ネットリサーチ・アンケート調査などを行うクロス・マーケティングが、スマートフォンのBYOD利用に伴うコミュニケーションアプリに関する調査結果を公表した。同調査では、全体の約7割がプライベート用のスマートフォンにビジネス上の情報を入れていると回答。また、約8割がコミュニケーションアプリにより得意先の個人情報が送信されることに不安を感じていると答えた。

この調査は、全国の20~59歳の男女で、プライベート用のスマートフォンを業務でも使うことがあるクロス・マーケティングのアンケートモニターを対象にインターネットリサーチで実施したもの。期間は2012年7月9日から11日までで、2,000サンプルの有効回答を得た。

今回の調査の主旨となる“BYOD“は、Bring Your Own Deviceの略で、個人の端末(今回はスマートフォン)を業務で使用するというもの。コスト面や利便性から関心が高まっているが、一方で、個人の端末からの情報漏えいのリスクも抱えている。同調査では、このBYODの実態に加えて、BYOD利用時のコミュニケーションアプリの扱いに関する調査も行っている。最近人気の「LINE」などの無料通話やSNSなどのコミュニケーションアプリでは、端末の電話帳データをサーバーに送信して知り合いを探すといった機能を備えているものも多い。今回の調査結果では、それらのリスクに対し、ユーザーがどのように感じているかが浮き彫りになっている。

調査結果は次の通りだ。プライベート用のスマートフォンに仕事上の情報を保有しているユーザーが全体で69.3%となり、約7割に達した。この傾向は男女とも年代が高くなるほど情報の保有率が高く、男性50代では81.2%、女性50代では74.3%となっている。

プライベート用スマートフォンに仕事上の情報を保有しているかについて、全体の69.3%が「入っている」と回答

スマートフォンに保有する情報内容は、取引先の名前・連絡先の個人情報が88.7%と最も高く、社内の個人情報が47.0%、会社メールの転送メールが36.2%という結果だった。

プライベート用のスマートフォンに保有するビジネス上の情報内容

また、プライベート用スマートフォンでコミュニケーションアプリを使用しているユーザーは、全体で66.2%だった。コミュニケーションアプリの使用率は、年代が低くなるにつれ割合が高くなっている。特に多かった女性20代では85.4%がコミュニケーションアプリを使用しており、8割を超えた。

プライベート用スマートフォンでコミュニケーションアプリを使用しているユーザーは全体で66.2%。特に多かった女性20代では使用しているユーザーが8割を超えた

コミュニケーションアプリの中に電話帳データを自動でサーバーに送信する仕組みのあるアプリがあることの認識については、全体の47.2%が「知っている」と答え、約半数が認知していた。また、電話帳データをサーバーに送信するアプリがあることを認知しているユーザーのうち、それらのアプリを認知しながらも使用しているユーザーは51.4%に上った。

電話帳データを自動でサーバーに送信する仕組みのあるアプリがあることの認識については、全体の47.2%が「知っている」と回答

電話帳データをサーバーに送信するアプリがあることを認知しているユーザーのうち、それらのアプリを認知しながらも使用しているのは51.4%だった

さらに、電話帳データを自動でサーバーに送信するコミュニケーションアプリを、業務で使っているスマートフォンで使用した場合に、得意先の個人情報がサーバーに送信されることについては、全体の58.2%が「非常に不安に思う」、25.9%が「不安に思う」と回答し、不安に思っているユーザーの合計は84.0%となった。また、このサーバー送信機能を持つアプリについて不安を感じると答えた人は、主な理由として「個人情報流出リスク」「何に使われるか知らないため怖い」を挙げている。

得意先の個人情報がサーバーに送信されるアプリについて、全体の84.0%が「非常に不安に思う」または「不安に思う」と回答

これらのコミュニケーションアプリを使用する際に、仕事でもスマートフォンを使っていることを意識して、アプリを選択する必要があると思うか、という設問に対しては、「必要だと思う」「やや必要だと思う」と答えたユーザーが全体の75.3%となった。

コミュニケーションアプリ利用時に、仕事でもスマートフォンを使っていることを意識してアプリを選択する必要性について質問。「必要だと思う」「やや必要だと思う」と答えたユーザーは全体の75.3%となった

これらの調査結果からは、業務でも使っているスマートフォンでコミュニケーションアプリを使用することに対し、リスクを感じているユーザーが少なからずいるものの、友達や家族とのコミュニケーションでそれらのアプリを使わざるを得ない状況にあることが伺える。

LINEなどのコミュニケーションアプリでは、電話帳データを最初にサーバーに送信する際にユーザーの同意を必要としている。しかし、この同意を意識せず、またはリスクに気がつきながらもデータを送信してしまっているユーザーは多い。このような状況のなか、ユーザー自身が注意するのはもちろんだが、開発者もアプリ提供時により明確な注意喚起を行う必要がある、と言えるだろう。