パソコンの内部パーツの中で、都度、飛躍的に高速化を遂げていくCPUやGPUなどのパーツに比べれば、ストレージの高速化の進捗度合いはゆるやかであったと言わざるを得ない。永らくストレージの主役であったHDDであるが、転送速度が2倍になるようなことがあっても、CPU等は同じ時間軸で2倍どころではない高速化をしてしまう。数年来、パソコンの速度におけるボトルネックと指摘されていたストレージの状況を一変させたのが、SSDの登場である。

フラッシュメモリを記録媒体に利用するSSDの登場で、ストレージの転送速度は近年飛躍的に向上しており、SSDを搭載するパソコンにおいて、ストレージがシステム動作速度のボトルネックと言われることも少なくなってきた。さらに駆動機械を持たない構造から、耐衝撃性に優れるという特性を持ち、持ち運ぶことの多いモバイルノートなどでの利用にもメリットが非常に大きい。一方で、導入のハードルとして大きな部分を占めていたのは、"高価"であったということだ。登場初期のSSDなどは、確かに速度はHDDの倍以上だが、容量あたりの販売価格単価などは数倍どころでは済まない開きがあった。

SSD、しばらく見ないうちにだいぶ安くなりました

そのSSDだが、現在はさらに状況が変わっている。"安い"のだ。たとえば容量128GB程度の、システムドライブとしてちょうど良いくらいのSSDの値段を調べてみると、性能と信頼性に定評のあるIntel製やプレクスター製の最新モデルで見てみても、ストリートプライスで1万円ちょっとで入手することが出来るようになっている。感覚的には、数年前に2.5型のノート向けHDDに払っていた金額レンジと大きく外れない、購入に躊躇しなくてすむ価格帯に、現行のSSDの価格帯は落ちてきているのだ。

ちょっと古いノートを実用性能にできるかも

さて、デスクトップ利用の自作ユーザーにとってはSSDのメリットや運用ノウハウなど、言わずもがななことなのだが、本稿では、そのSSDでもって、押入れに仕舞ってしまおうかと悩むような、ちょっと古いノートパソコンを、仕事でプライベートでバリバリ使えるノートパソコンにリフレッシュしてしまうことを目指す。

というのも、ちょうど最近の筆者が、家族にノートパソコンを都合したり、職場のPC環境が変わってノートパソコンの必要台数が増えていたりという状況にある。しかしながら、うだつも俸禄も上がらない筆者には、新品の最新ノートをそう何台も買うなんてことはできず、なので隠居気味の古いノートパソコンを何とか前線復帰させたいのだっ! という、とても個人的な理由があったからだ。

ノートパソコンの場合は当然、デスクトップと違いCPUやGPUを交換するのは非常に困難だ。精々がメモリやHDDの交換程度が関の山で、なので古くなって性能が見劣りすると、そのまま新モデルのリプレイスしてしまうというのが一般的だろう。しかしながら、今はSSDというものがあり、しかもそのSSDがかなり安くなってきている、という前述の状況がある。そして、これまた前述したように、パソコンにおける動作速度のボトルネックはHDDであったので、実はちょっと古くなったノートパソコンでも、HDD以外のパーツは、現在のパソコンの使い道であっても、"実用上"では十分見劣りしない性能を備えていると期待できるはずだ。

……とにかく、今の筆者に新しいノートパソコンを買うお金は無いのであるっ!

ちょい古ノートを引っぱり出し、SSDを手配する

というわけで、自宅からちょっと古いノートパソコンを引っぱり出してきた。ブツはレノボの「ThinkPad X60」だ。今となっては、秋葉原のジャンクショップなどで、動作品が数万円程度で売られている姿なども目にする5~6年前のモデルだが、当時は月賦で結構な額を払った覚えがある。

「ThinkPad X60」。一軍マウンド再登板を目指して肉体改造に挑むことに

この筆者のThinkPad X60のCPUはモバイル向けCore 2 Duoの第一世代、Meromベースで最大1.66GHz動作のCore 2 Duo T5500だ。プラットフォームはMobile Intel 945GMチップセットを備えるNapa世代である。SATAが1.5Gbps規格であったりと、I/O類はさすがに古さを感じるが、MeromのCore 2であればCPUパワーは動画エンコードでも回しまくらない限りは悪くないような気がする。HDDは日立GSTの2.5型5400rpmモデル「HTS541040G9SA00」で、これさえ何とかなれば、システム全体の普段使いのレスポンスはかなり改善しそうに見える。

CPUは「Core 2 Duo T5500」。Core 2登場時を思い出して欲しい。「もうCPUは性能飽和。これで数年は戦える!!」……とか考えた人もいたはずの高性能CPUでしたよね?

Mobile Intel 945GMのブロックダイアグラム。I/O類はさすがに見劣りする

続いてはSSDの用意だ。数年前であれば、単品販売の2.5型SSDといえばIntel純正の一択に近い状態だったのだが、その後のSSDの普及で、最近は市場に様々な製品が出回っている。選択肢が多くてうれしい反面、有名ブランドの高性能なものから、バルクに近いよくわからないものまで、性能も価格もバラバラに、大量の製品が売られているので、何を買えばいいのかは少し迷う。

そこで、秋葉原のショップの話などに、筆者の独断なども織り交ぜ、性能や信頼性、入手性など総合して、2012年のSSDの"良さげ"なブランドを絞ってみると、インテル(Intel)、プレクスター(Plextor)、マイクロン(Micron)、サムスン(Samsung)あたりが候補として挙げられる。まぁ、インテルやプレクスターあたりはPC界隈では誰でも知っている名前だろう。メモリチップのイメージで、マイクロンは言わずもがな、あわせてサムスンも入ってくるだろう。

今回はその中から、リンクスインターナショナルに協力を要請し、同社が国内代理店をつとめているPlextorのSSDを調達することにした。筆者はこれまで、自前購入で長期間の使用実績があったのがIntel製とMicron製のSSDだけだったので、他も試しておきたいと常々思っていたのだが、東芝製NANDとMarvell製ICを組み合わせたという"そそる"スペックの「M3 Pro」や「M5 Pro」をラインナップするなど、PlextorのSSDには、特に興味があったからだ。他の有力製品にくらべると、数千円程度のコストアップになるが、保障が5年間と長く、性能の評判もすこぶる良い。コストアップといっても、最新のM5Pですら、例えば128GBモデルは12,000円程度で買えるわけで、ストレージに払える額としては、気にする程でもないだろう。

リンクスインターナショナルのPlextor製SSD「M3 Proシリーズ」をゲット。SATA 6Gbps対応の現行トップクラスの評価を受けるモデルだ

さて、そんなわけでリンクスインターナショナルに用意してもらったSSDは、M3 Proシリーズの「PX-512M3P」だ。製品情報はこちらの記事を参照いただきたい。SATA 6Gbps(SATA 3.0)対応の2.5型7mm厚SSDで、公称でリード最大535MB/s、ライト最大450MB/sの転送速度を誇り、NANDは東芝製の24nm製造のMLCで、ICはMarvell製の88SS9174というもの。どうも筆者のThinkPad X60にはオーバースペックが過ぎる気もしたが、まぁ大は小を兼ねると言う事でよしとしよう。

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