Apple対Samsungの一連の裁判で明らかになった興味深い事実はこれまでにも何度かご紹介している(関連記事1、関連記事2)が、今回さらにAppleとMicrosoftが「デザイン特許」でクロスライセンスを結んでいた事実が浮かんできた。これはデザイン関連の特許侵害訴訟を行わない代わりに、両社が互いに製品のクローン(類似品)を出さない協定を結んでいたことを意味する。
この件は8月13日に行われた米Appleの特許ライセンス戦略担当ディレクターBoris Teksler氏が裁判の証人として説明を行ったもので、All Things Digitalなどでその内容を確認できる。
そもそもこの話題が出てきたのは、AppleがSamsungに対して自身が保有する特許をスマートフォンには1台あたり30ドル、タブレットには1台あたり40ドルでのライセンスを打診していたという証拠に関連してのこと。Teksler氏によれば、Appleは一部特許については他社へのライセンスを行うものの、ユーザーインターフェイスに関する特許の多くに関してはその限りではないとしている。ただし、その例外として挙げられたのがMicrosoftとのクロスライセンスの件で、両社が互いにその領分を侵さないことが取り決められ、結果として互いの製品をコピーして市場へ出すことができないということになった。そしてAppleの要望として、SamsungにもApple独自のユーザー体験を尊重し、きちんと保護してもらいたいというものだ。
今回興味深いのは、クロスライセンスによりMicrosoftからiPhoneやiPadに類似した製品が今後も登場する可能性がないこと、そして両社が直接訴訟で争う可能性が排除されたことだ。UI関連特許なしでSamsungがAppleから前述のような条件でライセンスを受けるメリットは不明だが、少なくともApple側の要望のベースは「類似品を出すならライセンス料を払うように」ではなく「類似品は出さないように」というところにある。なぜなら、Microsoftとのクロスライセンスで重要なのが「類似品を出さないという不可侵条約」という点だからだ。