MozillaがAndroid向けFirefoxの最新版を公開した。Mozilla Japanでは、この最新版Android向けFirefoxに関する説明会を開催。新たなブラウザの機能の紹介や、今後の展開について説明した。Android向けFirefoxは、Google Playストアから無料でダウンロードできる。
説明会に登壇した同社代表理事の瀧田佐登子氏は「ブラウザとしては後発組となるAndroid向けFirefoxですが、いま正に生まれ変わろうとしています。そして今回の発表を皮切りに、今年の後半には様々な研究開発の成果が形となって出てくることでしょう。Mozillaから目を離さず、追いかけてほしいと思います」とユーザーに呼びかけた。
続いて登壇した同社マーケティング部マネージャーの小坂哲也氏からは、リリースまでの経緯が説明された。Android向けFirefoxは2011年3月に正式版が提供開始されたが、この前バージョンでユーザーの声を集約し、それをもとに再開発し直したのが今回発表の新バージョンのFirefoxなのだという。これまでに寄せられたユーザーの声では、HTML5をフルサポートしている点、OSのアップデートに依存しないでセキュリティのアップデートが可能な点などが高評価だった反面、起動時間が長い、Flashにサポートしていないなどの点でユーザーの不満が多かった。このため、半年ほどの月日を費やして設計を抜本的に見直したという。生まれ変わったFirefoxではパフォーマンスの大幅な向上、起動時間の短縮化が図られ、Flashもサポートした。そのほか、PCと簡単に同期できる機能を搭載し、親指で快適に操作できるようにユーザーインターフェースも一新されたという。小坂氏は「Mozillaは非営利な組織。インターネットの環境をより良くするために、今後もコミュニティの方々と協力して積極的に活動していきたい」と力を込めて語った。
続いて同社テクニカルマーケティングの浅井智也氏が登壇し、機能の詳細な説明を行った。新しいFirefoxではUIのコードをJavaで書き直すことで、Android OSに完全に最適化されたものに生まれ変わらせたという。同時に描画エンジン、Javaスクリプトエンジンなどにもかなりの改良が加えられた。これまで、CPUが力不足のスマートフォンでブラウザを開くと「描画が遅くなってしまう」あるいは「フリーズする」というケースがあった。これに対処するために、スレッドを分離することで応答性を確保するという工夫がなされたという。
APIが非公開だった・マルチプロセスに不適応だったなどの理由でこれまでFlashにサポートできていなかったが、UIのコードをJavaで書き直しをしたのでFlashへの対応も容易になったという。そのほか、PCで利用しているFirefoxとブックマーク/履歴/パスワードをバックグラウンド同期できる機能にも対応した。これにより、PCで一度閲覧したページならモバイルでも容易にアクセスできるようになった。また、PCにパスワードを入力してログインしたページなら、モバイルからでも(パスワード入力なしで)ログインできるようになるという。これらの情報はバックグラウンドで同期するので、Firefoxを起動させずとも常に最新の情報に書き換えられるとのことだ。
右上にメニュー、左下に端末の戻るキーがあるAndroidスマートフォンを想定して、UIも右手親指だけで操作できるように一新された。またスマートスクリーン機能により、文字入力するたびに候補が絞り込まれていくので、URLやタイトルを入力したいときにも目的のページへ素早くアクセスすることができる。
PCと同期する場合は、PCに12桁のパスワードを入力する。これにより、簡単に同期できるという。また、URL入力ミスを訂正する「URL Fixer」や、UserAgentを切り替えてPCサイトや他ブラウザ用サイトを表示させる「Phony」など、後から適宜、便利なアドオンを追加することで使いやすいブラウザにカスタマイズしていくことも可能。Firefoxならではの拡張性がしっかり継承されている。
スライドでは、ベンチマーク結果も公表された。それによると、HTML5 Canvasのパフォーマンスを測定した結果では、スマートフォンにプリインストールされているデフォルトのブラウザ(テストに用いた端末はGALAXY NEXUS, Android 4.0.4)よりも3倍以上も高速で動くことがわかったという。また、普段ユーザーがブラウジングするような一般的なサイトをスクロールしたときのパフォーマンス結果でも、デフォルトのブラウザに比べて1.5倍も高速化していた。
そのほか、新しいFirefoxではプライバシーにも配慮されている。Do Not Trackに対応し、トラッキングの拒否ができるようになった。また、パスワードの暗号化保存にも対応。ブラウザに様々なサイトのパスワードを保存して使っている場合、端末を紛失した際に悪用されるおそれがある。しかし、Firefoxではブラウザ起動後にマスターパスワードを入力させることで、なりすましログインを防ぐことができる。
この新バージョンのAndroid向けFirefoxは、6月26日の午後10時半からGoogle Playストアで提供が開始された。なお、今回Androidタブレット端末向けにはリリースされない。これについては、次期バージョン以降で対応を予定しているという。
(記事提供: AndroWire編集部)