iOS 6の地図問題で世間を賑わせている米Appleだが、同社が元Google Maps技術者の採用を積極的に進めているという話が出てきている。とはいえ現状の地図サービスはすぐに改善できるレベルではなく、今後しばらくは苦難の日々が続きそうだ。また一方で旧バージョンのGoogle MapsをiOS 6にポーティングするハッカーも登場してきている。
同件を報じているのはTechCrunchだ。Googleで地図サービス開発に従事しているエンジニアの話として、同社でGoogle Maps開発に携わっていた元従業員らに対してAppleが積極的にアプローチを続けており、採用を進めているという。Googleでの開発契約が満了したある米東海岸在住のエンジニアは、年間8万5000ドル以上の報酬とAppleの拠点である西海岸への引っ越しにかかるすべての費用を提示されたとのこと。これ以外でも、Appleは地図関係のエンジニアを積極的に新規募集しており、とにかくGIS (Geographic Information System)関係のエンジニアをかき集めている印象だ。
とはいえ、ライバルであるGoogleは地図関係の従業員だけで7100人の人員を抱えていることが報道されている。これはフルタイムの従業員に加え、地図の流し込みやマッピング、Street Viewの撮影、航空写真撮影機のパイロットまで、あらゆる作業スタッフを含んだものだが、それでもまだデータが古いなど満足のゆくものではないと筆者は考えており、地図サービスの維持にはそれだけ労力が必要であることを意味している。Appleにおいても、過去3社の地図サービス関連企業買収を行い、今回の元Google Mapsスタッフ勧誘以外にも、過去何度にもわたってGISエンジニアの募集を行っており、少なくとも4桁に近いレベルの人員がいるはずだ。それでも、少なくとも実用レベルにApple Mapsが到達するには年単位の努力が必要だろう。
また興味深い話では、iOS 6にiOS 5.1時代のGoogle Mapsを導入してしまったハッカーもいる。現在、iOS 6でのGoogle MapsはSafariブラウザ向けのWebサービスとして動作しており、ネイティブアプリではないため操作性等で難がある。Jailbreakで仕組みを作って、旧アプリをインストールしてしまうというわけだ。
このようにAppleではiOS 6の地図サービスの評判が芳しくないことを受け、サービス改善を進めているのでもうしばらく待ってほしい旨のコメントを出している。またMapsはクラウド型サービスであり、多くのユーザーが使うことで改善が進んでいくとしている。だが現状のサービス品質は数週間や数ヶ月で改善するレベルではなく、それまで実用的に活用するユーザーがどれだけいるのだろうか。このあたりを踏まえて、すでに多くのユーザーが存在するプラットフォームという性格について改めてAppleには考えていただきたい。