ブラザー工業およびブラザー販売は4日、日本国内では同社初となるドキュメントスキャナ4機種や、ビジネス向けブランド「JUSTIO」シリーズに属するプリンタ/複合機を5機種発表。合わせて新製品の発表会も行い、ブラザー販売 代表取締役社長の片山俊介氏、ブラザー販売 取締役の三島勉氏が、製品投入の狙いなどを語った。
今回発表されたドキュメントスキャナは、ビジネス向けブランド「JUSTIO」のニューフェイス。これまでのJUSTIOシリーズはプリンタと複合機が主力だったが、そこにドキュメントスキャナが加わったことになる。
ドキュメントスキャナの新製品は、卓上型の「ADS-2500W」「ADS-2000」、モバイル型の「MDS-700D」「MDS-600D」の4機種。特に最上位の「ADS-2500W」は、有線LAN/無線LANを標準で搭載し、PCレスでスキャンデータをEvernoteやFacebookなどのWebサービスにアップロードできることが特長だ。
定番のプリンタ/複合機の新製品は、A4レーザー複合機が2モデル、A4レーザープリンタが3モデル。上位モデルでは、最大40枚/分の高速プリントを実現したほか、トナー定着ユニットの加熱効率を上げることで、スリープモードから復帰する時間を従来の約20秒から約4秒まで短縮。待機時の電力も94%削減している。
各新製品の概要は、別記事の「ブラザー、1パス両面スキャン対応のドキュメントスキャナを4モデル」、「ブラザー、最大40枚/分のビジネス向けプリンタ/複合機 - AirPrintにも対応」を参照いただきたい。
ブラザーらしい価値の創造
発表会の冒頭では、ブラザー販売 代表取締役社長の片山俊介氏が今後の展望について語った。また、ブラザー販売 取締役の三島勉氏が新製品の概要を紹介した。
片山氏は、今後の展望としてプリンタなどの事業拡大を進めるほか、ヘッドマウントディスプレイや今回発表したドキュメントスキャナなど、新規事業の強化を含め「全ての事業で拡大を目指す」とコメント。これからはスマートフォンやタブレットなどと直接連携する"PCを介さないサービス"が重要になるとし、同社のプリンティング事業などと連携するクラウドサービス「Brother Online」の開設に注力、「ブラザーらしい価値の創造に努める」とした。
なお、「Brother Online」は2012年6月に米国で開始済みのサービス。同サービス上で開設したWeb会議をアーカイブしたり、スキャナで取り込んだデータを直接サービス上で共有するといった機能を持つ。ユーザー側の業務効率化やコスト削減を目指したもので、自社サービスに加え、外部Webサービスとの連携も図っている。
ブラザー販売 取締役の三島勉氏は、プリンタや複合機、スキャナなどのP&S事業が、2011年度連結売上高となる4,975億円の70%を占めることを背景に、プリンティング事業に新製品を投入したと話す。「特にオフィス向けの小型複合機を得意とする一方、そういった製品を使うユーザーにはコストや効率面、セキュリティ面などで課題があった」(三島氏)。
例えば金融機関の窓口で身分証をコピーする場合など、身分証をコピーしてからファックスで関係機関に送信、改めてスキャンしたあとに元データを断裁する、といった手間が発生する。こういった課題への対処として、同社ではもともとJUSTIO複合機にスキャンデータをメール送信する機能(スキャン to Eメール送信)、FTPサーバーにアップロードする機能(スキャン to FTP)などを搭載。これにより手間がかからなくなるだけでなく、通信費や印刷費などのコストが削減でき、情報漏えいのリスクも減少する。
加えて、タブレットやスマートフォンの普及、クラウドサービスの利用などで紙資料を電子化する機会が拡大しており、「JUSTIOのスキャナ機能はブラザーの強みであり、複合機の1機能としてではなく、その強みを活かした形で、ドキュメント事業への参入を進めた」(三島氏)という。
三島氏が挙げる、ドキュメントスキャナの特長は「PCレス」。有線LAN/無線LAN対応の卓上型最上位モデル「ADS-2500W」は、各種クラウドサービスにスキャンデータを直接アップロードできる。また、モバイル端末とも手軽に連携するのもポイント。無線LANやUSBケーブルを使い、専用アプリでスキャンしたデータをそのままiOS端末やAndroid端末へ転送することで、従来より手間をかけずデータを持ち出せる。
今回のドキュメントスキャナは、オフィス向けの「JUSTIO」ブランドでのリリース。どちらかといえばホームユーザーよりも、SOHOなど「ビジネス利用をする個人」を想定する。
卓上モデルの2機種については、会社や家庭のさまざまな紙資料や、学校資料などをデータ化するといった用途をイメージ。モバイルスキャナの2機種については、ビジネスシーンであれば外出先や窓際など、限られたスペースで使いたい人、家庭向けでは手軽に使えたり、使ったあとに片付けるような使い方を考えているという。
年間目標台数は、ドキュメントスキャナの4機種合計で約5万台、プリンタ/複合機の5機種合計で約3万台の販売を目指す。
なお、発表会の最後には、スキャナ製品の投入や今後の展開などについて質疑応答が行なわれた。ブラザーとして、日本国内でのスキャナ単体の販売は初。既に米国ではモバイル型のスキャナを販売しており、前述したドキュメントスキャナのニーズの高さを挙げつつ、「今後はフラットヘッドスキャナをリリースする可能性もあるが、現状は卓上型のドキュメントスキャナに注力する」とした。
また、競合他社との差別化としてはWebサービスなどとの連携に触れ、「外部対応サービスの幅が広いことを強みとしてシェアを広げていきたい。ユーザーが価格をどう見るかは分からないが、これで戦っていけると思っている」と強調した。