iOS 5で登場した音声アシスタント機能「Siri」。音声認識をOSレベルでサポートするという意欲的な試みは、Androidなど他プラットフォームを巻き込みつつ世間に浸透、次世代のUIとして認知されるに至った。そのSiriが、今回のiOS 6でどう変わったかを見てみよう。
Siriのココが変わった!
Siriの実行プロセスは「人間の発する音を言葉として認識」し、その言葉を「デバイス側で命令として解釈/実行」するという大きく2段階に分類できる。前者の大部分はクラウド上で処理されるうえ、現状ベータ版でありサードパーティーにはAPIが公開されていないこともあり、多くは謎に包まれているが、確かにiOS 6では認識可能な命令が増えている。まずは、iOS 6で導入されたSiriの新機能を整理してみよう。
- 対応デバイスが増加
これまでSiriが対応するデバイスはiPhone 4Sのみだったが、iOS 6のリリース直後に発売されたiPhone 5のほかに、新しいiPad(第3世代)と10月発売予定のiPod touch(第5世代)もサポートされた。携帯電話回線を備えるデバイスのみサポートという状況は、今回のアップデートで解消されることになり、Wi-FiモデルでもSiriを利用できることになった。
- アプリの起動が可能に
Siriの命令系統に「アプリの起動」が追加され、インストール済のアプリを音声で起動できるようになった。命令は「~を開く」と「を起動」というPC的な言い回しのほか、ゲームアプリを意識したと思われる「~で遊ぶ」も受け付ける。なお、アプリの種類/カテゴリによる言い回しの制限はないため、「Safariで遊ぶ」や「メモで遊ぶ」もアリだ。
認識精度はなかなかのもので、ある程度の"あいまいさ"を認めている点が特徴。たとえば、ホーム画面には「Y!辞書」と表示されている「Yahoo! 辞書」は、「やふーじしょをきどう」と言えば認識されるのはもちろん、「わいじしょを起動」でも認識される。それどころか、滑舌の悪さからかSiriに「My辞書を起動」と誤識されても、しっかりYahoo! 辞書を起動することができた。
「あどびりーだーをきどう」と話しかけたところ、「~でよろしいですか?」などと確認されることなく、直ちにAdobe Readerが起動された |
「ブラウザを起動」と言えばSafariが起動するなど、ある程度の"別名"は認識してくれるが、計算機を"電卓"と呼ぶと認識されなかった |
- 言葉でTwitterとFacebookに投稿
OSレベルでTwitterとFacebookをサポートしたことにあわせ、Siriに投稿機能が用意された。Twitterは「~とつぶやく」または「~とツイート」、Facebookは「~と投稿」または「~とウォールに書き込んで」と話しかければ、その直前の言葉が各サービスに投稿される。写真の添付には対応せず、タイムライン/ウォールを閲覧できないなど機能的に制約はあるが、文字どおり"つぶやき"でSNSと連携できる点は斬新だ。
「iPhone 5は軽くて使いやすいよね」とツイート」のつもりで話しかけたところ、「5」が「ファイブ」となったことを除けば、ほぼイメージどおりにツイートできた |
「ウォール」が「ボール」と誤認識されることに苦労したものの、Facebookのウォールへの書き込みにも成功した |
- 残念ながら日本では使えない機能
iOS 6のSiriには、「スポーツ」と「映画」という命令カテゴリも新設された。前者は野球やサッカーといったプロスポーツを、後者はiTunesで取り扱う映画の情報や提携したWebサイト(映画の場合「Rotten Tomatoes」)の情報を、画面に表示してくれる。
ただし、10月1日時点でスポーツの情報は北米地域のみ。日本語は認識されるが、ジャイアンツといっても「サンフランシスコ・ジャイアンツ」であり讀賣巨人軍のことではなく、ライオンズといっても西武ライオンズではなく「デトロイト・ライオンズ」というNFLのチームだ。映画にしても、iTunes Storeで取り扱いのある映画の情報は教えてくれるが、日本における上映情報は未対応となっている。
西部ライオンズのつもりで「ライオンズの試合の結果を教えて」とたずねたところ、アメリカンフットボール(NFL)のライオンズの試合結果が返ってきた |
「ゾンビ映画」について尋ねたところ、iTunes Storeで扱いのあるホラー映画のリストを示してくれた |
- 10月に始まる? 期待の新機能
現時点のSiriには未完成な部分が多々あるが、忘れてはならないのは「ベータ版である」ということ。だから今後も改良は続けられるはずで、間もなく登場予定の機能も実際いくつかある。
アップルジャパンのこちらのページには、「ローカル検索」と「道順」、「レストラン情報」という3つの機能が、10月に登場する旨告知されている。いずれもiOS 6でApple独自のものにリプレイスされた「マップ」と連携する機能であり、iOS 5までのGoogleマップの利便性に近づけるものだ(そうあってほしい)。この3つの機能については、また別の機会に報告したい。