コーヒーチェーンの米Starbucks Coffee Companyとモバイルペイメントサービスの米Squareは8月8日(現地時間)、StarbucksによるSquareへの2500万ドルの投資を含む決済事業で提携したと発表した。今後、Starbucksはクレジット/デビットカードの決済をSquareベースのものへと切り替えていくほか、今秋以降は全米7000のStarbucks店舗でSquareの"Tab"機能を使った磁気カード不要のモバイル決済サービスを利用可能になる。
FeliCaのようなキーテクノロジーが広まっていない米国では、今回のSquareのような中小を含むさまざまなベンダーがモバイルペイメントの世界へと進出しつつあり、いわゆるペイメントサービスが百花繚乱状態にある。Squareの概要については過去のレポートを参照いただきたいが、iPhoneやiPadといった手持ちの端末を使って商店主ならびに買い物客の両方が簡単に決済システムを構築/利用できること、そしてSquareのCEOがTwitter創業者の1人であるJack Dorsey氏であることなどが特徴として挙げられるだろう。
店舗側は「Square」の名称で家電量販店で販売されている専用ドングルを購入してSquareにサインアップするだけで、手持ちのiPadやiPhoneを簡単にカード決済可能なPOSレジ代わりにできる。一方でユーザーはSquareに決済情報やSSN情報、自分のプロフィールや顔写真をあらかじめ登録しておくだけで、あとSquareを導入している店舗に足を運び、手持ちのiPhoneのSquareアプリで「Tab」を"オープン"しておけば、カードや端末を提示することなしに顔認証だけで商品の決済が可能になる。Squareはその対応店舗数が少ないのが悩みの1つだったが、現在シリコンバレーで最もホットなエリアとして知られるサンフランシスコのSOMA地区では新規開店したカフェがSquareを導入するケースも多く、Squareサービス最大のメッカとなっている。
今回発表された両社の提携内容は下記のとおり。
- 今秋以降にも全米7,000のStarbucks店舗で順次Squareへの切り替えを行い、ユーザーはSquareでの決済が可能になる(前述の"Tab"機能を利用)。Square DirectoryによるStarbucks店舗検索も行なえるようになる
- Starbucksは米国内でのクレジットカード/デビットカードの決済をすべてSquareベースのものへと移行し、カード決済コストを圧縮する
- Square Directoryでは通常のSquare対応店舗や"Offer"検索に加え、Starbucks Digital Networkや同社モバイルペイメントアプリとの相互利用が可能をなる
- SquareのシリーズDの増資フェイズでStarbucksが2,500億ドルの資金を投下
- Starbucks会長でプレジデント兼CEOのHoward Schultz氏がSquareのボードメンバーに参加
ポイントはいくつかあるが、Squareを本格導入する大手リテーラーはStarbucksが初であること、さらに増資のタイミングで本格的に同社の経営に参画したことが挙げられる。なおWall Street Journalによれば、増資後のSqaureの時価総額は32億5,000万ドル規模とみられ、1年前の16億ドルからほぼ倍増した形になっている。GoogleやPayPalなど、この分野でのニューカマーも同様にモバイルペイメント進出を目指しているが、今回の提携でSquareは大きなパートナーを獲得したことになる。