上位モデルのGA-Z77X-UD5Hは4コアで4.8GHzを記録
「どちらがオーバークロック向けか」と言うとスペック上ではGA-Z77X-UD5Hの方が向いているように考えられる。しかし、世界的なOCランキングサイトで記録を叩きだしたのはUD3Hの方だった。そうしたOCランキングサイトの場合、液体窒素冷却が主流であるため、もしかしたらシンプルな方が制御が効くのかもしれない。ただ、今回は一般的な自作PCの範囲における冷却方法を用い、この条件下でどちらがより高いクロックを出せるのか、環境を統一し調べてみた。
■テスト構成 | ||
CPU | Core i7-3770K | ← |
---|---|---|
マザーボード | GA-Z77X-UD5H | GA-Z77X-UD3H |
メモリ | DDR3-1600(4GB×2) | ← |
グラフィックスカード | Radeon HD 6850 | ← |
SSD | Crucial m4 128GB(SATA3) | ← |
電源 | Cooler Master 1100W(80PLUS Silver) | ← |
CPUクーラー | Thermaltake Water 2.0 Extreme+ファン×4 | ← |
OCの方法は、GIGABYTEのユーティリティである「Easy Tune 6」から行った。まず、ベースクロックについては、製品ごと100MHzを若干上回る製品もあるため、CPU-Zの情報を元に100MHzに最も近い値まで設定を変更した。次に、前回のOCで効果の見られた3D POWER関連の設定は、全てExtremeや最大の周波数・電圧に設定したうえでテストした。そして倍率に関しては、1~4コア時を全て同一クロックとした。なお、CPU-Zの情報を元にCPUマルチスレッドベンチマーク中に温度が100℃を超え、同時に指定の倍率を下回る際は失敗として扱っている。CPUの保護回路が効いてしまっていると判断できるためだ。また、成功・失敗は、CINEBENCH R11.5のマルチ/シングルテストの完走をもって判断した。
まずGA-Z77X-UD3Hの結果から紹介しよう。GA-Z77X-UD3Hの限界クロックは、前回GA-Z77X-UD5Hで計測した際と同じ4コア時4.7GHzだった。48倍となる4.8GHzにした場合、まずCPU温度が100℃を超え、CINEBENCH R11.5がエラーを出すより先にPCがシャットダウンしてしまった。既に言われていることだが、Ivy Bridgeはヒートスプレッダ内部でのCPUコアとの接触面にグリスを用いており、その点が溶接だったSandy Bridgeと異なる。そのグリスというのが、通常用途では問題とならないものの、OCのような高温下においては熱伝導性が追いつかなくなると指摘されている。つまりCPUパッケージ内に熱がこもりやすいわけだ。ヒートスプレッダを外し、熱伝導性の高いグリスを塗り直すことで改善すると言われるが、CPUを壊してしまうリスクもあり、当然万人にはオススメできない。
さて、GA-Z77X-UD3Hは前回のUD5Hと同等のクロックまでが限界だった。その要因はCPU自体の熱という結論としたい。しかし熱となると、マザーボードをGA-Z77X-UD5Hと交換しても、同じ設定を使う限り変わりがないと思われたが、こちらも結果から先に紹介すると、GA-Z77X-UD5HはUD3Hの結果を100MHz更新し、4.8GHzまで動作させることができた。
まず、GA-Z77X-UD5Hでも、壁となるのはやはり4.7GHzだった。ただし、UD3Hと比べるとより低いVCoreで動作したのが第一の違いだ。4.5GHzまでは定格のVCoreのままベンチマークを完走し、4.7GHzでは1.4Vまで引き上げなければ完走しなかったが、それでも1.465Vまで昇圧が必要だったUD3Hよりも低いという結果だった。VCoreが低いことにより、HWMonitorから見たCPUパッケージ温度もUD3Hの際より4℃低い95℃に抑えられ、もうひとつ上を狙える可能性は高いと見えた。
GA-Z77X-UD5Hにおける4.7GHz成功時のスクリーンショット。Core Voltageが1.404Vと、先のUD3H時よりも低い値で成功できた |
CINEBENCH R11.5計測時の状況。CPUパッケージ温度の最大値は95℃で、先より4℃ほど低く抑えられた |
そしてその4.8GHzに関してだが、まず4.7GHz時の設定そのままでは動作しなかった。ただし、ベンチマーク失敗時の挙動が異なり、GA-Z77X-UD3Hの際はベンチマーク中にシャットダウンしてしまったのに対し、UD5HではCINEBENCH R11.5のエラーメッセージが表示されるだけで、強制シャットダウンには至っていない。このあたりの挙動も、4.8GHz完走を期待できるものだった。
そこでVCoreを引き上げていくのだが、なかなかちょうど良い値というのが見つからない。当初VCoreが低い際は、ベンチマーク開始直後にエラーメッセージが表示される状況だった。しかし1.45Vを超えたあたりから、しばらくベンチマークプロセスが進んだ状態まで持つようになってきた。しかしVCoreを1.5Vまで昇圧するとCPU温度はすぐに100℃を超え、またしてもベンチマーク開始直後にエラーメッセージが表示されるようになった。1.45V~1.5Vの間にバランスの良いポイントがありそうだが、VCore設定だけではダメと判断し、別の方法を模索することになった。
この別の方法として今回採ったのが、CPU内の、OCとは関係の少ない部分の電圧を引き下げるという方法だ。コア以外の部分の電圧を下げることで若干とはいえ発熱を抑え、マージンを稼げないか、という発想だ。Easy Tune 6、そしてGA-Z77X-UD5HのUEFIでは、VCoreのほか、CPU Vtt、CPU PLL、IMCといった部分の電圧も設定できる。そこで、これらの値を調整したところ、CPU PLLを定格の1.8Vから1.79Vへ、IMCを定格の0.925Vから0.9Vへ引き下げたところでCINEBENCH R11.5のCPUテストを完走させることに成功した。
GA-Z77X-UD5Hにおける4.8GHz成功時のスクリーンショット。VCoreは1.465V |
CINEBENCH R11.5計測時の状況。2回目の計測時のもので、この際の室温は1回目の27℃より低い25℃だ。CPUパッケージ温度は101℃で危険な領域 |
なお、4.8GHz動作はかなりシビアなものだった。事前にCPUを十分に冷やしきってからベンチマークしないとエラーとなり、あるいは1回パスしたからといって2回目にパスするとは限らないという状況だ。ただし、室温を27℃から25℃に引き下げれば、安定度は高まった。夏の間は難しいが、これが冬になれば状況も変わってくるのかもしれない。CPUパッケージ温度も、室温27℃の状況では、105℃を記録し、室温25℃に引き下げると101℃まで低下した。依然、100℃を超えているからあまり良い状況ではないが、どちらもCPU保護回路は発動していないようなので、これを成功と判断した。そして4コア4.9GHzに関しては、試行錯誤を繰り返したもののタイムアップと相成った。
次ページ:1コアなら5GHz動作の世界に突入