夏になると、新しいG-SHOCKが欲しくなる。ご存じのタフさでアウトドアでも安心して装着できるし、汗が気になれば軽く水洗いだってできる。もちろん、夏ならではクールビズ、そしてカジュアルファッションとも相性がいい。半袖で時計が露出する機会の多いこのシーズン、強烈な個性を放つG-SHOCKは男の腕のアピールポイントになってくれる。なんて思っていたら、スカイコックピットシリーズの新作、しかもG-SHOCK初のSmart Access(スマートアクセス)搭載モデル「GW-A1000」が発売になったというではないか!
2012年3月のBASELWORLD 2012で発表され、大きな注目を集めたこのモデル、筆者だけでなく読者諸兄も大いに関心があるに違いない。そこで今回は、GW-A1000の企画と開発に携わった担当者へのインタビューをお届けする。
こちらの記事「BASELWORLD 2012 - 英国空軍が求めたパイロット仕様のG-SHOCKとは?」でもご紹介した通り、英国空軍「Royal Air Force」(以下、RAF)からの多くのリクエストを反映したというGW-A1000。その苦労はさぞかし…と思いきや、彼らが突き当たった最大の障壁は、意外にも別のところにあったというが…。今回のインタビューをお読みいただければ、GW-A1000が間違いなくG-SHOCKヒストリーの新たなマイルストーンであることを感じていただけるはずだ。
開発の遅れが「禍を転じて福と為す」
―― GW-A1000の企画はどのようにしてスタートしたのでしょうか?
斉藤氏「スカイコクピットシリーズは、針やダイヤルの視認性、ボタンなどの操作性、キャノピーなどにぶつけてもしっかりと動作する耐久性、電波時計による精度確保など、パイロットウオッチとしての実用性こだわって作り続けています。これを象徴するのが耐衝撃、耐遠心重力、耐振動の3つの性能を備えたタフネス構造『TRIPLE G RESIST』(トリプル G レジスト)です。その新作を考えるにあたり、これらをどう進化させていくかがテーマでした。
そこで1つのキーとなった技術が、りゅうずによる操作を可能にする当社の独自技術『スマートアクセス』です。りゅうずを引いて回して時間を調整するという時計本来の操作が可能なので、マニュアルを見なくても感覚的に使える。それはOCEANUS(オシアナス)などを触っている中で実感していましたから。使いやすさの向上にはこれしかない!というのは、担当者一同の共通認識でしたね」
―― 時計本来の使いやすさの追求。これをG-SHOCKでやったらどうなるのか。そこが開発のポイントだったんですね。
斉藤氏「そうです。ただ、実はこのスマートアクセス搭載に思ったより苦戦しまして…、そのために思いのほか開発期間が延びてしまいました。ところが、開発期間が延びたことでプラスになる面もあったのです。RAFとのミーティングと、そのリクエストをより多く反映させる時間ができたことですね。これは、GW-A1000の完成度を飛躍的に押し上げたと思います。開発期間が延びたのは、結果的には幸運だったかもしれません」
―― RAFとはかなり多くのやりとりがあったと、RAFのパイロットの方から聞きました。
GW-A1000の開発に携わったRAFのネイサン・ジョーンズ氏(BASELWORLD 2012でのインタビューにて)。詳細はこちらの記事で |
斉藤氏「時刻の正確さはもちろん、ズールータイム表示、これは主に軍で用いている世界標準時の呼び名です。パイロットは必ずズールータイムで行動しますから、非常に重要なんですね。あと、秒針の使用頻度が高いこと。視認性については、針先端がどこを指しているか正確に分かるとか。バンドの長さやボタンの押しやすさなどなど、とても多くの意見をいただきました。
できる限り多くのリクエストに応えたつもりですが、特に重視したのが『感覚的に操作できる』こと。例えば、ボタンをホールド(長押し)するという仕様があります。ワールドタイムモード時に右上ボタンをホールドすることで、ワールドタイムとホームタイムが入れ替わったり、右下ボタンをホールドすることでズールータイムへ復帰するという裏コマンド的な操作があるんですよ。
パイロットは世界中を飛び回ります。戦闘機パイロットは一週間ごと、輸送機のパイロットなら一日ごとに違う国の空にいます。つまりワールドタイムが非常に肝心。それに、どこへ行っても最後にはズールータイムに戻すから、一発で戻すボタンがあると便利なんですよね。
ボタンを押せば何かが起こるということは連想できます。でも、押し続けるという操作は一般のお客様にとっては分かりにくいかもしれません。が、パイロットにとっては1つの操作で何かができるほうが使いやすい。これが現場のニーズなんですね」
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