政府は19日午前に開かれた閣議で、2030年代の原発稼働ゼロを盛り込んだ「革新的エネルギー・環境戦略」に関して、文書全体の閣議決定を見送ることを決定した。これは、事実上同戦略を"参考文書"にとどめるものとなる。閣議では、今後のエネルギー・環境政策について、「同戦略を踏まえて、関係自治体や国際社会との議論を続け、不断の検証と見直しを行う」などの方針を表明。これにより、2030年代の原発稼働ゼロ方針が後退する恐れも出てきた。
「革新的エネルギー・環境戦略」とは、原発稼働ゼロを目指し、「(1)40年運転制限性を厳格に適用する、(2)原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ、再稼働とする、(3)原発の新設・増設は行わない」の3原則を掲げた指針で、14日に発表されたもの。政府はこの中で「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」と表明していた。
同戦略に関しては、日本経済団体連合会(以下、経団連)の米倉弘昌会長、日本商工会議所の岡村正会頭、経済同友会の長谷川閑史代表幹事は18日に合同会見を開催。2030年代の原発稼働ゼロを目指す「革新的エネルギー・環境戦略」について批判し、撤回するよう求めていた。
記者会見では、経団連の米倉会長が「(原発稼働ゼロとすることで)国内産業の空洞化は加速し、雇用の維持が困難になることは明らかで、国家戦略会議がとりまとめた成長戦略とも全く整合性がとれていない」と批判。
さらに、「原発稼働ゼロを宣言すれば、原子力の安全を支える技術や人材の確保が困難となる。また、核不拡散・原子力の平和利用の重要なパートナーとして位置付け、日本との連携を強力に進めてきた米国との関係にも悪影響を与えるなど、国益を大きく損なう」と指摘し、その上で政府に対し、「経済界として、このような戦略を到底受け入れることはできない。政府には責任あるエネルギー戦略をゼロからつくり直すよう、強く求める」と要望していた。
国家戦略室は3団体による記者会見の影響はないとし、「今後も新戦略の内容について検討を続けることを閣議決定したということだ」と話している。