NHN Japanは、スマートフォンアプリ「LINE」で2012年中に1億ユーザーの獲得を目指していく。その先にあるのはFacebookを超える存在だ。コミュニケーション機能に特化してきたLINEが方向転換した狙いと、今後の展開について、同社が7月3日に開催したカンファレンスでの発表をもとに考えてみたい。
TwitterやFacebookを超える成長の速度
本題に入る前に、まずはLINEのこれまでの歩みを振り返ることにしよう。
NHN Japan代表取締役社長・森川亮氏によると、LINEは昨年6月23日のリリースから1年でユーザー数を4,500万人まで伸ばし、1日にメッセージや通話が10億回やりとりされているという。ユーザーは世界230カ国に存在し、日本国内でのユーザー数は2,000万人以上いるという。
これはスマートフォンユーザー全体の実に44%がLINEを使っている計算だ。いわゆる"キャズム"はとうに超えているといっていいだろう。このユーザー数の伸び率は、TwitterやFacebookのそれを大きく上回っている。
森川氏は、そんなLINEがこれまでのSNSと大きく違う点として次の5つを挙げている。
- PCベースではなくスマートフォンベースである
- オープンではなくクローズドなコミュニケーションサービスである
- バーチャルではなくリアルな世界の関係性をベースにする
- インターネット上で新たな友だちを見つけるのではなく、今までの友だちとの関係性を深める
- 情報収集するためではなく、感情を伝えるツールである
リアルかつクローズドをうたうLINEだが、リリース直後のiTunesのレビュー欄には出会いを求めるユーザーの"ID晒し"が横行していた。今後もLINEはそうした出会い目的のユーザーに厳しく対応していくという |
芸能事務所のマネージャーを装ったスパムに見覚えのある人も多いだろう。こうしたスパム対策も積極的に行っていくと発表された |
これらの一つひとつは、従来のSNSも備えていた要素である。たとえばスマートフォンベースなチャットサービスは「カカオトーク」などいくつか有名なサービスがあるし、クローズドかつリアルなコミュニケーションツールとしては実名ベースのFacebookが帝国を築いている。往年の勢いはなくなったとはいえ、mixiもまだまだ現役だ。
一見すると完全なレッドオーシャンに思える市場だが、しかし「電話番号などスマートフォン端末にひもづいたサービス」かつ、「リアルな人間関係をクローズドに構築する」という両方の特徴を備えたサービスは、実はまだ決定的なものがなかった。
そこにLINEがうまく滑り込んだというわけだ。強いて言えばSkypeはそこにハマる可能性が高かったのだが、スマートフォン対応が後手に回ってしまったことでLINEにパイを奪われたといえる。
女性の高感度が高いベッキーを起用したTVCMや、スタンプで可愛らしさを強調したイメージ戦略も巧妙だった(日本の若い女性にウェブサービスをアピールするなら「かわいい」は必須条件だ)。また、電話番号を吸い出して自動で友だち同士を結びつける"手続きの簡単さ"も功を奏し、若い世代の女性をごっそり取り込むことに成功した。
森川氏はこうしたLINEのブレイクに手応えを感じており、「LINEこそがスマートフォン革命である」と強調する。
そんなLINEが打った次なる戦略は、「プラットフォーム化」である。もっと具体的に言うなら、「LINE Channel」を中心としたポータル化と、「ホーム」「タイムライン」を中心としたSNS化である。