2012年3月にスイスのバーゼルで開催された時計や装飾品の祭典、Basel World 2012で披露されたカシオのメタルウオッチ「EDIFICE(エディフィス)」の新作、「EQW-A1100」の日本モデルがついに登場した。ブランド共通のモータースポーツイメージを保ちつつ、3D文字板とセンターディスク針を駆使した前作「EQW-A1000」とは大きく趣を変えた新しいEDIFICE。その真価と魅力について、カシオ計算機の羽村技術センターでお話を伺った。

従来モデルの「EQW-A1000」(写真左)と、新モデルの「EQW-A1100」(写真右)。今回は両者を対比した話題が多いので、デザインや雰囲気を感じておいていただきたい。EQW-A1000も引き続きラインナップされる

EDIFICEの新しい選択肢「EQW-A1100」

―― EDIFICEには、EQW-A1000に代表される先鋭的なデザインの時計というイメージがあったのですが、今回のEQW-A1100はぐっと落ち着いた雰囲気になりましたね。

カシオ計算機 時計事業部 商品企画部 第二企画室 荒井秀介氏

(荒井氏)「EQW-A1000とに比べると、そう見えるかもしれませんね。でも、モータースポーツのイメージを踏襲しつつ、高機能でありながら、スマートアクセスによる快適なりゅうず操作を実現した本格派クロノグラフ、というコンセプトはまったく変わっていません。ただ、従来の多針駆動制御によるダイナミックなフェイス表現の路線から、視認性、機能性をクローズアップした路線へシフトしたモデル、とは言えると思います」

―― 確かに、モノトーン基調に輝くメタリックレッドのベゼルリングなど、EDIFICEのアイデンティティはそのままですね。時計表現のコンセプトをシフトしたのは、どのような理由からでしょうか。

(荒井氏)「EQW-A1000のような3D文字板を使ったモデルは、文字板を何層にも重ねているので、どうしてもケースに厚みが出てしまいます。ケースサイズも大きくなる。だからこその見栄えの良さもあるのですが、シャツの袖に引っかかりやすいなどのデメリットもあるんですね。また、やや重いという意見も聞かれました。

そこで、EDIFICEの世界観を支持・共感してくれる方々が、TPOによって使い分けられる選択肢を増やそう、ということになったのです。ケースを薄型にして重量を抑えたのも、このコンセプトから求められた仕様です。

それに、同じテイストのデザインを繰り返していくと、世界観は縮小してしまいます。多くの方々にEDIFICEのファンになっていただくには、ダイナミックな動きだけでなく、視認性、機能性をより強く意識したモデルが必要と考えたのです」

カシオ計算機 時計事業部 モジュール開発部 モジュール企画室 岡本哲史氏

―― なるほど、フェイスデザインを見る限り、従来の情報を詰め込んだ感じから、情報を取捨選択してすっきりと整理されているように見えますね。

(岡本氏)「ところが、複雑そうに見えるEQW-A1000と比較しても、EQW-A1100で削除した機能はモータースポーツに関係のないタイマー機能だけなんですよ。そのほかの機能はむしろ進化しています」

―― ええっ ! だって、こんなにシンプルにスッキリしているじゃないですか !?

(荒井氏)「シンプルに見えるのは、文字板のデザインや、針への機能の割り振りを工夫した結果です。例えば、四角形のインダイヤル。これまで、EDIFICEのインダイヤルはすべて丸でしたが、EQW-A1100では視認性を高めるため四角形にしました。

6時位置のインダイヤルでは、モード表示を上下左右の各辺に割り当てることで、現在のモードがすぐに分かるようになっています。針が上を指していれば時刻表示、右ならワールドタイム、下ならストップウオッチ、左ならアラームと、何のモードで時計を操作しているのかが、ひと目で判るんです」

ベゼルがIP処理されたモデル(左、EQW-A1100DB)、ヘアライン処理されたモデル(右、EQW-A1100D)、2タイプが用意される

写真左から、EDIFICEで初めての電波時計として発売されたEQW-T1010、1/1000秒の計測に対応したEQW-M1100、センターディスクとスマートアクセスを搭載したEQW-A1000

EQW-A1100(写真左)とEQW-A1000(写真右)の厚みはこれだけ違う。ほかにも、りゅうずの大きさやラグの厚みと角度など、キャラクターの違いがよくわかる

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