カナダのResearch In Motion (RIM)が、間もなく「BlackBerry 10」のサードパーティへのライセンスを開始する計画だと、米Bloombergなど複数のメディアが8月14日(現地時間)に報じている。製品リリース計画の遅れもありライバルとの競合で苦境に立たされているRIMだが、これは挽回の一手になるのだろうか?
同件はもともと英TelegraphがRIM CEOのThorsten Heins氏へのインタビューとして8月2日(現地時間)に報じたもので、その後複数のメディアが追加報道を行っている。Bloombergによれば、BlackBerry 10のベースになっているQNXは、すでに自動車業界など別のメーカーへのライセンス供給が行われており、BlackBerry 10 OSのライセンスはその延長線上にあるとのHeins氏の見解だ。Telegraphにおけるコメントの中で同氏は「年間60種類以上の製品をリリースするライバルと競合するだけの規模をわれわれは持ち合わせていない。もしコスト面で折り合いがつくのならば、BlackBerry 10の提供にあたってライセンスという手段も考えられるだろう」と述べ、興味あるサードパーティがいれば、ライセンスを利用してプラットフォームを拡大することも可能だとの見解を述べる。実際にライセンシングに興味を持つメーカーがいるのか、あるいはいたとしてどのメーカーなのかについての言及はないが、非常に興味深い話だ。
RIMは今日に至るまで「BlackBerry」というブランドで端末とOS、プラットフォームを一体化した形で製品を販売し続けている。OSとバックエンドを含むプラットフォームを外部にライセンス提供することはなかったため、あくまでBlackBerryを提供するのはRIMに限定されていた。立場的にはiOSを標榜するAppleのポジションに近く、MicrosoftやGoogleとは対照的だ。だが全盛期は数割近いシェアを誇っていたBlackBerryも、ここ最近はiOSやAndroidといったライバルのシェア拡大ペースに押され気味で、直近の米IDCの調査でも全世界のスマートフォンOSシェアで前年比4割減の7.4%で3位のシェアまで後退している。RIMのリリースするBlackBerry端末はフラッグシップにあたるBoldと廉価版のTorchが主力だが、前述のHeins氏のコメントにあるように圧倒的なバリエーションを持つAndroidに比べればニーズをまんべんなくカバーするのは難しく、ライセンス戦略で裾野を広げていこうと考えるのは自然な流れかもしれない。
だがライセンスにあたっていくつかのウィークポイントが存在している。まずBlackBerry 10のリリース計画が当初の2012年内から2013年第1四半期までずれ込んだこと、そしてローカライズを含めた製品展開の課題がある。従来のBlackBerry OSとは異なり、BlackBerry 10では「QNX」という2010年の加QNX Software Systemsの買収で獲得したOSプラットフォームを採用し、システム全体の刷新を図っている。QNXは当初、RIMのタブレット製品である「PlayBook」用のOSとして採用され、これを開発ツールからミドルウェアまでそのままBlackBerryスマートフォン用へと移行したのがBlackBerry 10となる。だが日本でPlayBookがまだリリースされていないように、QNXへの移行という作業にRIMの開発部隊のリソースの多くが割かれている状態で、製品のブラッシュアップやバグ対応、ローカライズ対応が後手にまわっているとの話がある。前述のOSリリース自体の遅れと合わせ、製品としてプラットフォームをライセンスするにはまだ若干の時間が必要だと考えられる。
現時点では比較的厳しい見通しだと思われるRIMの戦略だが、前出のBloombergの記事の中でHeins氏は「われわれは勝つために動いているのであり、3~4位のポジションを争うために存在しているのではない」と、現在業界で1位と2位のポジションに位置しているGoogleのAndroidやAppleのiOSと全面的に勝負するのが狙いだと述べている。またRIMが低迷し、今後もシェアを削られ続けていくとの見方も否定しており、現在の顧客ベースやファンを維持しつつ、より積極的に攻めていく姿勢を見せている。