検査ラインと組立ラインを一本化

とくに新たな取り組みとして注目されるのが、これまでは別ラインとなっていた検査ラインを組立ラインと一本化した点だ。

組立ラインの途中に、検査プログラムをHDDにインストールする工程がある

組み上がったPCは立ち上げられて検査などの工程に入る

ノートPCの場合は本体にバッテリーを搭載していることから、検査工程をインライン化することは容易だが、デスクトップPCの場合は電源を確保しなくてはならないため、従来はいちど組立ラインから外して電源を確保できる検査ラインに台車で移動させなくてはならなかった。そこで富士通アイソテックは、組立ラインの中にトロリー方式で電源を供給できる仕組みを考案。事前にハードディスクにインストールした試験プログラムを稼働させ、ラインを移動させずに検査を行なるようにした。

トロリー式の電源供給ラインのスタート部。上方のレール(給電ダクト)から電気が供給される

トロリー式の仕組みを切り出したもの。レールを給電ダクト、台車をトロリーBOXと呼ぶ

トロリー式の採用により、検査がインラインで行われるようになった

検査されているデスクトップPC

これにより、組立ラインから検査ラインへと移動させる工数が減るなど、トロリー方式による自動搬送と工程改善によって、試験工程における生産性は約30%向上しているという。また、インライン化してもライン長は従来と同等の約57mに収めている。現在は8ライン中の3ラインでトロリー方式を採用しているが、上期末までには全ラインにこれを適用する予定だという。

サーバー生産ラインでのトロリー部

金属のレール部分が電気を供給するトロリー部分。インラインでの検査が可能

梱包工程を組立工程の中に分散

また、ラインをより効率的に動かすため、これまで組立工程の最後に集中していた梱包工程を組立ラインの途中に分散させることで、一人あたりの作業時間を平準化。組立リードタイムの削減にも寄与している。

検査後にはOS、プログラムなどをインストール。同時に付属品もセットされる

検査ラインの途中に、梱包用の箱もセットされることになる

最終梱包ラインの様子

最後にパレットに乗せられて出荷されることになる

さらに、組立ラインの先頭部に液晶ディスプレイのパネル貼り合わせ工程を配置。ここを防塵対策を施した工程とすることで、パネル貼り合わせの際にホコリが入らないような工夫を凝らしている。従来の仕組みでは、ゴミ要因の不良率は4%程度に達していたが、これを1%にまで低下させるなど、大幅な改善を達成している。

PC生産ラインの先頭にある液晶ディスプレイのパネル貼り合わせ工程

パネル貼り合わせ工程では防塵対策を施したことで不良率を大幅に改善した

この部分を、ホコリが入らないように貼り合わせる

パネルを貼り合わせて完成した液晶ディスプレイ部

また、従来行なっていた高温検査ラインを撤廃。試験プログラムを見直すことで、高信頼性を維持しながら大幅な生産時間の短縮を実現した点も大きな特徴だといえる。

エージングおよびソフトウェアのインストール工程。2010年4月以降、40度の環境での高温エージングは行っていないが、品質は維持しているという

拭き取り検査を行う品質保証部門。ここではガイガーカウンターでの放射線測定も行う

現在PC生産ラインで目指しているのは、加工費を2011年3月比で半減させるという目標。現時点での達成度は約40%に留まっているが、これを一気に引き上げていく考えだ。

サーバーの部品ストックエリア

本体ケースなども生産ラインの横に置かれている

カンバン方式によって、部品を調達し、ラインに供給する

1台ごとに筐体、部品が置かれており、それが作業者の前を順次移動していく仕組み

この台にすべての部品が置かれる

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