日立アプライアンスは9月5日、ルームエアコン「"ステンレス・クリーン 白くまくん" Sシリーズ」の新製品発表会を開催した。冷房能力・適用畳数に応じてラインナップする全8製品を10月下旬から順次発売する。

冷房能力2.2kW~7.1kWまでの8製品がラインナップされる新「"ステンレス・クリーン 白くまくん" Sシリーズ」

「Sシリーズ」は、日立のルームエアコンの最上位機種に位置付けられるモデル。「ステンレス・クリーン システム」と呼ばれる、通風路、フラップ、フィルターにステンレスを採用した同社独自の機構を室内機に備え、エアコン内部の清潔さを保つのが特徴だ。もちろん、新製品でもこのシステムを継承する。

新製品では室内機の噴き出し口付近に、「くらしカメラ」と名付けられた、画像認識機能のあるカメラを新たに搭載。カメラが捉えた映像から顔を検出して、在室人数や各々の活動量、位置の変化のほか、部屋の間取りや日差しのあるエリアを捉えて、エアコンの気流やコンプレッサーの回転数を最適に制御し、節電性と快適性を高めるという。

日立によると、カメラ認識による最適運転は、ニーズの高まっているLDKの間取りを意識して開発されたもの。政府の節電要請を受け、広がりを見せる"クールシェア"など、一部屋で家族が集まって効率的にエアコンを使用する傾向が高まっている。これにより、家族がリビングで一緒にくつろぐ時間が増えたことから、部屋を出入りする人の数や活動パターンなどによって細かな制御を行う技術として、カメラによる画像認識技術が備わったとのことだ。

室内機の噴き出し口手前中央にある「くらしカメラ」

くらしカメラは、画像処理エンジンとCMOSセンサーで構成される

エアコンの運転制御技術には、赤外線センサーを使った温度の変化で人を検知するものがあるが、カメラによる検知の場合はこれとは異なり、在室している人数と各自の活動状況を捉え、エリアごとに気流や送風量をコントロールするという。例えばLDKタイプの室内で、リビングでくつろぐ人とキッチンで家事をしている人に対して、気流を変えて送風でき、どちらのエリアも快適にできるとのことだ。

カメラには、デジカメやケータイカメラにも使われているCMOSセンサーを採用。水平方向に左右150度、前方7メートルまでの検知範囲を確保する。

室内に人がいない状態が10分続いた場合は控えめに運転を行うほか、1時間人がいない状態が続くと自動で電源が切れる機能も搭載し、さらなる節電を図れる。

カメラが顔認識をする様子を紹介するデモ。検知した人数に応じてセンサー左の緑色のLEDが点灯する

カメラが人のいるエリアを検知し、ルーバーが左右に動いて人のいる位置に合わせて気流を送る

そのほかの新機能として、タイマーで予約した時間の約1時間前から予熱運転を開始し、設定時間の前後で運転ボタンを押すと1分以内に温風が吹き出す「すぐ暖房」を追加。霜取り運転時に低下する室温を、直前に室温を上げておくことで室温低下を防ぐ「あらかじめ温風」を搭載。リモコンのボタンひとつで摂氏約55度の高温風で約30分間連続運転できる「温風プラス」機能も継続で備える。

エアコンの市場動向と新製品開発の意図を説明した、日立アプライアンス 常務取締役・空調事業部長の青山貢氏

発表会に出席した、日立アプライアンス 常務取締役・空調事業部長の青山貢氏は「昨今のルームエアコンに求められるのは、環境負荷の軽減性が高いこと。そこで節電と快適さを両立するために、今回新たにカメラを搭載した。ハイエンド機の底上げを狙う機種として本製品を開発した」と、新製品の狙いを明らかにした。

推定市場価格は、冷房能力2.2kW(冷暖房時適用畳数6畳程度)のRAS-S22Cの21万円から、同7.1kW(23畳程度)のRAS-S71C2の34万円まで。ほかは、8畳、10畳、12畳、14畳、18畳、20畳用の全8製品がラインナップされる。

室内機の熱交換器や電源部、制御部の配置もマイナーチェンジ。旧機種に比べ、前面の面積拡大と送風動力の低減が図られ、省エネ性能が向上した

旧機種よりも27mm長くなった室内機のロングファン。これにより、風量アップにつながった

気流制御機構も改良。2枚あるフラップの間隔が従来の72mmから43mmに狭まり、より遠くに風が届けられる