平泉の世界遺産登録以降、観光地としての注目度が一気に高まった岩手。しかし岩手県といえば47都道府県中第2位の面積を有する広大な県。どこをどう回ればいいのか、プランニングに悩む方も多いはず。そこで今回、県内観光に精通した地元旅行代理店の協力のもと、岩手の魅力を2泊3日に凝縮した魅惑の観光プランを作成。欲張りに広い岩手県を東西南北自由に巡りたい方向けの「自動車コース」、時間に追われることなくマイペースでゆったり満喫したい方向けの「新幹線コース」に分け、2本立てでご紹介する。
縦横無尽!自動車で回る2泊3日コース
とにかく広い岩手県。その魅力を贅沢に味わうためには、欠かせないのが車だろう。アクティブに県内を満喫したい方にオススメなのがこのコースだ。
■自動車コース 2泊3日
1日目
小岩井農場→盛岡手づくり村→つなぎ温泉(1泊)
2日目
龍泉洞→ジンギスカンのあんべ→遠野ふるさと村→花巻温泉郷(1泊)
3日目
えさし藤原の郷→中尊寺→帰路
●ルート
岩手の魅力を自動車で堪能する2泊3日の旅、スタートを飾るのはご存じ「小岩井農場」。山間を抜けていくと、そこには見事なまでのケヤキが立ち並ぶ。ここを抜けると、そこに広がるのが「小岩井農場」だ。豊かな緑に囲まれて動物たちと触れ合えば、日ごろの疲れも自然と癒えるはず。
とくに明治37年から約半世紀の間、農場内の主要交通機関として走っていた「馬車鉄道」を模したトロ馬車に乗って長者館(ちょうじゃだて)という草地の中をゆったりしながら羊の放牧地、林の中を見学すれば、気分は当時にタイムスリップ。馬車だけではなく、子どもたちにも安心な引き馬の乗馬もあるのでカウボーイ気分も満喫できるはず。
また、農場ならではのしぼりたて牛乳、濃厚ソフトクリームは、生乳本来のおいしさに出会える「ミルク館」にお任せ。園内にはジンギスカンやピザを味わえるレストランも数カ所あるため、ここで昼食を摂っておこう。
次は古き良き岩手の文化を学ぶ「盛岡手づくり村」へ。主屋と馬屋を棟続きにした「南部曲り屋」で人馬共存の歴史を肌で感じ、南部鉄器、竹・わら細工、染め物などの各工房で職人の技を見学。昔ながらの手法で南部せんべいが焼ける手づくり体験も外せない。お土産選びは3,500種類もの地場産品が並ぶ展示即売室にてじっくりと。
時間に少し余裕がありそうなら、雫石町まで足を伸ばしてみたい。手作りジェラード店「松ぼっくり」や南部鉄器のアクセサリーが人気の「流工房」などがオススメ。
そしていよいよ1日目の宿泊先、"盛岡の奥座敷"つなぎ温泉へ。「盛岡てづくり村」からつなぎ大橋を渡ってすぐ、御所湖畔に位置するつなぎ温泉には15軒程の温泉旅館が立ち並ぶ。泉質はアルカリ性単純硫黄泉。独特のにおいと湯の花で、これぞ温泉というぜいたくな気分が堪能できる。
2日目は大きく東へ移動し、車中から岩洞湖を眺め、レストハウスで休憩しながら、日本三大鍾乳洞の一つ「龍泉洞」へ。ただし、宿から100kmほど離れているため、7時半頃には宿を出立したいところだ。
さて、この「龍泉洞」だが国の天然記念物にも指定され、現在わかっているだけでも洞内の長さは3,100m以上。こんこんとわき出る清水が長い年月をかけてつくり出した地底湖は世界有数の透明度を誇る。どこまでも澄み渡る美しい青を前に、思わずため息が漏れるはずだ。
景観美を満喫したら大人気のB級メニュー「遠野ジンギスカン」を目指し遠野エリアへ。ここも移動距離は100km近くあるので、早めの行動を心がけたい。「遠野ジンギスカン」はタレに漬け込んだ羊肉を焼く北海道流とは異なり、ドーム型プレートで焼いてからタレをつけて食すオリジナルスタイルが魅力だ。
そもそも遠野市といえば、柳田國男の「遠野物語」から連想されるように民話の街といったイメージが強いのだろうが、羊肉の消費量は何と北海道と同じくらいで全国1、2位を争うほど。もともとどこの民家でも羊を飼っていたこともあって、50年ほど前から爆発的に需要が増えたのだとか。今では週末に「焼き肉を食べよう」とは「ジンギスカンを食べよう」という意味なほどメジャーな郷土料理となった。
昭和30年創業「ジンギスカンのあんべ」は、岩手で最初にジンギスカンを提供した店として知られている。遠野の人気グルメの味を満喫されたい。
次は市内を北上して「遠野ふるさと村」へ。ここでは地元の文化と伝統を守る「まぶりっと(守り人)」と呼ばれる方々が、陶芸やそば打ちの農村体験をサポートしてくれる。雰囲気漂う曲り屋の囲炉裏で聞く昔話しは、昔話の世界にタイムスリップしたかのような不思議な気持ちに浸れるはずだ。
この日の宿は、こちらも県内有数の人気温泉地・花巻温泉郷にて。大沢温泉、鉛温泉、志戸平温泉など12カ所もの温泉を擁し、何度行っても楽しめる壮大なスケール感の温泉地となっている。厳選は約67℃と高温で、無色透明かつ無味無臭。神経痛や筋肉痛、冷え症や疲労回復に効能があるとされ、遊び疲れた体を癒やすにはもってこいの温泉と言えそうだ。また、花巻温泉には通年鑑賞できるバラ園やカフェ、茶室といった見どころが満載。疲れた体の回復をしながら楽しめる癒やしどころとなりそうだ。
自動車で巡る旅もいよいよ最終日、花巻に別れを告げ一路奥州市へ。映画やドラマのロケ地としても知られる「えさし藤原の郷」で、古代から中世にかけての歴史と文化を体感しよう。政庁から町並みまで見事に再現された園内を散策し、平安浪漫に思いをはせる至福のひとときだ。十二単や束帯の着付け体験があるほか、文献などから再現された平安時代食も味わうことができるので要チェック。
最後は奥州市から平泉へ。2011年6月の世界遺産登録で全国に名を知らしめた「中尊寺」で旅をしめくくる。天台宗東北大本山として建立、"東日本随一の平安仏教美術の宝庫"と称される程多くの絵画、彫刻などが保存されている。見所はなんといっても国宝建造物第1号に指定された「金色堂」。堂内外に金箔(きんぱく)が押された「皆金色」の阿弥陀堂は、つい時間を忘れて見入ってしまう程の美しさだ。気になるものは全部チェックしたいという車移動のアクティブな方は、ぜひ本コースを参考に巡ってみていただきたい。
じっくり、ゆったり。新幹線で巡る2泊3日コース
さて、自動車で岩手を駆け巡る旅もいいが、新幹線で現地入りしたあとはマイペースでのんびり岩手探索という方にはこちらがオススメ。
■新幹線コース 2泊3日
1日目
直利庵→小岩井農場→鶯宿(おうしゅく)温泉(1泊)
2日目
もりおか 啄木・賢治青春館→白龍(ぱいろん)→宮沢賢治童話村→花巻温泉(1泊)
3日目
平泉&一関観光バス「義経コース」
中尊寺→平泉文化遺産センター→毛越寺(もうつうじ)→達谷窟(たっこくのいわや)→帰路
●ルート
盛岡駅についたら、まずは腹ごしらえといってみたい。地元民に愛される蕎麦屋「直利庵」で、盛岡三大めんの一つ「わんこそば」を味わおう。通常「わんこそば」は刺し身やなめこおろしなどのつけ合わせがセットになっており、ここでも特・上・普通の3種類から選ぶことができる。
ただし、何杯食べられるか競い合うときには秘訣(ひけつ)あり。おもわず箸を伸ばしたくなるつけ合わせには目もくれず、流し込むようにそばを食べよう。ちょっとのつもりで食べた刺し身やなめこおろしが、あとで効いてくるのでめんに集中したい。また、給仕さんとの間合いも大切にしたい。もうギブアップというときには、素早くおわんのふたをしないと、どんどん投げ込まれてしまうのでほどほどに。
さて、そばで満腹になったら「小岩井農場」まで足を伸ばそう。JR盛岡駅からバスで片道約35分、ビル街から山林へと移り変わる景色は、普段の忙しさを忘れる貴重な時間を与えてくれそうだ。
壮大な自然に癒やされたら、一路バスに乗りつなぎ温泉まで移動しよう。そこで一度乗り換えて、この日の宿泊は、つなぎ温泉よりさらに西に位置する鶯宿(おうしゅく)温泉。開湯約450年の歴史ある名湯で、収容人数1,000名を超える温泉旅館から、気軽に利用できる民宿、そして湯治や休養客向けの自炊旅館まで、個性豊かな宿が揃う。移動には盛岡駅から無料シャトルバスを利用しよう。
2日目。盛岡に戻ったら、今度は都心循環バス「でんでんむし」で街並み探索へ。駅前から乗り込み上の橋町バス停で下車すると、城下町のたたずまいを残す紺屋町エリアに到着。この周辺には国の重要文化財・レンガ造りの「もりおか 啄木・賢治青春館」(旧・第九十銀行)、保存建築物指定の商家「ござ九」、絞り染めの「草紫堂」、現在も屯所として使われている「番屋」などの歴史的建造物が立ち並び、盛岡を代表する景観を拝むことができる。宮沢賢治が詩に読んだ岩手銀行中ノ橋支店も、盛岡の街並み散策からは外せない建物のひとつだ。
また、東北三大城跡の一つ「盛岡城跡公園」散策はいかがだろう。桜の名所としても知られる園内は四季を通して盛岡市民の憩いの場となっている。敷地内には「もりおか歴史文化」もあるので、時間がある方はぜひ立ち寄ってみてほしい。
そのまま中津川を渡って県庁へと足を進め、「石割桜」を写真に収めたら、昼食には盛岡三大麺として盛岡冷麺とともに人気の「じゃじゃめん」をチョイス。中華めんと違って、どこかきしめんを思わせるどくとくの平たいめんは、腰もあって地元民いちおしの郷土料理のひとつだ。めんを完食したら、たまごと肉みそをスープに溶いた鶏蛋湯(チータンタン)を飲み干したい。だしの具合が絶妙で、くせになること間違いない。ただし、大抵の店で、注文を受けてから生めんをゆでるため、提供まで少々時間がかかってしまう。そのため、少し時間に余裕を持って入店したいものだ。
テレビCMでも紹介された「白龍(パイロン)」本店で、ゆでたてめんと秘伝みその絶妙な味わいを堪能すれば、間違いなくとりこになることだろう。じゃじゃめん発祥の店として多くの観光客が集うため、行列の覚悟が必要だ。
午後は盛岡駅から新幹線で新花巻駅へ。徒歩20分程の「宮沢賢治童話村」を目指す。宮沢賢治の童話に登場する動植物の展示棟「賢治の教室」、「賢治の学校」、「銀河ステーション」など、大人こそ夢中になれる仕掛けが随所に施されている。この目は前述の花巻温泉で1泊、散策の疲れを癒やしておこう。
最終日は少し早めに宿をたち、新幹線で一ノ関駅へ。駅前から出ている平泉&一関観光バス「義経コース」なら、「中尊寺」から「平泉文化遺産センター」、国の特別史跡・特別名勝「毛越寺(もうつうじ)」、1200年以上の歴史をもつ精舎「達谷窟(たっこくのいわや)」、そして日本百景の一つ「厳美渓」までを一気に満喫することができるのだ。お土産は「厳美渓」隣接のレストハウスでどうぞ。特に「ごま摺り団子」と「献上 田むらの梅」は、老若男女問わず喜ばれる人気の品だ。
夕方一ノ関駅に戻ってきたら、あとは新幹線で帰宅するのみ。車中で駅弁に舌鼓を打つも良し、撮りためた写真をチェックし直すも良し。旅程をゆったり振り返ってみてほしい。
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