Cerevoは5日、ビデオカメラなどに接続し、PCレスで映像をライブ配信できるユニット「LiveShell」の新モデル「LiveShell PRO」を発表した。直販価格は54,999円で、発売は10月を予定。最大720p解像度での映像配信が可能。ライブハウスを使うミュージシャンなど、より高画質での映像配信を求めるユーザーを想定する。
「LiveShell」は、ビデオカメラなどと接続し、ネットワーク経由でUstreamなどの動画配信サービスを使い、ほぼリアルタイムで撮影映像を配信できるユニット。操作はPCのほか、スマートフォンやタブレットで使用できるHTML5ベースのWebサービス「Dashboard」で行う。配信先のサービスはUstreamやニコニコ生放送、Livestreamなどのほか、Flash Media Serverといった独自サーバーにも対応。
今回発表された新モデル「LiveShell PRO」は、2011年に発売した「LiveShell」では最大480pだった解像度を、最大720pまで向上。ビットレートも従来の約1.5Mbpsから約10Mbpsに上がり、高画質の映像が配信可能となった。
筺体も従来のプラスチックから、アルミ削り出しのスクエア型へ変更。フロントには新しく映像・音声のモニタアウトを備えた。スピーカーを搭載しない「LiveShell PRO」でも、別売りの専用ブレイクアウトケーブルを使ってテレビなどと接続することで、入力した映像・音声を確認できる。なお、LiveShell PRO本体の液晶モニタにはピークメーターを表示できるので、最低限の音声入力は本体のみでも確認可能。
ほか、配信映像のアスペクト比を任意に調整できるクロップ機能や、動画エンコードにH.264を追加するなど、「Dashboard」の機能改善も行っている。なお、「LiveShell」は併売する。
インタフェースは有線LAN(10/100BASE-TX)および無線LAN(IEEE802.11b/g/n)。映像入力端子はHDMI(最大1080i)とコンポジット。音声入力はHDMI、マイク/ライン。映像・音声出力は専用端子。
配信解像度は最大720p(1280×720ドット)で、H.264に対応。ビットレートは最大約10Mbps。音声配信はAAC-LCで、ビットレートは最大256kbps。本体サイズはW123×D90×H26mm、重量は300g。電源は専用充電池およびACアダプタ。専用充電池使用時の動作時間は3時間以上。
"ライブ配信のプロ"向けの製品 - "本職"でなくても高画質な映像を配信
「LiveShell PRO」の発表にともない、秋葉原の映像配信向けレンタルスタジオ「PANDA STUDIO」で発表会が開催された。Cerevo代表取締役の岩佐琢磨氏は、映像配信市場の拡大を背景に、今回の製品を「ライブ配信のプロ向け」と位置付ける。
ライブ配信のプロとは、例えばライブで歌うミュージシャンなど。映像カメラマンのように映像撮影・配信を仕事にしていなくとも、とにかく映像を配信したいユーザーを指す。「映像配信の仕事を専門にしている人だけでなく、ミュージシャンが自分のライブを"ライブ映像"で配信するような」ライブ配信のプロをターゲット層として想定。一方、ほぼ半額で解像度も最大480pの「LiveShell」は「趣味で音楽をする人、少しでも広く人に見て欲しいが、あくまで趣味なのであまりお金をかけられない」ユーザーを想定する。
想定ユーザーを「ライブ配信のプロ」と定義した理由について、岩佐氏は「映像のプロのマーケットのスケールと、ライブ配信のマーケットのスケールが全く違うため」と説明。自分がユーザーであれば、安価で、安定していて、高画質な配信を手軽にしたい。それが(プロのマーケットより圧倒的に広い)ライブ配信のマーケット」と語った。
価格については「難しかった」としながらも、ソーシャルメディアなどでの事前ヒアリングで、映像配信機材にかけるプライスレンジを50,000円~100,000円に絞ったという。販売チャネルは自社販売サイト「CerevoStore」やAmazon.co.jpなど。発表会を行った「PANDA STUDIO」を運営するキバンインターナショナルでも販売し、限定カラーも用意する。交換用充電池やオプション品の価格は未定だが、2,000円以内を予定する。
かゆいところに手が届く機能を詰め込んだ「LiveShell PRO」
「Ustreamなどのネットワーク映像配信業界では、映像配信を職業にしているプロの人でさえ、配信手段の選択肢が少なかった。通常のPCはHDMI入力に対応していないため、映像配信にはHDMI入力用の機器を増設する手間や費用がかかる。普通の人はもちろん、専門家でも手軽に使いたいというニーズがある」と岩佐氏は語る。
岩佐氏は、ライブ配信ユニット「LiveShell」の特徴を「PCレスで配信でき、専用機のため非常に安定している。しかも手軽で安価」と紹介。抜け防止用のネジ付きHDMIケーブル向けに、「LiveShell PRO」ではHDMI端子の上部にネジ穴を備えるなど、同社は「実際に映像配信を行ったことのあるユーザーのニーズを的確にとらえられる」という、ユーザー目線を強みとする。
例えば、今回の「LiveShell PRO」では、乾電池ではなく充電池を使用。これにより、AC電源をつないでおく間は電池が充電され、不意の停電の際でも映像配信でき、復電の際には再び充電されるため、配信が途切れる心配がない。
2010年より同種の製品を販売していたCerevoは、「業界内でリーダーシップを取っていける」と自信を見せる。「LiveShell」と同様、「LiveShell PRO」も海外販売を予定し、目標販売台数は非公開だが、4桁台を目指すとする。
また、「LiveShell」の販売台数のうち、欧米で全体の40%を占める点に触れ(日本国内で60%)、「(LiveShellの販売は)本年度中には日本と海外で半々、もしくは海外での販売割合が高くなるだろう」と展望を語った。