黒澤明監督とともに、国民の人気と評価を二分した監督・木下惠介の生誕100周年を記念して、映画『はじまりのみち』が制作されることが28日、明らかになった。監督は、これまでアニメ映画を数多く手掛けてきた原恵一が務める。

『二十四の瞳』、『喜びも悲しみも幾歳月』、『楢山節考』など数々のヒット作を生み出した木下惠介監督

2012年は、『二十四の瞳』(1954年)、『喜びも悲しみも幾歳月』(1957年)、『楢山節考』(1958年)など数々のヒット作を生み出した木下惠介の生誕100年の節目の年。「生誕100年祭」と銘打ち、特集上映やイベントなどさまざまな催しが始動した。今年5月にはカンヌ国際映画祭で『楢山節考』デジタルリマスターが、8月にはヴェネチア国際映画祭で『カルメン故郷に帰る』デジタルリマスターがそれぞれクラシック部門に選出され上映されるなど、日本にとどまらず世界中で木下惠介作品を再評価する動きが出ている。

差別や暴力、戦争を憎み、市井の小さき者たちへ注がれる深いまなざし。木下の原点を探っていくと、彼に盲目的な愛情を注いだ母"たま"の姿が浮かび上がってくる。今回制作が決定した『はじまりのみち』は、戦中、木下が脳溢血で倒れた母を疎開させるためにリヤカーに乗せて山越えをした、という実話のエビソードが軸。血気盛んな映画青年として軍部に睨まれ、松竹を一時離れるきっかけとなった『陸軍』の製作時のエピソードを回想形式で盛り込みながら、1本の映画を作り上げていく。

木下惠介生誕100周年記念映画『はじまりのみち』の監督を務める原恵一

戦争に翻弄されたある一家の三代にわたる物語を描いた映画『陸軍』(1944年)

監督は、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001年)や『河童のクゥと夏休み』(2007年)などのアニメーションを数多く手がけ、国内外で高い評価を得ている原恵一。木下惠介を敬愛していることでも知られる原の、初めての実写映画監督作品となる。クランクインは11月、完成予定は2013年2月、劇場公開は2013年夏を予定している。