イタリアで開催中の「第69回ベネチア国際映画祭」でコンペティション部門に出品されている映画『アウトレイジ ビヨンド』(北野武監督 10月6日公開)が3日(現地時間)、公式上映された。
「第69回ベネチア国際映画祭」で行われたレッドカーペットイベントに登場した北野武監督 拡大画像を見る |
正式上映会が終わり、明るくなると同時に、満席となった会場では観客が総立ちで拍手喝采。興奮した監督のファンからは「ブラボー!」の声があちらこちらから上がった。監督が立ち去るまで拍手は鳴り止まず、イタリアで再び北野旋風が巻き起こった。
合わせて行われた記者会見で北野監督は「イタリアンマフィアが居るということは聞いている。日本のヤクザとの違いは看板がかけられているかどうかで、イタリアも日本もほとんど同じだと思う。警察・ヤクザの関係は世界共通ではないか。日本でも警察の不祥事が多く何をやっているんだと思う。映画は極力シンプルに描いたけれども、現実とそんなに変わらないんじゃないか」と話した。
同作は関東最大の暴力団組織・山王会の抗争を描いた『アウトレイジ』から5年後を描いた続編で、熾烈な下克上劇は決着したはずだったが、ヤクザ撲滅を図る警察が動き始めると、やがて"騙し"や"裏切り"の火種がくすぶりはじめ、"関東VS関西"の巨大抗争へと発展していくバイオレンスアクション。
北野監督はその見どころについて「暴力描写を褒めてくれるマニアックな人々がいるのは嬉しいことだけれども、今回の映画はエンターテイメントだと割りきって自分なりのエンターテイメント性を追求した。そうすると、自分にとっては、家庭、女、女房、子供とかは排除する結果になり、馬鹿な男の話になった。かなり割り切った作り方をしたが、エンターテイメト性を追求するとこんな感じになる。その方が楽しんでもらえるかなと思った」と語り、「『アウトレイジ』、『アウトレイジ ビヨンド』に関しては、自分が撮りたい映画というよりも、観客のことを考えて作った。けれども、いつでもお客さんの入らない映画を作る準備もしているよ」と話して報道陣を笑わせる一面も。
また、「震災で確かに映画の撮影は一年伸びた。震災後の一年間は、逆に自分は怒りを感じている部分があった。世の中、絆、愛、支えとか、表面的なものばっかりでイライラした。こういうときこそヤクザ映画を撮ってやろうとやる気が起きた」と力を込めて語っていた。
(C) KAZUKO WAKAYAMA