鶏のからあげ。これほど子どもから大人まで好まれている料理はないだろう。その原料である鶏肉消費量が全国平均を大きく上回っている県がある。大分県だ。当然、からあげを出す店も多いはず。調査すると、からあげで町おこしをしている団体があるという。そこを訪ねるとおススメの店も教えてくれるのではないか。早速、大分県に飛んだ。
戦後、養鶏場がたくさん作られたのが理由
訪ねたのはからあげの「聖地」中津市。あの福澤諭吉を生んだ城下町である。そんな歴史のある街がなにゆえ、からあげの聖地なのか? 肉の生産・販売の「豊国畜産ぶんごや」取締役専務で、「聖地 中津からあげの会」という名前の町おこしグループの会長である西郡信喜さんに話を聞いてみた。
――なぜ、中津でからあげが盛んになったのでしょうか?
「太平洋戦争後、食糧難を解消すべく国の政策で養鶏場が中津市にたくさん作られたのです。そういう背景があったのと、旧満州からの引揚者が現地での食べ方を伝えたともいわれ、いつしか定着したようですね」
――消費量はどのくらいあるのですか?
「消費量については、残念ながら把握できておりません。しかし、大分県全体での一世帯当たりの鶏肉の年間消費量は19.3キロ。全国平均が13キロと言われています。もちろん全てからあげで食べるわけではないでしょうが、消費量は多いですね。ちなみに中津ではからあげ専門店が30店舗以上あります」
――同じ大分県の大分市ではとり天が有名ですが、からあげとどう違うの?
「とり天は、文字通り天ぷら。小麦粉の衣を付けて揚げ、タレというかダシで食べます。からあげは肉自体にしっかり下味を付け、片栗粉をまぶして揚げます」
――なるほど。では、中津のからあげは味に特徴があるのですか?
「一番の特徴は作り置きをしていないところでしょうか。注文を受けてから揚げる。だから、店頭で少々待ってもらう必要がありますね。それと下味の付け方が店ごとに違う。下味のためのつけダレのレシピが違うんですね。当然、油の温度や揚げる時間もこだわりがあって店ごとに違います」
――うーん、これはとにかく食べてみたい。失礼ですが、おいしいお店を推薦していただけますか?
「創業28年目の『八木総菜店』と『からあげ味丸』という2店はいかがでしょうか」
手づかみで食べるのが「聖地」のマナー
まず、「八木総菜店」を訪ねてみた。お店は昭和を感じさせる外観。総菜店というだけあって店頭には多彩な惣菜が並ぶ。店主の八木ツタエさんに話をうかがうと、タレには唐辛子やコショウなど5種類の調味料を使用しているそう。試行錯誤した上に今の味に行き着いたという。創業時からのお客も多く、親子2代で通う人もいるそうだ。
アツアツをいただいてみた。おお、これはごはんのおかずに合いそうなしっかりした味付け。肉はジューシーで、鶏のうまみが口の中に広がる。
続いて、「からあげ味丸」にはしごをする。こちらは3年前の開業。手づくり看板が目印だ。店主の加々見弘さんは中華料理の現役コック。キャリア30年というベテランで、その腕を生かして仕込みを担当。勤務先の料理店に行っている間、奥さんのゆかりさんが店を守り、調理と販売を行う。
仕込みでは肉のスジを切るなど手間ひまをかけ、ニンニクやショウガを利かせた特製の醤油ベースのタレにしっかり漬け込む。口に入れると歯触りはサクッとしているが、肉はやわらかく、スパイスがほどよく利いていて2~3個はペロッといけそうだ。時間をかけて下味を付けているので冷めてもおいしいという。
ところで、町おこしの会長の西郡さんによると、中津のからあげは手づかみで食べるのが一番だという。確かにはしなどで上品に食べるより、手で豪快に食べた方がおいしさは倍増する。さあ、あなたもそのおいしさを確かめに出掛けてみないか?
Information
●八木総菜店(からあげ八木)
骨付き100g 210円
モモ100g 250円
とり天100g 250円
住所:大分県中津市上宮永65-1
交通:JR日豊本線中津駅から徒歩5分
営業時間:10:00~20:30
定休日:毎月9日、19日、29日
駐車場:なし
●からあげ味丸
骨なし100g1 70円
骨付き100g 150円
手羽中ハーフ100g 120円
住所:中津市中原611-5
交通:JR日豊本線東中津駅より車で10分
営業時間:11:00~19:30
定休日:不定休
駐車場:5台
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