために監督とも打ち合わせを重ね、「お芝居ってこんなに楽しいんだと改めて気づかされました」と役者にとって貴重な経験であったことを語った。一方、松坂は3人の子どもを持つ父・小倉光太郎役。理想の父親像について、「息子が自分の背中を見て育つような厳格な父が理想ですが、うちの父は温厚で、理想とは正反対。だから実際の僕は奥さんの尻に敷かれるような、そんな父親になってしまうのかなと…」との弱気発言に会場からは笑いが起こった。
緒方が演じた上杉正義は、事故機内で妻・加奈子に「子どもをよろしく」と遺書を書く。そのシーンを緒方は「かわいい子どもたちの顔が浮かび、ただただ無念でした」と振り返りながら、「妻がぽわんとしていますから、彼女を残して逝くのが心配で…」と石田が演じた妻・加奈子の顔も浮かんだようだ。残された妻は、父を失った子どもたちを真っ当に育てようとするあまり、自らを追い込んでいく。石田はそのことを「台本をもらった時はどうやって演じようか悩みましたが、いざ本番になると自分じゃない何かが降りてきました」と作品の重みを身をもって感じたようだった。